安全と学び、柔軟な対応で 感染不安の中の新学期

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 子どもへの新型コロナウイルスの感染が急増しています。先週開かれた都のモニタリング会議では、「10歳未満及び10代の割合が4週連続して上昇」と指摘され、「新学期を迎えた学校生活での感染防止対策の徹底が求められる」との警鐘を鳴らしました。子どもには感染しにくいとされた従来株と違って変異株は、子どもにも感染し、家庭への感染拡大が心配されます。保護者や児童・生徒から不安の声が広がる中、新学期を迎えた都内の学校の対応について調べました。
(長沢宏幸)

23区 10区で特別対応

 新学期への対応は自治体によって様々です。23区のうち10区が臨時休校や短縮授業、対面とオンラインを選択できるハイブリット授業など、何らかの対策を導入していることが東京民報の取材で分かりました。
 また通常通りとする区でも、感染対策にこれまで以上に力を入れ、本人や保護者に基礎疾患があるなどをはじめ感染不安から登校を控えたいと希望する家庭にインターネットによるオンライン授業を準備し、欠席扱いにしないなど、どの教育現場も感染不安と「学びの保障」との狭間で苦慮している実態が浮かび上がってきました。

世田谷区は検査を強化

 世田谷区では、1~2日を午前中までの短縮授業とし、3~10日は密を避けるため学級を2分割して隔日で登校とオンラインの分散授業とします。登校の児童・生徒の給食は実施、9月中の土曜授業は実施しません。13日以降の対応は、改めて通知するとしています。
 また、9~12月末まで感染拡大を防止するため、これまでの社会的検査に加え臨時的な対応として任意の抗原検査を実施。学校などで陽性者の発生が確認され、陽性者と接触の可能性がある児童・生徒を対象に検査キットを配布します。検査は自宅で行い、鼻孔から検体を自己採取。1時間以内に出る結果を学校に報告します。
 2学期制を採用する足立区では、小学校と中学1、2年生は9月1~11日まで臨時休校とし、中学3年生は期末試験時期なので9月1~4日は臨時休校、6~11日は4時間授業(試験)とします。13日以降は午前中のみの授業となり、対面かリモートの選択が可能で、給食は希望する生徒に提供します。分散登校は校長の判断で行い、給食を食べて午後から授業を開始する学校もあります。
 12日まで午前中の短縮授業とする練馬区は、「学びの補償を重視し、可能な限り学びに時間を割きたく、感染状況も踏まえたうえでの判断。13時間分くらい授業が不足することになるが、後で補足できると考えている」(区教委)としています。給食については「子どもたちの健康面を考え、栄養のあるものを食べてほしいという思い」(同)から提供します。部活動は原則中止します。
 港区では当面12日までは対面とオンラインによるハイブリットで授業を行い、選択できるようにしました。これまで同区のオンライン授業は、配信したものを一方的に見るだけでしたが、終了後に課題をオンラインで出せる仕組みなどを整えたため、オンラインでも出席扱いとするようになりました(従来は欠席にはしない扱い)。その後は、緊急事態宣言の動向によるとしています。
 1日から通常通り授業を始めた荒川区は、「昨年の臨時休校で子どもが見られない家庭にどう応じるかという課題があった。そのため子どもの居場所を失ってはならないし、学校は社会的な基盤であるため、通常の対面授業を基本に置きながら、オンラインという選択肢を用意」(同区教委)しました。ただ回線には限りがあるため、パンクするほどオンライン希望者が増えた場合、各学校で方針や対策を改める必要があるとしています。

共産党議員団が申し入れ

 日本共産党都議団は多くの学校が新学期を迎えるのを前に、「デルタ株による事態急変から、子どもたちの安全と学びを保障するための緊急申し入れ」を8月30日に行いました。
 申し入れでは▽学校の状況に応じて、登校見合わせの選択、分散登校、オンライン授業などを柔軟に組み合わせて対応すること▽親の仕事等で登校が必要な子どもへの登校や食事等の保障、濃厚接触者を狭く見ず対象者を拡大したPCR検査の実施▽無症状者からの感染を防ぐため頻回な検査体制の実施―などを求めています。
 また今後の感染状況から一定の臨時休校となった場合には、学習指導要領を弾力化し、詰め込みにならないよう授業内容の精選と、子どもの成長に必要な行事を行えるようにすることなどを求めています。

菅首相、政権を投げ出し
政権交代で「何より命」に

 菅義偉首相は3日、自民党の臨時役員会で、任期満了に伴う同党総裁選(17日告示、29日投開票)に立候補しないと表明しました。昨年9月16日に「安倍政治の継承」を掲げて就任した菅首相は、約1年で政権を投げ出す結果になりました。
 新型コロナ対応の無為無策、東京五輪強行などによって、内閣支持率が大幅に落ち込むなかでの退陣表明です。4月の国政3補選、7月の都議選、8月の首相地元の横浜市長選などの選挙結果を受けて、自民党内の「菅離れ」が加速していました。
 菅首相の退陣表明があった3日の夕方、三鷹駅前では、日本共産党の街頭演説で笠井亮衆院議員(比例東京ブロック予定候補)が訴えました。
 「菅首相辞任へ」と大見出しの「号外ビラ」や、辞任を伝えるプラスターが道行く人の注目を集めました。
 笠井氏は「国民の怨嗟の声に追いつめられた政権投げ出しです。しかし、菅さん一人の問題ではない。安倍・菅政治の9年間の破たんです。自民党というコップの中の争いではなく、総選挙での政権交代こそ必要だ」と、力強く訴え。「なにより、いのち。ぶれずに、つらぬく」という新しいポスターを示し、「命ないがしろの政治を変えよう」と呼びかけました。
 立ち止まって聞いていた武蔵野市の男性(78)は、「菅さんの辞任は敵前逃亡だ。責任を無視した政治をどうにかしてほしい」と憤っていました。

一分

 自民党総裁選への不出馬を3日に表明した菅義偉首相は、著書「政治家の覚悟」に、「『伝家の宝刀』人事権」という章を設けています▼総務相だった当時、自身の目指したNHK改革に慎重姿勢の官僚を自身の一言で更迭したと回顧。その一方で、自身が評価する官僚は異例の出世をさせるなどして、組織を自身の方針に従わせたとして、「人事権は大臣に与えられた大きな権限」と記しています▼菅氏が、首相になった直後、行ったのも、学術会議から推薦された会員名簿を理由も示さずに一部、任命拒否することでした。密室で「人事の強権」をふるうことを権力の源泉にしてきた菅氏が、首相としての最後を迎えるきっかけも、人事となったのは、歴史の皮肉です▼菅氏は自身の後ろ盾となってきた二階俊博幹事長を交代させる自民党役員人事を模索。それが、国民の目先を変えて総選挙に打って出る思惑ではないかと、「菅離れ」が強まっていた党内の反発を買い、退陣表明に追い込まれました▼コロナ対策の無為無策をはじめ、国民の怒りの強さと深さに追い詰められての政権投げ出しです。問われるのは、自民党内での看板掛け替えではなく、安倍・菅政権による政治の私物化の9年間。政権交代のかかる総選挙は、目前です。

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