離島の医療は(2) 都立広尾病院は命綱

大島(下)

大島の三原山

5年ほど前、急に胸が痛くなり大島医療センターで診察を受けた男性は、都立広尾病院(東京都渋谷区)を紹介されました。精密検査で大動脈乖離(かいり)と診断され、緊急手術を受けました。退院後は3ヵ月に1回、広尾病院に通院しています。

男性の実家が世田谷区にあるので、宿泊代はかかりませんが、多くの島民は、船が着く竹芝客船ターミナル(港区)のすぐ近くにある「島嶼(しょ)会館」を利用するといいます。

同施設は島民の宿泊場所として建てられ、島民割引があり、2人で1泊8800円(食費別)で済みますが、連泊が必要な島民にとって負担が重いことに変わりはありません。

島民の宿泊施設

男性は今年7月にも別の病気で入院。「5人部屋で3人が島の人。広尾病院は島のことが分かっているので、船や飛行機に合わせ退院時刻も気をつかってくれる」と話します。

広尾病院は敷地内に島民向け宿泊施設(食事は自炊)が5部屋あり、通院患者と付き添い家族が1室1000円、通続1週間利用できます。屋上に24時間の救急ヘリポートも備え、島しよ救急患者の約8割を受け持ち、島で撮影したCTなどの画像を受信するシステムもあります。

広尾病院が島民本位の医療を提供できるのは、東京都が島しよ医療の中核拠点として位置づけ、民間では採算をとるのが困難な分野に公的資金を投入しているからです。

独法化反対署名

ところが小池百合子都知事と自民・公明・都民フアは来年7月にも都立病院・公社病院を独立行政法人にしようとしています。

日本共産党の大島町委員会の中田保さん(78)は「広尾病院は伊豆・小笠原の島民の命を守るかけがえない存在」と強調し、独法化の動きのあった3年ほど前から反対署名運動を展開。署名用紙をガソリンスタンドや店舗に置かせてもらったり、一軒一軒対話を重ねて集めました。

これまでに署名行動を3回実施し、人口7千人超の大島で、毎回600人ほどが署名に応じました。「広尾病院のことで…」と話しかけると対話が弾むといいます。

中田さんは「独法化の問題について、すでに移行した病院での患者負担増などの実例を話すと理解されるが、島全体に浸透したわけではない。実態を伝える運動を広げたい」と話します。

共産党都議団は11月、島しよ向けに「島民の命綱 広尾病院まもろう」との大見出しの議会報告を作成。大島町の党員たちは「いいピラができた」と前を向いています。

(つづく)

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