深まる現場の苦境どう向き合うのか
東京都議選と総選挙を前に、「医療と政治の現場からコロナ危機を問う」と題したオンライン企画が15日に行われ、山添拓参院議員、藤田りょうこ都議、谷川智行衆院予定候補が語り合いました。主催は「山添拓さんを応援する市民勝手連YAMA部」。
山添 コロナ禍での医療現場の実態や改善が求められている点を教えてください。
藤田 今は医療崩壊をどう止めるかが、都政の大きな課題です。都内には約5500のコロナ病床がありますが、都が財政支出を担う都立・公社病院が大きな役割を発揮しています。大田区では、公社荏原病院が1月からコロナに特化した病院に代わり、地域医療を守ることができるようになりました。
都内5万床のうちコロナ病床はその1割ですが、その37%を都立・公社病院が担っています。感染症の人数に合わせ、迅速にベッドを増やせたのは、都立・公社病院だからこそできたことです。
行き場を失う患者
都の医療をどう守っていくか、同時に感染を抑え込むための検査拡充などで、どのようにして感染を乗り越えていくのかが、都政に問われています。
山添 谷川さんは医師として勤務されていますが、どうですか。
谷川 コロナ対応も病床を増やすことも、簡単なことではありません。コロナ病床を増やすには、他の医療を縮小しなければならない。この間、急がない手術は後回しにするという状況がずっと続いています。そういう意味ではもう医療崩壊なんです。
クラスターが発生すれば、救急医療や入院が止められます。そうなると地域全体で救急車の行き場所が減ってしまい、受け入れを探すのに何時間もかかってしまい、患者さんが辞退する状況もあります。
それに加え、ワクチンの対応が求められています。医療従事者の接種が本格化していますが、副作用もあり、その場合看護師は休まざるを得ません。接種の日をずらすなどして対応していますが、1人欠けるだけでも現場は大混乱です。
支援利用者最多に
山添 夜勤もあり、続けていくこと自体がきつい仕事だということが背景にあると思います。同時に緊急事態宣言が発出され、仕事を失い生活に困窮する方の実態も深刻になっていると思います。
谷川 今日参加した、都庁の地下で行われる「ごはんプラス」は350人超の方が利用し、過去最多となりました。この間は、路上で生活する人たちだけでなく、アパート暮らしで不安定な仕事をしながら今まで何とか自立してきた人たちが多く利用しています。
若者、女性、子連れが珍しくなく、深刻な状態です。支援はしていきたいですが、根本的な解決にはなりません。やはり、政府や都にやるべきことをやらせるために、声を上げていきたいと思います。
山添 年末年始には都がホテルを用意するなどの取り組みが行われました。現状はどうですか。
藤田 緊急事態宣言とともに、ビジネスホテルなどに一時的に滞在できる仕組みは引き続きやっています。しかし、2、3月の議会で、小池百合子知事に親子連れで支援に来る状況があると迫った時、「生活に困窮している人がいることは承知している」というだけの答弁でした。
都はホテルを提供したり、シングルマザー向けに食料支援のカタログを出したりしていますが、基盤を改善することではなく、一瞬の支援であることが都政の支援策の弱点です。いろんな意味で安定させる、底上げする対策に変えていかなくてはなりません。
山添 そもそも不安定な雇用では、ひとたびうまくいかなくなり、一気に困窮ということになりますね。これから先は自然災害も起こりやすく、災害時には複合的な災害になる。今でさえ冷たい姿勢が政治にある下で、そうした事態で自助・共助任せ、無責任な政治だとどうなるのか、というコメントも寄せられています。
余計なことは推進/「逆行」に怒り心頭
山添 五輪開催固執はどうしようもありませんね。
藤田 日本共産党は1月から開催中止を主張しています。自民党、公明党、都民ファーストは″安全・安心でよろしく″という感じで、みんなやるものとしています。小池百合子知事も菅義偉首相と同じ思考停止で、「都民の不安をどう受け止めるか」と聞かれても「ワクチンがあるから…」と不安を受け止めようとしない。開催経費の説明もありません。
3時間で100人だけ
山添 菅首相と論戦しても「感染対策を徹底して、安全安心な大会に」という同じ答弁。感染対策なんて徹底してやれたことがないのに、どこからあの自信が出てくるのか…。看護師500人、医師200人、コロナ指定病院30と言われていますが、医療関係者から見るとどうですか。
谷川 医療現場は逼迫(ひっぱく)していて、それを必死で支えています。体調を崩し現場を去る人も出ています。それにワクチン接種が加わる。私も医師として接種を行いましたが、医師4人、看護師、薬剤師、事務担当者とそうそうたるメンバー3時間で接種できたのは100人くらいです。問診、本人確認、書類確認、次の予約、接種後の待機…大変なんです。
菅首相は7月末までに85%の自治体が高齢者接種を終えるといいます。現場では人の確保ができないのに、首相が軽々にこういう発言をするのは深刻だなと思います。内閣参与の「日本のコロナはさざ波」という発言がありましたが、こんな感覚で五輪をやられたら国民はたまったもんじゃない。大惨事になりかねない。
山添 五輪関係者だけを、コロナ対策を強化して守るということは、倫理上も許されるのかということもあります。仏紙が書いているのですが、五輪となれば東京だけで1日2万人は外国人が来る。それを東京で検査することができるのか。できるならなぜ今、住民に検査しないのかと。宇都宮健児さんの始めた五輪中止署名は35万人を超えました。
「不採算」切り捨て
藤田 共産党の都議選政策では、まずコロナ対策、五輪中止を一番に挙げています。1年以上前から検査を増やせと言ってきて、都の検査数はまだ不十分ですが、検査能力は増え、高齢者施設、医療機関での検査も週1回実施すると前進してきました。まだ少ないのでもっと増やしたい。事業者への規模に応じた補償、医療機関への減収補填(ほてん)を求めています。
都立・公社病院の独法化は自民党、公明党、都民ファーストは推進姿勢です。都民ファは「民間と競い合って収入を上げるべきだ」といっている。これによって切り捨てられるのは感染医療など不採算の部門です。独法化は数年前から持ち出されていますが、都議会での共産党の論戦と、見直しを求める5万人を超える署名など都民の運動で都の強行を押しとどめています。今度の都議選でどういう議会の構成になるか。それと都民の運動の前進が独法化を止める大きな力になります。
谷川 菅政権のコロナ対策は逆行政策です。ベッドが足りない時にベッドを減らす法案を強行しようとするとか、公立公的病院の統廃合、高齢者医療費を2倍化する。こういう政治に怒り心頭ということです。4月の三つの国政選挙の野党共闘全勝で、政治を変えることはできると自信が持てたといろんな人が言っています。
山添 今の国会の特徴は、コロナ対応に集中すべきなのに、今それをやるのかということが横行してることです。病床削減、医療費2倍化もそうですし、デジタル庁法案を押し通し、コロナ禍で本国に帰る飛行機も飛んでいないのに強制退去を行い、刑罰までかける入管法の改悪を行おうとする。改憲手続きを進める国民投票法案も進んでいる。やるべきことをやらずに余計なことをどんどん進める、そういう政治に対する怒りを広げていきましょう。
(「しんぶん赤旗」2021年5月18日・19日付より)