共産党議員が再三提起 島内回り難聴者の声聞く
東京都特別区の23区を除く39市町村のなかで、利島(としま)村は初めて補聴器購入費助成制度を導入した自治体です。同村の制度をみました。(徳永慎二)
利島は伊豆諸島の一つです。東京・竹芝桟橋から、高速船で2時間半、大型客船だと7時間半ほど。前夜出て早朝に到着する便があります。人口約330人。「このところわずかに増えている」とは同村住民課の話です。村の地域おこし協力隊などのとりくみの影響では、といいます。
利島村で補聴器助成制度が始まったのは昨年9月。「きっかけは、村議会からの要望です。かなり前から質問でとりあげられました」(住民課)といいます。
村議会の議員定数は6人。議会でとりあげたのは、日本共産党の村議、笹岡寿一さん(80)。計10期のベテランです。笹岡さんは、議会で質問する前に、住民に質問通告書を届けて、要望や意見を聞いて準備します。寄せられた要望については「否定的な答弁でもあきらめないで、議会あるごとに質問するようにしています」と笹岡さん。
必要性を力説
住民課によると、村の65歳以上は約80人です。「東京都区部の23区中7~8区で補聴器助成制度が実施(現在は14区)されていたころだと思います。島内を回ってみると、難聴者が10人ほどいることがわかりました。助成制度があれば助かります、という声があがっていました」といいます。何度か質問しましたが、なかなか実現には至りませんでした。
制度導入前の2020年3月議会。笹岡さんは日本共産党東京都議団の協力も得て、こんな質問をしました。「多くの自治体で、購入費への支援助成が実施されています。本村においても、聴覚に不自由な人が10人程度おられます。実施に向けたとりくみを求めます」。村長は「聴力低下により、日常生活に支障をきたす高齢者については、今後検討していきたい」とのべたものの、実施時期は表明しませんでした。
同年の6月議会。「近年の補聴器は、その人に合わせて調整するものが大半で、価格も30万円から50万円程度と高額です」とあらためて助成制度の必要性を力説しました。住民課長は「各自治体の動向を注視しながら、支援を検討する」と前向きでした。そして、3カ月後の9月に助成制度が始まったのです。
相談制度提案
その後も、笹岡さんは現行制度の拡充を求めてきました。14日に閉会した12月議会。「村の助成額と東京都の補助制度の活用で、10人が15万円以上の補聴器を購入しても60万円程度です」と制度拡充に伴う村負担分の試算を示して、拡充を求めました。
村側は「現時点での拡充は考えていない」と答えましたが、笹岡さんはあわせて、補聴器の調整に悩む聴覚障害者への援助のために、「言語聴覚士の招へい」を提案しました。住民課長は「次年度、耳鼻咽喉科の専門診療を実施する前までに、高齢者で耳の聞こえにくい方への講演を開催し、言語聴覚士へつなげる取り組みをしていく予定である」と答えました。
同村の補聴器助成への申請は、現在はまだありません。笹岡さんは「高額な補聴器を購入しても、調整が難しく、よく聞こえないというケースがあります。結局タンスにしまっておくことになるのでは、という不安があるんじゃないかと推察します。東京都足立区のような、言語聴覚士に相談できる制度を村でも導入するように求めたところ、住民課から資料の提供を要請されて、後日送付しました」と話しています。
■対象者と助成額
利島村の補聴器助成事業の対象者と助成額は次の通りです。
●村内に住む満65歳以上の人
●補聴器の必要を認める医師の意見書のある人
●本人が住民税非課税
●国の補装具支給制度による補聴器の交付を受けていない人
●助成額は1人上限2万円
(「しんぶん赤旗」2021年12月28日付より)