コロナ禍の影響が1年半以上も長引き、非正規労働者や女性、ひとり親世帯、若者、外国人など弱者とされる世帯については、生活さえままならない困窮状態に置かれていることも珍しくありません。東京地方労働組合評議会(東京地評)は、東京民主医療機関連合、東京社会保障推進協議会らと一緒に支援活動を行うとともに「くらしと健康アンケート」を実施しました。支援活動の特徴と、アンケートから見える実態などについて紹介します。(菅原恵子)
3割が「医療あきらめた」
各地でフードパントリー(食品の無償配布)や相談会などを様々な団体が展開する中で、昨年12月23日、豊島区で東京地評らが行った「コロナに負けない!食料×生活支援プロジェクト」の取り組みは「多角的に生活困窮者の支援をする」ことから注目を集め、NHKやTBSなどの報道番組でも注目されました。東京地評事務所付近の豊島区・文京区在住、在勤者のみならず、23区東部や多摩地域、埼玉県南部などからも254人の参加がありました。
また労働組合(労組)が労働者だけに留まらず困窮者の支援を行うことは画期的で、取り組みは地域での労組の活動や存在を知ってもらうことにつながりました。
東京地評で担当した鎌田建さんは「この取り組みは〝困窮者に対する施し〟ではなく、普通の人に覆いかぶさる困難に対応するもの」と強調します。実際、訪れたシングルマザーは「行政の支援より助かる」と語ります。
渡した支援物資は食料の他、寄付やカンパでまかなった生活物資。中でも学用品や生理用品が準備されたことは新しく、来場者の7割を占めた女性にとって、より助かったと言います。女性のみが入室できる〝女性・子どもスペース〟では、シングルマザー同士が励まし合う場面も見られ、2008年に起こったリーマンショック時の年越し派遣村が男性の派遣労働者が中心だったのとは違う光景です。コロナ禍では一見、貧困に見えない人の生活が破壊されていることが見て取れ、支援も多様性を視野に入れています。
続いて今年3月30日に行われた第2回目では234人が来場し、9割が女性で全体の6割が20歳未満の子どもがあるひとり親世帯。さらに全体の7割が20~49歳の働き盛りであり、勤務中の保護者に代わり中高生5人が受け取りに参加したケースもありました。
正規雇用でも困窮が
2回目の来場者を中心にアンケートを実施したところ、「生活困窮は不安定就労者などに集中的に表れるとともに、正規雇用労働者にも迫り始めている」ということが明らかになっています。
また、この1年間で家賃やクレジットカードなどの生活費の支払いに困った経験のある人は6割超、17%が年6回以上経験していることが明らかになりました。
医療費の支払いに不安を感じたことのある人は39%、この1年間に経済的理由で医療をあきらめた経験がある人が33%にのぼっているといいます。
東京地評が調査をもとに試算した月の最低生計費24万6千円以下で働いている人は来場者の77%だといいます。「残業代込みで生活を成り立たせているのに、コロナ禍で減額になっています。労働者の賃金が低く抑えられていることの現れであり、最低賃金の大幅引き上げには猶予がない」と東京地評の伊藤暁さんは訴えます。
さらに鎌田さんは「並んでいる人の中に報道のカメラを気にしている人がいます。フードバンクに参加していることを知られたくないと言う人もいて想像以上に深刻で十分な配慮が必要です。困った時はお互い様を合言葉にしました」と語ります。
伊藤さんは「10月から東京の最低賃金は時給1041円に上がりますが、それでも全く足りません。8時間働いて生活できるには時給1600円が最低必要ですから、幅広い運動が必要です。そのための小規模、中小事業者支援策も強く求めていきます」と主張します。
コロナ禍にあえぐ生活者と日本の企業の9割を占める小規模、中小事業者に十分な支援が行き渡るよう、「臨時国会を開会し早急な対策をして欲しい」との声が都民から上がっています。