都議会第2回臨時会は20日、日本共産党が繰り返し求めてきた新型コロナウイルス対策の特別委員会を設置し、コロナ対策の補正予算(総額3278億円)などを可決して閉会しました。共産党は、1人会派を含めて特別委を構成する独自案を提出しましたが否決されました。オリンピック・パラリンピック特別委員会の設置も可決しました。臨時議会の会期は当初の1日から3日間とし、知事出席によるコロナ対策質疑が実現。先の都議選で共産党と立憲民主党が地方自治法にもとづく議会招集権に必要な議席を得たことが議会を動かしています。
臨時都議会 パラ、学校観戦中止求める
「自宅も病床」発言撤回せず
「感染の急拡大は人災であり、小池知事の政治的責任は重大」。日本共産党のあぜ上三和子都議は本会議質問(19日)で、新型コロナウイルスの感染状況について楽観的な認識を示してきた小池百合子知事を厳しくただしました。
小池知事は過去最多の陽性者が確認された翌7月28日、第3波のピーク時と比べるとワクチン接種が加速した、重症化しやすい60歳以上も減っているなどとして、「第3波の時とは状況が異なる」などと発言。ところが、その後1日当たりの新規陽性者数は過去最多の6000人に迫り、高齢者の感染者や死亡も増加。これまで経験したことのない爆発的な感染拡大の深刻な事態に至っています。
小池知事はまた、7月28日の会見で「一人暮らしの方々などは、自宅も、ある種、病床のような形でやっていただくことが、病床の確保にもつながるし、その方が健康の維持にもつながる」とも発言。しかし実態は、自宅療養や入院等調整中の患者が3万人を超え、適切な医療やケアが受けられずに自宅で亡くなるケースや重症化するケースが相次いでいます。
あぜ上都議は、こうした深刻な事態を示したうえで、「知事の発言は命にかかわる問題であり、看過できない」と批判し、撤回を求めました。
小池知事は「災害時とも言える現在の状況を、『医療非常事態』と位置付けた上で、対策に万全を期していく」とのべただけで、自らの責任には触れず、発言の撤回もしませんでした。
パラ根拠なく「成功に導く」
パラリンピックの開催を巡って、東京都医師会の尾㟢治夫会長は「開催は無理だと思う。医療サイドとしては『難しい』と判断するのが妥当ではないか」と発言しています。また、パラリンピックに児童・生徒を観戦動員する「学校連携観戦プログラム」についても、都教育委員会臨時会(8月18日)に出席した4人の委員全員が中止すべきと主張。しかし都教委は実施するとしています。
あぜ上都議は尾㟢会長の発言を紹介し、「命を守ることを最優先に、パラリンピックは直ちに中止の決断をし、コロナ対策に集中すべきだ」と迫りました。また学校連携観戦について、五輪では中止になったことをあげ、「デルタ株により感染拡大がさらに悪化し、子どもの陽性者が急増しているのに、パラリンピックで学校連携観戦を行える根拠は何か」とただし、中止を求めました。
小池知事は根拠も示さずに「安全・安心な大会最優先に、パラリンピックを必ずや成功に導いていく」と強弁。藤田裕司教育長は学校連携観戦について「(教育委員会臨時会)出席の委員から厳しい意見や指摘を多くいただいた」と認めながらも準備を進めるとしました。
命を救う体制具体的に提案
あぜ上都議は「命を救う態勢整備が急務」だとして、「あらゆる手立てを尽くして患者を受け入れる施設を増やすこと」を要求。広いフロアをパーティションで仕切って多数のベッドを配置した、いわゆる「野戦病院型」施設や、自宅療養者への支援強化、自粛とセットにした事業者・都民への支援など、具体的に提案。
また、最前線でコロナ対策に当たる都立・公社病院の独立行政法人化の中止、PCR検査の抜本的拡充、事業者や生活困窮者への補償、支援を求めました。
小池知事は事業者への自粛とセットの支援について「中小企業がコロナ禍の厳しい状況を乗り越えられるよう、適切に支援していく」と答えました。
補正予算修正案共同で提出
新型コロナ対策に伴う一般会計補正予算案について、共産党、立憲民主党は「ワクチン接種促進キャンペーン」経費10億円を削除する修正案を共同提出しました。接種をためらう若年層に、接種を促進するPR費用が盛り込まれています。
共産党の尾崎あや子都議は採決に先立つ討論(20日)で、「若者に問題があるかのような誤ったメッセージになる恐れがある」「今、力を入れるべきは、希望する方が安全・迅速に接種を受けられる環境を整えることだ」と強調。立憲の阿部祐美子都議は「若者が接種を望んでもワクチンが足りない状況で、こんな税金を投じるのは理解できない」と指摘しました。
しかし、自民党、都民ファーストの会、公明党などが反対し、否決されました。専決処分されたコロナ対策7585億円の補正予算2件を承認しました。
尾崎都議が討論
採決に先立つ討論で尾崎都議は、コロナにより自宅で死亡する事例が相次いでいることを示し、小池知事の「自宅もある種、病床のような形でやっていただく」という発言の撤回を要求。あらゆる手段で都民の命を救う体制整備、自粛とセットでの補償で事業者・都民の生活支援強化を求めました。パラリンピックと学校連携観戦を中止し、コロナ対策に集中するよう主張しました。
学校連携観戦について立憲も反対し、自民党は「実施すべき」と主張しました。
コロナ、オリパラ特別委を設置
臨時議会では、新型コロナウイルス対策の特別委員会が設置されました。日本共産党は和泉なおみ幹事長の談話で「議会のたびに合計11回の動議を提出するなど、ねばり強く求めてきた成果」だと評価。「専門家を招いての参考人質疑など、特別委員会で大いに議論し、積極的に提案していく」としています。
委員長は自民党の菅野弘一都議。定数は23で自民、都民が各6、公明、共産が各4、立民が3。共産党は一人会派を含む構成を提案しましたが否決されました。共産党の委員は尾崎あや子、原のり子、斉藤まりこ、藤田りょうこの各都議。
また、オリンピック・パラリンピック特別委員会も設置。共産党はオリ・パラの検証を明確にする独自案を提出しましたが、否決されました。
定数は18で、委員長は自民党の高島なおき都議、副委員長3人、理事3人とも自、公、都で独占しています。共産党の委員は、あぜ上三和子、池川友一、とや英津子の各都議です。