参院決算委
半額しか返済義務がないのに、全額を請求され、完済後の返金には応じない―。日本学生支援機構の奨学金をめぐり、保証人に対する機構の不当な対応が問題になっています。日本共産党の吉良よし子議員が5月31日の参院決算委員会で是正を求めました。
問題になっているのは、保証人の「分別の利益」。民法上、保証人には、連帯保証人と違って全額支払いの義務はなく、半額まででよいというもの。機構は、保証人への返還請求時にこの権利について説明せず、知らないまま全額返済する人や、完済後に知り返金を求めても応じてもらえない事例が生まれています。
5月13日には札幌地裁が、半額を超える分を「機構の不当利得」と認め、返金を命じる判決を出しました。
吉良氏の質疑で文科省は、2010~20年に、機構が返還請求した保証人1969人中、分別の利益を主張して適用されたのは133人だと説明。全額返済後に権利を主張し、返金された事例は「ない」と明らかにしました。
吉良氏は、「適用者が1割に満たないのは、機構側が権利を一切知らせないまま全額一括返済を迫っているからだ」と強調。「札幌の原告男性の場合、年金生活で、機構と何度も連絡をとってようやく分割払いが認められたが、その間、分別の利益について説明はなかった」と批判しました。
さらに、遠藤勝裕理事長(当時)の「伝えれば事実上、半額を回収できなくな(る)」(19年2月22日付「朝日」)との発言に触れ、根本には、機構の「全額回収ありき」の姿勢があると指摘。保証人に法的知識がないことを利用する態度を改め、地裁判決を踏まえて完済済みの人も含め過払い分を直ちに保証人に返金すべきだと主張しました。
萩生田文科相は、過払い分の返金は「機構で対応すべきだ」としつつ、分別の利益の周知についてはホームページでの説明だけでは不十分との認識を示し、「丁寧な説明は必要だ。精度を上げていきたい」と答えました。
(2021年6月2日付「しんぶん赤旗」より)