都議会は7日、新型コロナウイルス対策特別委員会を開き、自民、都民、公明、共産、立憲の5会派の委員が質問しました。同委員会は日本共産党都議団が繰り返し要求して実現したもので、この日が初めての質疑でしたが、小池百合子知事は出席していません。共産党は藤田りょうこ都議が質問に立ち、都の感染対策について十分な効果が上がっていないとし、その要因と今後の感染対策についてただしました。
臨時医療施設の設置急げ
東京都では9月12日までの今年255日のうち、9割に当たる227日は「緊急事態宣言」または「まん延防止等重点措置」の期間で、都民は何らかの制限を受けて生活してきました。「宣言」は、9月末までの延長が決まっています。藤田都議は「都がこれまでやってきたことが、十分に効果を上げていないことを表している」と指摘。その重大な要因の一つとしてあげたのが、楽観論を振りまく都の不適切な情報発信です。
藤田都議が問題にしたのは、都民の反対世論に背を向けて、延長された緊急事態宣言の中で強行した東京五輪開会(7月23日)直後の吉村憲彦・福祉保健局長と小池知事の発言です。
五輪開会直前(7月21日)に開かれた都のモニタリング会議では、感染力の強いデルタ株に置き換わりが進むと「2週間を待たずに第3波を遙かに超える危機的な感染状況になる」との警鐘が鳴らされていました。
実際、感染拡大の傾向は顕著となり、7月27日には新規感染者数が過去最大を上回る2848人に達しました。吉村局長の発言は、その日、報道陣を前に行われ、「いたずらに不安を煽(あお)るようなことはしていただきたくない」「医療提供体制がすぐににっちもさっちもいかなくなって、死者がばたばた出ることは現状ない」とのべたのです。
自宅で21人死亡
しかしモニタリング会議の警鐘が現実となり、吉村局長の発言とは真逆の事態が進行。8月に入って1日の新規感染者は過去最多5773人を記録するなど、感染爆発が起こりました。同月21日には自宅療養中や入院先などを調整中の人が約4万人に達し、自宅療養で亡くなった患者は昨年12月から8月末までの32人のうち、21人が8月でした。最近は連日のように2桁の死者が報告されています(グラフ)。
藤田都議はこうした事実を示し、吉村局長の発言は「五輪開催を強行した小池知事の責任が問われることがないよう、忖度したものと言わざるを得ない」と強調。小池知事も局長発言の翌日、第3波の時とは状況が異なるなどと楽観的な認識を示していたと指摘。「都民の命より五輪を優先し、楽観論を振りまいて危機的状況への備えを遅らせ、都民の意識にも影響を与えた吉村局長と小池知事の責任は極めて重大だ」と厳しく批判。「反省なくして、まともな対策はできない」として、発言の撤回、訂正を求めました。
吉村局長は1月の第3波と比べて「死亡者数は相対的に抑えられている」「効果的な感染予防の行動を取ってもらうことが重要と考え発言した」などと開き直りました。
命守る対策を
藤田都議は「自宅療養中に亡くなることがあってはならない」「都民の命を守り抜くというのであれば、急変に対応できない自宅ではなく、原則入院、もしくは宿泊療養ができる施設整備をするべきだ」と主張。北多摩南部医療圏の6市長や都市長会、都医師会などが求めている臨時医療施設の早急な開設を求めました。
吉村局長は自宅療養中の死亡者増加を認めましたが、「あってはならない」とはのべませんでした。担当部長は「中等症患者を適切に医療につなげ、重症化を防ぐことは重要」「複合的な機能を有する施設を整備し、特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)に基づく臨時の医療施設として役割を果たしていく」とのべました。
藤田都議はまた、市町村と連携して自宅療養者への生活支援を拡充するため、感染症法の規定に基づき、自宅療養者の氏名・住所など個人情報を市町村に提供すべきだと提案。福祉保健局の杉下由行担当部長は「早急に情報共有を図っていく」と答えました。
検査の拡充を
藤田都議は都の検査件数が1日3万件程度と少なく、東京都社会福祉協議会の調査でも「濃厚接触者になったのにPCR検査ができない」との声が多数寄せられたことや、子どもの検査が受けられずに医療機関を探し回ったという保護者の声などを示し、保健所への支援強化や高齢者・障害者施設の検査の延長・対象拡大、医療提供体制が弱い島しょ地域の検査拡充を求めました。
福祉保健局の山口真吾部長は福祉施設の検査延長について、「今後の感染状況を踏まえ検討していく」と答えました。
知事の出席を要求
藤田都議はこの他、コロナに感染した障害者の入院医療体制の確保、家族が濃厚接触者となり自宅待機で欠勤扱いとなる濃厚接触者への支援、飲食店が時短・休業要請に応えられる補償や支援の抜本拡充、緊急事態宣言が再延長となった期間の協力金の先渡しなどを提案しました。
藤田都議は最後に、今後の委員会への小池知事の出席や、緊急事態宣言延長に伴う補正予算案提出の場合に都議会臨時会を招集するよう強く求めました。
都が独法の定款提案へ
共産党都議団 中止求め申し入れ
都立・公社
病院独法化
小池百合子知事はコロナ禍でかけがえのない役割を果たす都立病院・公社病院を採算を優先する地方独立行政法人化するため、独法の定款を28日開会する都議会第3回定例会に提出しようとしています
日本共産党都議団は13日、直ちに独法化の準備を中止し、定例会に定款を提出しないよう小池知事あてに申し入れました。
新型コロナ感染が急拡大するなか、都立・公社病院は2000床の専用病床を確保し、透析患者、妊婦、障害者など入院先の調整が難しい患者を積極的に受け入れています。現在の第5波への対応では、救急搬送が困難な患者を受け入れる病床を36床確保。4つの公社病院には主に中等症患者に対応する酸素・医療提供ステーションも設置しています。
一分
「野党にとって意味ある一日となった」「共闘へ、政策の旗印が立った」▼8日に行われた、東京での市民と野党の共闘と、都政転換を目指す「呼びかけ人会議」の集会でも、喜びの声が相次ぎました。この日の朝、野党4党と市民連合が合意した総選挙への共通政策です▼共通政策は「市民連合は、野党各党に次の諸政策を共有して戦い、下記の政策を実行する政権の実現を目指すことを求める」と提起。憲法に基づく政治、コロナ対策、格差と貧困の是正、地球環境を守る、ジェンダー平等、権力の私物化を許さない、の6分野にわたって政策を列挙しました。安倍・菅政権の9年間の政治の流れを根本的に転換する政策の柱が、市民と野党の共有のものとして立てられました▼同時に行われている自民党総裁選は、対照的です。主要候補の政策は、改憲を目指す点でも、原発再稼働をめぐっても、森友問題の再調査などの政治の私物化についても、似たり寄ったり。安倍・菅政治を継承する姿勢を競い合う、コップの中の争いです▼総選挙は、野党が第一党も含めて共通政策で合意し、政権交代をかけた与野党の激突の構図がくっきりと生まれようとしています。コロナ禍のなか、命と暮らしを第一にした政治の実現がかかります。