一般会計 7兆8010億円 過去最高も暮らし拡充に背 都立公社病院 7月独法化を前提に編成 東京都が22年度予算案

 東京都は1月28日、2022年度当初予算案を発表しました。一般会計は、過去最高となる総額7兆8010億円で、前年度より3760億円(5・1%)の増額となりました。コロナ禍で中小企業の業績が深刻化する一方、IT企業や大手製造業などの業績好調による税収増を反映しました。特別会計・公営企業会計を合わせた総額は15兆3939億円(前年度比1・6%増)で、スウェーデンの国家予算(約14兆3000億円)を超える規模となります。

病床削減も予算化
 予算案を発表したこの日、東京都の新型コロナウイルスの新規感染者数は4日連続で1万人を超え、過去最悪を更新しました。記者会見で予算案を説明した小池百合子知事は、「都政に課せられた使命を確実に果たし、次なるステージへと力強く歩みを進めることで、希望ある未来を切り拓いていく予算」と強調しました。
 ところが、その予算案はコロナ患者を全国で最も受け入れ、都民の命を守る最後の砦としての重要な役割を果たしている、都立病院と公社病院の独立行政法人化を前提にして編成されています。都立・公社病院の予算は6月までしか組まれておらず、7月から独法化を強行するものとなっています。
 また国の方針に沿い、消費税を財源にして都内医療機関の病床を削減する「病床機能再編支援事業」が予算化されています。
 コロナ対策の多くは補正予算ですでに実施しているものを新年度当初予算に計上しただけです。

保育所整備費は
半減

 入所を希望しても長期間待たされる特別養護老人ホームや介護老人保健施設の整備予算は、4年連続で大幅減額。認可保育園整備の区市町村支援予算は半減されました。
 現状でも高すぎる国民健康保険料(税)が、新年度にさらに大幅値上げとなる試算が都から示され大問題となり、区長会、市長会、町村会がこぞって緊急要望した負担軽減予算は盛り込まれていません。コロナ禍で住まいの支援が切実に求められているのに、家賃補助はなく、都営住宅の新規建設は石原都政以来23年間ゼロを続けています。

大型開発は4割増
 「熾烈な国際競争に勝ち残るため」(小池知事)として、ベイエリアや築地市場跡などの不要不急な大型開発予算が4割も増やされました。
 また、陥没事故で工事の中止を求める声が強まる東京外環道や、住民合意もなく強引に推進する特定整備路線などの大型幹線道路の建設予算は、約1000億円にまで膨らんでいます。
 騒音や落下物の危険があるとして住民から強い反対のある羽田空港の新飛行ルートを固定化・拡大する羽田空港機能強化の調査費も予算に盛り込まれました。カジノを含むIR(統合型リゾート)の誘致検討予算は、9年連続計上されています。

運動で一部前進も
 一方、日本共産党都議団と都民の運動で前進した施策もあります。都議団が繰り返し求め、昨年12月にも条例提案した「18歳までの医療費助成」の23年度からの実施に向けた準備経費が計上されました。保健所の公衆衛生医師の確保のための予算も盛り込まれました。ジェンダー平等に向け、東京都同性パートナーシップ制度(仮称)の導入が予算化。気候危機対策として、省エネ・再エネ支援が前進しました。
 日本共産党都議団が求めてきた、性犯罪・性暴力被害者支援コーディネーターの支援は、ワンストップ支援センター強化につながるものです。性教育関連では、思春期の子どもたちの性の悩みに応える「東京ユースヘルスケア推進事業」などが盛り込まれました。また、男性の育児休暇取得支援が計上されています。
 気候変動対策を中心に、環境局予算が前年度比で2倍以上に増額されました。省エネ性能の高い住宅普及を目的にした東京ゼロエミ住宅導入促進事業は、予算が4倍以上に増額。既存住宅の省エネ・再エネを支援する断熱・太陽光住宅普及拡大事業247億円が新規に計上されました。都営住宅をはじめ281施設の都有施設に、太陽光発電設備の設置が予算化されました。
 中小企業支援では、営業を守るための制度融資が拡充され、伴走型の商店街支援や就農準備支援事業が新規に盛り込まれました。生産緑地買取・活用支援の予算は、ほぼ倍増されています。
 バリアフリー化へ視覚障害者の転落事故が相次ぐ駅ホームへのホームドア設置促進に向け、72駅への補助を実施。来年度設置完了に向け都営浅草線の整備を促進します。
(2面に都議団談話と表)

医療費助成18歳までに
共産党都議団の提案実る

 東京都は1月28日、23年度から子ども医療費助成の対象を、現在の中学生までから18歳までに拡大する方針を明らかにしました。新年度予算案には、そのための準備としてシステム改修費7億円が盛り込まれました。日本共産党都議団が議会質疑や条例提案で繰り返し求めてきたものが実現します。関係者からは歓迎の声があがっています。
 都は現在、未就学児は医療費の自己負担額の半額、小中学生は自己負担額から外来一回あたり200円を引いた額の半額を助成(取得制限あり)。残る自己負担額の半額は、区市町村が助成しています。23区などでは自己負担分200円や所得制限で対象外となった世帯も独自に対象に加え、23区などでは無料化し、所得制限も撤廃して実施しています。
 3区2市7町村では18歳まで助成対象を拡大しています。都は「23年度の助成開始に向け、制度の具体的内容を区市町村と協議する」としています。
 日本共産党都議団は2010年以降、予算要望や都議会の質疑で18歳までの医療費無料化を繰り返し要求。18年6月と21年12月の都議会には、18歳までの無料化条例案(所得制限なし)を提出しましたが、自民党、都民ファーストの会、公明党、日本維新の会などが反対し、否決されていました。

正義ある政治、実現しよう
田村氏、山添氏 街頭でトークセッション

 日本共産党の田村智子、山添拓の両参院議員が1月30日、池袋駅西口(豊島区)で「正義ある政治」を求めるトークセッションを行いました。両氏の国会論戦を流す大きなスクリーンが、通行人の注目を集めました。
 両氏は新型コロナ感染症対策について対談。田村氏は「昨年12月に発熱外来への財政支援を参議院本会議で質問したが、驚いたことに病院でのPCR検査、抗体検査などの診療報酬が大きく削られた」と発言。小泉政権の構造改革で社会保障の予算が抑えられてきたと説明し、「政府はコロナ危機でも反省がない。私たちは命の危険に直面している」と訴えました。
 山添氏は「感染検査が必要な人には無料で受けられるようにすると岸田首相も言った。少なくともそのような体制を十分に確保することが求められている」と指摘。「検査なしで陽性診断されるようになり、感染者は自宅療養。これは医療放棄で責任放棄だ」と声を強めました。
 同党が打ち出す「やさしく強い経済」に関連して、男女の賃金格差もテーマに。山添氏は女性活躍推進法における事業主行動計画の策定について、男女賃金格差の是正を目標とする企業は2万数千社の内わずか7社と紹介。1月に行われた日本共産党の代表質問に対し、岸田首相が男女賃金格差の開示ルールに前向きな答弁をしたとして「粘り強く国会で声を上げ、一歩一歩こじ開けていくのが私たちの国会論戦」と述べました。
 田村氏は賃金格差がつくられてきたのは政治の責任と強調。女性の非正規雇用が増えていることについて、「法律で規制すべき。働き方や収入が安定しなければ、経済が冷え込むのは当たり前」と語りました。

一分

 名探偵シャーロック・ホームズには、ワトソンの他にもう一人、欠かせない相棒がいます。推理ではホームズにいつも遅れをとるものの、地道な捜査で手腕を発揮する、スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)のレストレード警部です▼そのスコットランド・ヤードが1月25日、イギリスに新型コロナによる厳しい規制が敷かれていた当時、首相官邸で何度もパーティーが開かれていた疑惑の捜査を始めたことを明らかにしました。多くの人の集まりは禁止され、罰金を課された人たちもいたのに、パーティーには、首相自ら出席したこともあったといいます▼たとえ、政権中枢にかかわる問題でも、法律違反が疑われるならきちんと捜査する―それが民主主義の国の警察の役割でしょう。ひるがえって日本では、森友、加計、桜など、安倍元首相以来の政権私物化疑惑への首相周辺の関わりを、警察が自ら、積極的に解明する姿勢は見えません▼一連の事件では、公文書改ざんや政治資金規正法違反など違法性のある事実も明らかになっています。ホームズなら、さしずめワトソンにこう言うところでしょう。「これだけの事実が判明しているなら、残りが突き止められないなんて不思議なくらいさ」(『ギリシャ語通訳』より)

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