武蔵野市条例案 外国人にも住民投票権 / 右派勢力がヘイト街宣

自民も加わり異常な敵視

東京都武蔵野市が住民投票をめぐり、外国人を日本人と区別せず投票権を認める条例の制定を目指していることに対し、右翼・排外主義の団体が相次ぎ同市へ抗議の街宣活動に押し寄せています。その根底にはアジア人差別などを背景にした外国人参政権に対する右派勢力の異常な敵視があります。

11月22日、同市の吉祥寺駅前に右派政治団体の街宣車2台が現れ、日の丸の旗が立ち並びました。街宣車の上から千葉県の団体の女性幹部は、条例制定は外国人参政権につながると演説しました。

“乗っ取り”デマ

女性幹部らは同日、武蔵野市役所前でも街宣を行い、中国人を念頭に「この国を乗っ取ろうとする心根がある」などと主張。ヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返しながら、条例案が成立すれば、外国人の集団移住による“自治体乗っ取り”が現実に起こるかのように訴えました。「中国の影響下にある住民が増え、武蔵野市の行政は実質的に外国の言いなりになってしまう」

また、別の団体の男性もマイクを握り、住民投票そのものに否定的考えを述べました。

条例案は11月19日、松下玲子市長が市議会に提出。同市に3カ月以上住所がある18歳以上であれば、日本人、外国人を問わず投票資格を認めています。

通常、住民投票を実施する場合はそのつど条例の制定が必要となります。武蔵野市が制定をめざす条例は、投票資格者の4分の1以上の請求があれば議会を通さず実施できるため、「常設型」と呼ばれます。

常設型の条例を制定し、外国人にも投票権を認めているのは全国で43自治体。このうち武蔵野市の条例案と同じく、在留期間の要件などを設けず外国人の投票権を認めているのは、神奈川県逗子市と大阪府豊中市です。

実際、外国人が増え、自治体の乗っ取りが起きているのか―。

逗子・豊中両市とも十数年前の条例制定以来、外国人の住民の数は他の自治体と同じ傾向で推移。大きく増えるなどの変化は見られません。逗子市市民協働課は「困ったことは全く起こっていない」としています。

市民は賛成多数

右派団体の主張と同様、「外国人参政権を代替するもの」として、条例案を激しく攻撃しているのが自民党です。旗振り役は、野党共闘に反対し17年に民進党(当時)を離党したのち、希望の党をへて自民党入りした長島昭久衆院議員。「あまりにも急いで決めようとしている」と、松下市長を批判しています。

日本共産党の橋本しげき武蔵野市議は、市内在住3カ月以上の外国人に投票権を認めることは、市が条例の骨子案を議会に報告した2月の時点で公にされていたと反論。「3月の無作為抽出の市民アンケート(2000人対象)では回答者の73・2%が賛成しています。8月に条例素案が公表され、パブリックコメントや市議会各会派の意見聴取を踏まえ、検討されてきたものです。自民党は今まで問題にしなかったのに11月になって突然、拙速だと言い始めました。事実に反する」と語ります。

日本共産党武蔵野市委員会と同市議団は11月28日、声明を発表しました。憲法16条は、「何人も」「請願する権利を有し」ていると定めており、住民投票で意思表示できるようにすることは憲法の精神に合致していると表明。「より進んだ市民参加に挑戦するまち、多様性を認め合い、支え合うまちをめざす取り組みとして日本国憲法の趣旨を十分にふまえたものだ」として、条例制定に力を尽くすと述べています。

(「しんぶん赤旗」2021年12月4日付より)

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