小山台高校定時制の廃校に反対する会、東京都立立川高等学校芙蓉会(定時制同窓会)、立川高校定時制の廃校に反対する会は8日、小山台高校定時制(品川区)と立川高校定時制(立川市)の存続を求めるアピールについて都庁で記者会見を行いました。
東京都教育委員会(都教委)は2016年に小山台高校、雪谷高校(大田区)、江北高校(足立区)、立川高校の4校に対し、夜間定時制の閉課程(廃止)を決定。雪谷高校、江北高校の定時制はすでに廃止となりましたが、各校の生徒や保護者、元教師、住民らによる粘り強い運動により、小山台高校と立川高校の定時制は生徒募集が続いています。
コロナ禍で貧困格差が深刻化するなか、誰もが少人数で学べる夜間定時制の存在意義はより明確化。これまで都や都教委に対して存続を訴えてきましたが、今後は都民に広く知ってもらうことを目的に、夜間定時制高校への入学を促すビラ配布や、閉課程の中止を都教委に求める請願署名活動などをより活発に始めることを発表しました。
なぜこの学校
立川の反対する会の河合美喜夫氏は、「ある日突然、廃止を直接指名された。なぜこの4校を廃止しなければいけないのか、今日まで説明されていない」と指摘します。小山台高校定時制には外国につながる生徒が6割以上通っており、多文化共生教育に取り組む文部科学省の人権教育研究指定校。立川高校定時制は都立の普通科定時制で最大規模を誇り、250人ほどの生徒がいます。両校とも突出した個性がありながら、都教委は「定時制で学ぶ生徒が減少」「勤労青少年が少ない」「チャレンジスクールを希望する生徒が多い」など、一般的な廃止理由しか述べていません。
希望つぶすな
呼びかけ人のひとり、ドキュメンタリー映画『月あかりの下で~ある定時制高校の記憶~』の監督・太田直子氏は、4年間カメラを回し続けた埼玉県立浦和商業高校定時制を例に、「生徒たちは『学校は生きる希望をくれた場所』と言った。夜間の定時制に通う生徒は、(都が推進する)チャレンジスクールに行けない人も多い。その重みを受け止めてほしい。生徒の希望をつぶすな」と訴えました。
大東文化大学元学長で教育学者の太田政男氏は、定時制は不登校の若者たちにとっての「居場所」と強調。働く青少年だけでなく、全日制に通えないさまざまな理由を背負う生徒が通う大切な場所であり、「日本の教育史において重要な役割を果たしてきた」と語ります。
元都立高校定時制教員の多賀哲弥氏は、「廃止に4校を選んだ理由が明らかにされないのは、ある意味、学術会議の任命拒否問題と同じ」と持論を展開。「都教委の定時制に対する軽視のようなものが根底にあるのではないか」と憤りました。
そのほか定時制高校の特長として、「勤労と学びにより、人間的な成長をはかる場所」「少人数なので先生がすべての生徒の名前を知っており、アットホームな関係が築ける」「年齢層も幅広く、生徒同士の学び合いも多様」など、主張しました。
会見後、多賀氏は「都立高校は都民の財産。前回は1万3000人を超える署名の力で小山台と立川高校の生徒募集を継続することができた。今回も1万人分を集める気合いでがんばる」と意気込みを語りました。