都立病院と公社病院を独法化し設立する「東京都立病院機構」の組織形態などを定める定款議案が11日、抗議の声が広がる中、都議会厚生委員会(委員14人)で採決され、自民党、都民ファーストの会、公明党などの賛成で可決されました。日本共産党(2人)、立憲民主党(1人)、自由を守る会(1人)は反対しました。
都議会前に500人
日本共産党の藤田りょうこ都議は討論で、「採算を優先することによって、行政的医療が削減され、患者負担が増えていくのが独法化だ」と指摘。コロナ禍の中でなぜ今独法化なのかという疑問に対し、都は代表質問でも、厚生委員会質疑でも、まともに答えることができなかったと強調。「独法化ではなく、コロナ医療の充実を」との世論が広がる中での定款提出を厳しく批判し、独法化中止を強く求めました。
自由を守る会の上田令子都議は、「小池知事のパフォーマンスのために大事な都民の命を司る都立病院の組織編成となる」「コロナ禍で野戦病院化している状況の中での独法化は著しくそぐわない」などとのべ、定款議案に反対しました。
定款議案は13日の最終本会議で採決されます。
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「都立・公社病院を独法化する定款は撤回しろ」「都民医療を後退させる独法化はやめろ」。そびえる都庁舎と向き合うアーチ状の都議会棟に怒りのコールが響きます。
都議会厚生委員会で独法の「定款」議案が審議された8日、これに反対し、撤回を求める「人権としての医療・介護東京実行委員会」が呼びかけた抗議行動です。
約500人が駆けつけ、横断幕やプラカードを都議会に向けて掲げました。
同実行委の窪田光氏が「各会派のみなさんには、私たちの声を聞き真摯な判断を」と訴え。都立病院職員も加盟する東京自治労連の矢吹義則委員長は、独法化反対が多数を占めた職員アンケート結果を紹介し、「職員、家族を犠牲にする独法化は許されない。コロナで頑張っている職員を励ます意味でも、反対の声を大きく広げてほしい」と呼びかけました。
都内の約1万1500人の保険医でつくる東京保険医協会の須田昭夫会長は、「パンデミックで患者が増えた時に都立・公社病院が病床を増やしてくれたおかげで、何とか乗り越えることができた。都立・公社病院は災害、緊急時のための余力を持っていなければならない。民間ではできません。今後とも都立・公社病院存続へ力を合わせたい」と力を込めました。
区立台東病院を守る会、多摩メディカルキャンパスを良くする会の代表も発言。請願署名の呼びかけ人の一人、本田宏医師(NPO法人医療制度研究会副理事長)は、日本の公的病院の比率(20%)が先進国で最低クラスということが医療危機を招いたと指摘。「“財政赤字”(の名目)で医療機関を切り捨てる流れを止めましょう。都民の命を守ることが都の第一の使命、都は公的病院を潰してはいけない」と力説しました。
行動には日本共産党都議団が激励にかけつけ、福手ゆう子都議が「都議会内の共闘をさらに強めて、全力で頑張る」とあいさつ。立憲民主党の西沢けいた都議がメッセージを寄せました。司会者から請願署名の紹介議員や議案に反対の議員がこの2会派に加え、グリーンな東京の漢人あきこ都議、自由を守る会の上田都議が加わり、都議選前から倍加したとの紹介がありました。
行動終了後、参加者は知事室と都議会各派を訪ね、都立・公社病院の定款を撤回し、独法化を中止するよう要請しました。