都議会の各会計決算特別委員会が12日開かれ、2020年度会計決算について、全局にわたる質疑が行われ、自民、都民、公明、共産、立民の各会派代表が質問しました。日本共産党は、とや英津子都議が新型コロナの感染対策やコロナ禍で困窮する都民への支援について都の対応をただしました。
都議会で各会計決算特別委
高齢者や障害者、子育て世代など、住宅に困っている人のために、東京都が取り組む「住宅セーフティネット制度」。始まって2年が経ちますが、この制度が都民に役立つものとなっているのか、とや都議がただしました。
同制度は、住宅を必要としている人に対し、民間の空き家や空き室を活用して、入居を拒まない賃貸住宅の供給を促進するというもの。都は「東京ささエール住宅」との愛称をつけ、専用住宅の家主に補助を行う「家賃低廉化補助」を行って促進しています。
ところが2020年度の実績を見ると、世田谷区3件、豊島区2件、練馬区1件、最も多かった八王子市でも34件と、まったくふるっていませんでした。貧困と格差の拡大にコロナ禍が重なり、収入が減って住宅に困っている人が増えています。実際、住居を失うか失うおそれのある人を対象にした国の住居確保給付金を申請した都民は、一昨年の100倍にも増えています。
こうした人たちにとって、同制度はわらをもすがる思いのはず。とや都議は、賃貸契約が進まない背景に、大きな問題があることを質問で浮き彫りにしました。
その最大の問題は、安い家賃で借りられることが売りのはずの「東京ささエール住宅」なのに、月額5万円以下の家賃は、専用住宅を除いた登録住宅3万9469戸のうち、わずか0・7%、281戸しかないことでした。一方、10万円超が24%、最高額は38万円でした。こんな高い家賃の住宅に、生活に困窮している人たちが入れるわけがありません。
入居進まぬ「ささエール」
とや都議は、その要因について、登録住居が進まないなか昨年度、大量の管理住宅を保有する大手住宅管理・建設会社の大東建託(本社・港区)1社が、突然増えた専用住宅以外の登録住宅のうち、92%3万6452戸も占めていたことを明らかにしました。とや都議は「すでに一般に貸し出している賃貸住宅を、要配慮者向け住宅(東京ささエール住宅)として、登録しただけというのが実態」だと、厳しく批判しました。
そのうえで、とや都議は、同制度について「そもそも大量の空き家を活用するという制度設計自体が、机上の空論だった」と指摘。「直接、借主に対する家賃補助制度が必要」だとし、都に見解を求めました。
榎本雅人住宅政策本部長は家賃補助について「典型的な所得配分政策であることから、国での検討が必要」「対象世帯の範囲や民間家賃への影響、財政負担の問題、生活保護制度の関係など多くの課題がある」などと、弁明に終始しました。
建替え公社住宅を セーフティ一翼に
とや都議は「住宅に困窮し、命の危機にさらされている人が増えている中、悠長なことを言っている場合ではない」と批判。「国に働きかけるのはもちろん、都として急いで家賃補助制度の具体化に足を踏み出すべきだ」と迫りました。
また「多くの先進国が低所得者向けの公的賃貸住宅の供給と公的家賃補助を両輪としているのに、日本と東京はその両方とも不十分」だとして、石原都政以降ゼロの都営住宅の新規建設に足を踏み出すべきだと強調。さらに住宅政策審議会の答申も示して、公社住宅も住宅確保要配慮者向けに整備されるべきだとし、建て替え時に家賃が跳ね上がり、入居者が住み続けられなくなる事態をなくすよう求めました。
榎本本部長は公社住宅について「住宅セーフティネットの一翼を担いながら住宅を必要とする都民に賃貸住宅を提供していく」とのべ、事実上そうした立場で指導すると答えました。
学生支援 専管部署の設置求める
コロナ禍で大学生は、アルバイトの減少や対面授業、サークル活動の制限、交流の大幅自粛など、経済的にも精神的にも追い詰められています。
とや都議は学生から寄せられた深刻な声を紹介し、学生への支援が「いよいよ切実な課題となっている」のに、東京都には他県にあるような大学生支援を主に所管する組織がないことを明らかにし、支援拡充を求めました。
とや都議は、学生が1年以上の長期にわたり、深刻な状況に置かれているのは社会全体の問題だとし、「都が大学や学生にどのような支援をしてきたかが問われる」とのべ、都の認識を問いました。
武市敬副知事は「多くの学生は孤独や不安を感じるとともに、経済的にも困窮する状況に置かれてきた」と答弁。一方、私立学校を所管する生活文化局の20年度決算の中に大学生支援の事業はあるかとの質問に武市玲子局長は、「国の責任において行うべきもの」とのべ、大学支援の事業がないことを認めました。
共産党都議団は、これまでもコロナ禍での大学生支援を本会議の代表質問で繰り返し求めてきましたが、そのたびに「大学生は所管していない」「うちじゃない」と答弁者が決まらない状況を繰り返してきました。とや都議は「大学生への支援全体について考える専管組織がない状況を脱しなければならない」と強く指摘しました。
22道府県が専管の部署
同都議団の調査によると、22道府県が公立大学以外の大学を所管する部署を設置。京都府では「大学政策課」を設けています。同府では「大学連携会議」で大学の要望を聞き、昨年度の補正予算で1大学当たり1000万円の感染防止対策への支援を実施。さらに大学から学生に行っている直接支援に対する補助の要望があったことから、今年度の補正予算で学生へのポケットWi―Fiの貸与や学生への食材、生活必需品などの配布への補助を実施しています。
とや都議は、こうした事例を示し「例えば京都府のように感染防止対策として1校1000万円の支援を行っても17億円。東京都にとって、けっして出せない金額ではない」とのべ、都の見解を求めました。吉村憲彦財務局長は「様々な支援策が考えられる。予算編成の中で様々な議論を経て決まることになる」と答えました。
とや都議は、都でも大学生を所管する部署をきちんと設置して大学生の現状を把握し、要望を聞き、感染防止対策やオンライン環境整備、給付金などの生活支援、家賃や学費への支援などを行うよう強く求めました。
困窮者納税 「徴収緩和制度適用する」
とや都議はコロナ禍で職を失うなど、経済的に困窮している人たちへの負担軽減は急務であり、納税が困難になった人への対策が重要だと強調。税の徴収猶予の延長期間が終了後も困窮し、税金が払えない人への対応について質問しました。
国はコロナの影響で納税が困難になった人への徴収猶予する制度(最長1年)を2月で終了しましたが、都は年度末まで延長しました。猶予期間は最長3年で、適用件数は1万7933件にのぼりました。重い税負担に苦しむ都民にとって救いになりました。
とや都議は都の対応を評価した上で、「1年猶予すれば、次年度からは支払いが2倍になる。1年経った時点でもっと厳しくなっている方もいる」とのべ、「徴収猶予の期間が終了する段階で、失業などで生活困窮に陥っているような方の場合、どのような対応をしているか」と質問。砥出欣典主税局長は「地方税法で定める換価(差し押さえた財産の処分)の猶予や滞納処分の執行停止といった徴収緩和制度を適用する」と答えました。
とや都議は「困窮状態が改善しない場合は、税金を強制的に徴収する滞納処分の執行を停止するということで重要な答弁だ」とのべ、実効性をもって対応するよう求めました。