離島の医療は(3) 独法化反対署名広がる

利島

桟橋から見た利島

 大島と式根島の中ほどにあり「ツバキの島」として知られる利島(としま)は、診旅所が1カ所あり医師1人と看護師3人が常駐しています。医師は約1年おきに交代。薬局はなく、本土の薬局に注文して取り寄せます。

 利島でも都立病院の独立行政法人化が問題になっています。

 5年前の村議選時に日本共産党の笹岡寿一村議の呼びかけに18人ほどの村民が応え「村政を考えるグループ」ができました。

 「独法化反対の署名を集めよう」と声が上がり、公務員をのぞく村民すべてを対象に各家を回り呼びかけ。集めた署名は島の有権者数の半数を超える136人分に上りました。

金銭面の支援を

 医療体制について島民の代表的な声から見えてきたものはー。

 がんの手術で胃と食道を切除し、「一時は体重が34キロまで減った」と話す70代の男性は、「1人での通院は困難で、妻に車いすを押してもらいながらの通院です。船舶や民間のヘリコプター、時には、飛行機に乗り換えるなど、長時間の移動が大変」と話します。妻は2人分の着替えなどが詰まったキャリーケースを、車いすを押しながら運びます。

 医師から3カ月の入院をすすめられましたが、経済上の理由で1カ月で退院し、自宅療谷中。この男性は「うっかり病気にもなれない。行政はもっと金銭面の支援をしてほしい」と話します。

ツバキの実を選別しながら話す女性

 腰痛で神奈川県内の病院に通う女性(80代)は、電車での移動が困難なのでタクシーを使い、2万円以上かかります。

 着替えなどの荷物は先に郵送。「夫に車いすを押してもらいます。移動も、金銭面も大変」と話します。

 60代の男性は、骨折して歩けない状況でも、命に危険はないから緊急ヘリを呼んでもらえないという現状に、「命に危険はなくても痛く、苦しい思いで1日1便の船や民間ヘリを翌日まで待たないといけない。そこを改善してもらえれば」と語ります。

 利島では交通・宿泊費は1回の通院につき、村から7000円の補助金(年6回まで)が出ます。しかし、1回の通院で少なくとも3万円を超える現実をみると少ないと言わざるをえません。

ヘリ呼べる運用に

 笹岡さんは、議会で質問する1カ月前に質問通告書を村民に配り意見を求めます。これまで、25000円を助成するよう求めてきましたが、住民の声を受け、今年の9月議会から「実費の80%」を村が助成するよう求めています。同時に東京都に対して実費の50%を助成するよう共産党の都議団、島しょ議員団と一緒に要望してきています。都が実費の50%を助成するようになった場合は、村が40%の助成をするよう求めています。

 笹岡さんは「旅費だけの問題ではありません。現状は医師の判断で命に危険がない場合、緊急ヘリは呼びません。命に危険がない場合でも患者に著しい苦痛や吐き気、倦怠感がある場合など都内で救急車を呼ぶような状況ではヘリを呼べる運用にしてほしい。患者が大きな荷物を抱えて移動する困難さ、島外で医療を受けるということがどれだけ大変かということを知ってもらいたい」と話します。(つづく)

(「しんぶん赤旗」2021年12月17日付より)

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