都心に移動 感染懸念
東京都内の小中学生や高校生らを対象にした五輪・パラリンピックの「学校連携観戦」で、都教育委員会が鳥嶼(しょ)部=伊豆・小笠原諸島=の町村にも参加を募り、一部の自治体が応じていたことが14日までに分かりました。鳥嶼部は医療体制が弱く、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、都心に子どもたちを移動させる計画そのものが問われています。(丹田智之)
本紙の取材に、東京都の島嶼部9町村のうち4町村が「参加しない」と回答。一方、5町村は「参加を検討している」と答えました。
人口が最も多い大島町では、小学4~6年生の153人と中学生151人を参加対象としています。
町教育委員会によると、中学生は7月下旬に代々木競技場(渋谷区)でハンドボールを観戦、小学生は8月下旬に有明アリーナ(江東区)でパラリンピックの車いすバスケットボールを観戦する予定です。観戦の日時や場所は都教委が決めたといいます。
観戦後に船内泊
児童・生徒の移動について、町教委の担当者は「当日の午前に高速船で島を出て、午後は夕方まで競技を親戦。夜発の貨客船に乗り、2日目の朝早く島に戻る行程で参加を検討している」と説明します。船内で1泊する計画です。
参加する児童・生徒や教職員の新型コロナ対策で具体的に決まっているのは、マスク着用と手洗いのみです。
大島町と同じく参加を検討している利島(としま)村と御蔵島村は、観戦の前日に貨客船で島を出て都心のホテルで1泊。観戦後に船内泊して島に戻るという2泊3日の行程です。「保護者の意向を聞き、参加人数を減らすことも考えている」(御蔵島村の担当者)といいます。
中学生のみ参加する予定の青ケ島村は、ヘリコプターと航空機を乗り継いで移動し、都心のホテルで2泊する行程です。
三宅村も、現時点で参加する計画を立てていますが「(新型コロナの)感染拡大の状況をみて判断する」(担当者)としています。
不参加を決めた4町村は「宿泊をともなう移動により新型コロナ感染を広げるリスクが高い」(新島村)などを理由にあげています。
島嶼部に7校ある都立高校は、4校(うち1校は定時制の生徒のみ対象)が「参加を検討中」としています。
医療体制ぜい弱
島嶼部は医療体制がぜい弱です。島嶼部の新型コロナ感染者は入院が必要と判断された場合、ヘリで本土まで運ばれ、都立広尾病院(渋谷区)などに搬送されます。
大島町に住む高校生の父親(44)は「島の中で新型コロナ感染が広がると、すぐに医療体制が危機的な状況になります。公共交通機関での移動や人が密集する競技会場での観戦など、子どもたちを感染のリスクにさらしてまで実施するべきではない」と語りました。
日本共産党は学校連携観戦の実施に反対し、東京五輪・パラリンピックの中止を求めています。
(2021年6月15日付「しんぶん赤旗」より)