東京都港区で4月から、画期的な補聴器購入助成制度が発足します。助成額が13万7000円と、実施自治体のなかでは最高額となります。補聴器を長く、有効に使えるようにと、調整システムも「港区モデル」として組み込んでいます。(徳永慎二)
武井雅昭区長が1月31日、記者会見して発表しました。
助成の対象は60歳以上で、所得制限はなし。助成額の上限は13万7000円。住民税課税の人はその2分の1の6万8500円です。実施自治体では、最高額となります。
同区高齢者支援課課長の金田耕治郎さんは「難聴の方々へのヒアリングに基づいて、費用負担をできるだけ少なくし、補聴器を買ったあとも長く使い続けられるように制度設計しました」と話します。
使い続けるための支援では▶︎購入前に補聴器相談医(注1)を受診できるようにする、▶︎認定補聴器技能者(注2)による購入時の調整や購入後のアフターケアを受けられるようにする、ーなどを制度化しました。対象者の年齢は、自治体の多くが65歳以上ですが、60歳以上としました。「難聴になっても仕事を続けられるように、他自治体より早めにしました」と金田さん。
難聴の早期発見のために、「聞こえのチェックリスト」の活用なども盛り込んでいます。
「包括補助」活用
助成制度の予算額は、2272万4千円です。東京都の、自治体向け「包括補助」制度の活用を予定しています。
制度創設にあたっては、厚生労働省の研究補助事業(2020年度)の研究報告に依拠しました。前出の金田さんも、6人の委員の1人として参加しました。研究報告は「早期発見の仕組みの構築」「補聴器装用を継続するために難聴高齢者をフォローする」ことなどを提言しています。
党議員団が要求
「議員団(3人)として、機会あるごとに助成制度の導入を求めてきました」というのは、日本共産党の熊田ちづ子区議。本会議にとどまらず、委員会審議でも繰り返しとりあげました。
19年6月19日の本会議。風見利男区議は「全国で補聴器の補助制度が広がり、23区でも9区(当時)が実施している。港区でも早急に購入費用の助成を実施」するよう求めました。武井区長の答弁は「補聴器利用の実態把握に努める」でした。
同年9月の本会議では、福島宏子区議が購入費の助成とともに、区民健診に聴力検査の項目を設け、広く区民が聴力検診をうけられるよう、求めました。区側の助成制度についての答弁は「調査・研究していく」。同じく9月の決算特別委員会では、補聴器の調整・リハビリについてくわしく展開。「介護予防の観点でも早急な助成を」と強調しました。
20年、21年には熊田区議が委員会を含め、6回にわたってとりあげました。熊田区議は、東京都23区内で助成制度を導入した区が9、11、12、14と広がるたびに「他区に遅れることなく」と助成制度の実施を強く求めました。21年3月の予算特別委員会で早急な実施を迫ったのに対し、「調査・研究する」とあいかわらずの答弁に「一体いつになるのですか」と怒りをにじませました。同年9月、実施内容と時期をただしたのに対し、武井区長は初めて「来年4月から」と明言しました。
20年には、自民党区議も助成制度の実施を求め、同年3月17日には全会派一致で、補聴器購入に公的支援を求める国への意見書が採択されました。
熊田区議は「議員団として粘り強く助成制度を求めてきたかいがあって、全国的にも評価できる『港区モデル』がスタートすることになってうれしい。難聴者の実態をつかむためにも、引き続き広く区民を対象にした聴力検査の実施を求めていきたい」と話しています。
(注1)補聴器相談医 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が規定する講習を履修した、耳鼻咽喉科専門医のこと。難聴者のための補聴器の選択や補聴器医療を推進します。都道府県ごとの名簿が公表されています。
(注2)認定補聴器技能者 補聴器についての専門的な知識や技能を習得した人。公益財団法人テクノエイド協会が実施する養成課程の受講を修了し、認定試験に合格することが条件です。
(「しんぶん赤旗」2022年2月19日付より)