政府の購入・供給失敗こそ要因
6月の各社の世論調査で、政府のワクチン接種を「遅い」と回答した人が7割近くにのぼるなど、ワクチン接種の遅れが、菅政権のコロナ対策の失敗を象徴する問題となっています。
そうしたなか、ワクチン接種の遅れについて、日本共産党や立憲民主党が政府を追及するのは「党利党略」であるとし、日本で接種が遅れたのは、「野党の要望」をきいたからだという議論を、「公明新聞」「聖教新聞」が、連日、書き立てています。
両紙は、昨年の臨時国会における予防接種法改正案の審議で、日本共産党や立憲民主党の議員が、海外で製造された新型コロナワクチンの承認にあたっては、「国内での臨床試験(治験)」が必要だと訴えたことを「承認にブレーキをかけるような発言」と攻撃。今年6月9日の党首討論で菅首相が述べた、「日本は野党からも強い要望があった国内治験をやったことで、世界から見れば(承認・接種がおおむね)3カ月遅れている」という発言を引きながら、「承認を遅らせるような主張をしていたのに“接種が遅い”と批判する無責任な共産・立憲」などと書き立てているのです。(「公明」10日付・13日付・20日付。「聖教」21日付・24日付など)
しかし、日本のワクチン接種が大きく遅れたのは、むしろ、ワクチンが承認された後です。日本では、今年2月14日に米ファイザー社製のワクチンが承認され、同17日から接種が始まりましたが、その後、接種は停滞していきました。
別表は、各国でワクチンが承認され、接種が開始された後の人口当たり接種数を比較したものです。接種開始から「2カ月後」の到達を見ると、日本では人口の1%しか接種が行われていません。それに対し、他国の接種開始「2カ月後」の到達は、イギリス19%、アメリカ11・7%、カナダ2・6%、ドイツ4・8%です。日本の遅れは際立っています。
現場を大混乱に
日本で接種が加速してきたとされる「4カ月後」の到達でも、接種数はイギリスやアメリカの半分以下にすぎません。
こうした事態が生じた最大の要因は、日本政府がワクチンの購入・供給に失敗したことです。
政府は、まだ安倍政権だった2020年夏に米ファイザー社や英アストラゼネカ社と「基本合意」を結び、全国民分のワクチンが確保できたかのように宣伝してきました。ところが、実は、今年に入っても必要なワクチンの購入・調達には至っておらず、国から自治体にまともな数のワクチンは供給されていませんでした。菅政権が、ファイザー社との間でワクチンの「追加購入」の約束をとりつけたのは4月中旬。現場にワクチンが出回りだしたのは5月の連休後となり、2~4月に進められるはずだった、医療従事者や高齢者への接種も大幅に遅れてしまったのです。
また、ワクチン供給のめどがようやく立ってきた後も、菅政権は、「高齢者の2回接種を7月末までに終える」と突然打ち出すなど、裏付けのない期日を現場に押しつけ、予約の殺到や打ち手不足への対応をひたすら自治体任せにするなど、無責任な対応に終始し、現場を大混乱させました。
日本の接種が「世界から見て3カ月遅れた」のは、政府がワクチンの確保・供給に失敗したうえに、現場の混乱を助長する行動を繰り返したからです。それを治験と承認の問題にすり替えるのは、苦しまぎれの責任転嫁にほかなりません。
公明党・創価学会は、日本共産党など野党が、ワクチンの有効性・安全性の慎重な検証を求め、国内での治験を要求したことを、“承認にブレーキをかけた”と攻撃しています。しかし、医薬品の承認にあたり、有効性・安全性の慎重な検証を求めるのは当然です。海外製ワクチンの導入に際し、国内でも治験を行うことは、国民が納得してワクチンを接種できるようにするうえでも重要です。
自公も治験賛成
日本共産党は、ワクチン接種を円滑に進めるためにも安全性の立証は不可欠であることを指摘し、予防接種法改正案に賛成しました。そうした行動が“接種を遅らせた”などというのは、まったく事実に反します。
公明・創価学会は「国内治験」のためにワクチンの接種が遅れたとする菅首相の発言を“錦の御旗”にしていますが、実は、予防接種法改正案の可決に際し、参院厚生労働委員会では、「新型コロナウイルスワクチンの承認審査に当たっては…国内外の治験結果等を踏まえ、慎重に行う」とする付帯決議が全会一致で可決されています(20年12月1日)。公明党も、自民党も、この決議の共同提案者であり、国内治験による慎重な検証を求めていたのは野党と同じです。「過去の言動を棚に上げ“党利党略”で真逆の主張を掲げるとは、無責任の極み」(「公明」20日付)という批判は、公明党にこそあてはまるのではないでしょうか。(T)
(2021年6月25日付「しんぶん赤旗」より)