総選挙結果を受け、「野党の共闘は失敗」などの議論がメディアをにぎわせています。実際は各選挙区をみると、都内でも、全国でも、一本化した候補が勝利・健闘するなど共闘が効果を発揮しています。立憲民主党候補が共闘候補(8区=吉田晴美さん、9区=山岸一生さん)として勝利した選挙区と、日本共産党の候補(12区=池内沙織さん)が統一候補となった選挙区の、市民連合など市民と野党をつなぐ市民組織の中心メンバーに、選挙戦を振り返り共闘発展の課題を聞きました。
地域から社会変えてこそ
政治を変える8区の会 東本久子さん
野党共闘は戦いのベースですが、中央レベルで候補を調整しただけでは当選しません。多くの市民がつながってこそ、勝つことができるからです。
8区では2年ほど前から、野党から立候補を予定していた3氏がどんな社会をつくりたいか語り合う集会や、共同の街宣を何度も開いてきました。そうした過程を無視して、選挙直前に中央レベルで統一候補が決められそうになったときには、市民の抗議集会も開きました。
今回の共闘は、直前に共闘の枠組みが決まる選挙区も多くありました。それでは、多様な市民とはつながれません。
8区で共産党、れいわが一本化で候補者を下ろしてくれたことに感謝しています。志位さん(共産党委員長)の「見返りは民主主義」という言葉に感銘を受けました。
私たちは市民と野党の統一選対をつくり、50人規模の人たちが参加しました。広い会議室があるのは共産党の地区委員会なので、そこに各党の支持者も市民も何の違和感もなく集まって、それぞれの得意分野を生かして選挙に取り組みました。
民主主義は結果ではなく、地域から社会を変えていこうという過程自体です。8区の勝因は、そういう本気の共闘をやったことだと思います。
(同会事務局)
市民参加の拡大選対で
ねり9(ねりま9区 みんなで選挙)共同代表 伊藤朝日太郎さん
ねり9では、衆院選に向けて、市民がつくりあげた共通政策で統一候補を実現したいと、3度にわたり野党各党の候補者などが参加する政策討論会を開きました。心掛けたのは、各政党に対等に接し、互いに気持ちの良い形で統一候補を生み出そうという姿勢です。山岸候補とは8月に政策協定調印式を開くことができました。
ありがたかったのは、山岸選対から、各党や市民の入った拡大選対を作りたいと、度量の深い提案が出されたことです。選挙戦の組み立て方にも、市民のアイデアを取り込んでもらえました。新聞記者として沖縄取材の経験を持つ山岸さんも、翁長雄志さん(元沖縄県知事)を非常に尊敬していて、「オール沖縄のような共闘でこそ、政治は変わる」と語り続けていました。
投票日2日前の市民と野党の共同街宣では、マイクを握る市民がとつとつと話す横で、各党の議員が裏方に徹して、チラシを配ったりしてくれました。
相手陣営には絶対にまねできない光景で、「この選挙は勝てる」と思った瞬間です。
「共闘は失敗」など的外れです。自民党地盤が強く長年、小選挙区で自民党が勝ってきた9区でも、本気の共闘で勝てた。これは一つのモデルケースではないでしょうか。
(弁護士)
足腰の強い共闘つくろう
みなせん12区(みんなで選挙@東京12区)共同代表 大野裕之さん
選挙戦で良かった部分は、市民としての活動が深化したことです。さまざまな地域からの応援や、新しい人たちとの出会いがありました。マンパワーが広がったおかげで、みなせん独自でつくったチラシの配布や、電話かけ、街頭でのシール投票にも取り組めました。活動の幅や活発度が、格段にアップしました。
それだけに、立憲民主党や共産党が議席を減らした結果はショックでした。接戦の選挙区が増えるなど、共闘は効果を発揮したと思いますが、自民党や公明党の「ドブ板選挙」の手法や組織選挙にどう打ち勝つか、共闘発展の大きな課題です。
共産党にお願いしたいのは、安全保障政策や天皇制などをめぐり、国民のなかにある疑問に積極的にアピールすることです。疑問が出たら答える、では不十分です。近くで運動する人の外側にいる、知識や関心が高くない、幅広い国民への積極的なイメージ戦略が必要です。
共闘の二つ目の課題は、足腰の強い共闘になることです。参加する各党が「自力」・「地力」 を強化し、日常活動の基盤をしっかり持っている同士が協力するからこそ、大きな力が発揮できます。三つ目の課題は、投票率の大幅な向上です。無党派の人たちが大きく動くような選挙にしてこそ、勝利の道が開けます。
(東洋大教授)