「憲法は権力者を縛ることで、人々が自由になるためのルールです」―日本共産党参院議員で、夏の参院選で改選を迎える山添拓さん(東京選挙区)が、憲法を分かりやすく伝える動画が、シリーズ累計で10万回を超える再生となっています。弁護士として「憲法が希望」をスローガンに掲げる山添さん。SNS(交流サイト)で韓国音楽のファンが、山添さんを呼んだ憲法カフェを開く動きも出るなど、さまざまな場で、憲法の価値を語り広げています。
韓国音楽ファンの企画も
動画は、「憲法ってなあに?」のタイトルで10本立て。2日に1本ほどのペースで、ツイッター(短文投稿サイト)とインスタグラム(画像投稿サイト)に公開しており、現在は5回目まで公開しています。気軽に見られるよう各回1分ほどの短さで、ツイッターだけでも各回2万~4万の再生数になっています。
1回目のテーマは「そもそも憲法って?」。山添さんが、「かつては法の支配ではなく、人の支配で、王様や殿様が重い税金や年貢を勝手にかけた」として、憲法という「権力者を縛るルール」ができた経緯を解説しています。
また、第三回の「基本的人権って?」の回では、「人権は空気のようなもの」と語り、「脅かされた時に、初めてその大事さがわかる」と紹介。「私たちが基本的人権を日々感じる、ということはないほうがいいですね」と、分かりやすく人権の持つ意味を語っています。
動画作成のきっかけは、環境アクティビストで、東京民報1月合併号で山添さんと対談した、eriさんとの懇談で「若い人たちに伝わる言葉で、憲法のそもそも論がわかる動画ができたら」という話が出たことでした。eriさんは著名なヴィンテージショップ(古着屋)を経営し、インスタグラムは8万人以上がフォローしています。
「推し議員」と反響
eriさんと協力して撮影した動画は、伝わりやすくする工夫が多く込められています。山添さんは普段着で、椅子や机ではなく、床に座って語り掛けます。堅苦しい雰囲気にせず、親しみやすくしようというものです。
eriさんは、インタビュアーで動画には登場しないものの、自身のインスタグラムで撮影を振り返り「(山添さんの)受け答えが惚れ惚れする。台本なぞなくて一発どりなんだけど、端的でわかりやすい説明の中に、ハッと目が醒めるような、短いけど温度の高い文句を織り交ぜてくる。こんな人が、国政に必要だ。山添さんという存在に感謝」と投稿しています。
参院選を前に、山添さんとともに憲法を語ろうという動きが、幅広い人たちから起きています。
その一つが、韓国のポピュラー音楽「K‐POP」のファンたちが、山添さんを「スペシャルゲスト」に、憲法について語ろうという企画です(17日午後8時~)。
主催するのは「ポリカペ Kポペンによる政治カフェ」。今年初めから、ツイッターのライブ機能「スペース」を使って、憲法や政治について語る企画などを開いており、ツイッターのアカウントで「『政治についてみんなで話そう』という目的のもとに集まったK―POPファンの有志」と説明しています。
「山添拓さんと憲法ゆるカフェ」と題した開催の告知を受け、メンバーなどから「ついに!」「山添議員は推し議員」「なんだかすごいことになってきた」などの反響が寄せられています。
山添さんを応援する市民勝手連のYAMA部も、参加者からの提案をきっかけに、山添さんとゲストによる「憲法カフェ」を、5月まで3回、ネット上で開いてきました。
危険な自民改憲案
夏の参院選では、自民党など改憲勢力が、衆院に続いて参院でも3分の2の議席を得ようとねらい、憲法が選挙戦の熱い焦点になっています。
14日には日本共産党都委員会のネット企画として「憲法と日本共産党を語る~徹底批判 自民党改憲案」が開かれ、山添さんと、しんぶん赤旗の中祖寅一政治部長が斉藤まりこ都議の司会で語り合いました。
2012年に自民党がまとめた改憲案について、中祖さんは「現在の憲法99条は、公務員などに憲法尊重の義務を定めているが、国民は入っていない。他方、自民党の改憲案は『すべての国民』に憲法尊重を求めている。(権力者を縛る)憲法が憲法でなくなる」と批判しました。
山添さんは憲法審査会での論戦を紹介し、「自民党は現在は改憲を4項目に絞ったとしているが、12年改憲案を撤回していない。最終的にはこの中身を狙っている」と強調。「憲法を全面的に生かした政治でこそ、私たちの願いを前に進めることができる」と訴えました。
都労委が「職場復帰」命令 ハンセン病資料館組合員「誠実に履行を」
国立ハンセン病資料館で国家公務員一般労働組合(国公一般)ハンセン病資料館分会の組合員2人が、職場から排除された問題で9日、東京都労働委員会は「職場に戻す」よう求める画期的命令を出しました。国公一般と同分会は10日、記者会見を開き「笹川保健財団は『救済命令』を誠実に履行すべきだ」と訴えました。
同資料館は東村山市にある国立療養所多磨全生園に隣接し、ハンセン病への理解と差別の解消を目的として、元患者の権利回復運動の歩みなどを展示し啓蒙する施設。入所者自身が運動資料などを展示してきた社会交流館が前身で、全生園の自治会や全国ハンセン病療養入所者協議会と親密な関係にあります。
今回、職場復帰を勝ち取ったのは、同資料館で最初の学芸員として貴重な資料や遺跡の保存活動などに長年携わってきた稲葉上道分会長と大久保菜央分会員。両者は2020年4月1日付での日本財団から笹川保健財団への委託替えに伴い、これまでに例のない採用試験で不採用とされ職場から排除されていました。
同分会は同資料館内でのハラスメントや労働基準法違反の横行の改善を求めて結成。当時、運営委託を担っていた日本財団に対して改善要求を行ってきました。しかし、日本財団は改善どころか組合員を防犯カメラで監視。侮蔑的な別称で監視記録を記すなど人権侵害を継続的に行い、日本財団と密接な関係にある笹川保健財団に委託が引き継がれてからも続きました。
一連の問題で国公一般と同分会は10日、委託元である厚生労働省に対し「命令を履行するように指導せよ」などと要請しています。
国公一般は「人権の砦でおきた人権侵害は直ちに是正し義務を果たすべきだ。両財団は命令に不服申し立てをすることなく、違法行為と人権侵害をやめるべき」と述べています。
民間委託のしわ寄せが
会見では弁護団の今泉義竜弁護士が、「命令は職場に戻せということと、陳謝せよという柱からなっている」と解説。ハラスメントについても認定されていると述べました。
また弁護団は「国立ないし公立施設での民間委託は、ダンピングをしないと入札で勝てない仕組みがある。その中で人件費が最大の経費なため、労働者へのしわ寄せありきの制度だ」と告発。併せて「受託企業が入れ替わるために、1年間の有期での不安定雇用が前提で、労使関係の悪化は構造上起こりうる」と指摘しました。
さらに「労働基本権を守らせるべき厚労省の直営で、人権侵害被害を発信する施設での二重に不当な労働行為が行われた。パワハラやセクハラをなくす省庁で横行していたとは恐るべきことだ」と強調しました。
稲葉分会長は支援者に感謝を述べ、亡くなった元患者ら資料館を作ってきた先人に「確実に戻って(療養所利用者の思う資料館のあるべき姿に向けて業務の)続きをやれと言うと思うので、『やります』と伝えたい」と命令履行に向けてたたかう決意を語りました。また、大久保分会員はこれまで2年の期間は長かったと前置きし、「多くの市民がこの問題をともに考えてくれ、署名を集めるなど協力してくれたことが後押しになった。元患者はかわいそうな人ではなく、たたかい続けた人たち。伝えるために、たたかい続ける」と語りました。
一分
「尋問は有害」―国を相手取った裁判の証人の候補の一人に、国側が投げかけた言葉としては、かなり異例のものでしょう。
10日に亡くなった作家の早乙女勝元さん。自身も生死の境をさまよった東京大空襲の体験を掘り起こそうと、証言を集め記録し続けました。
冒頭の言葉は、空襲被害者への国の謝罪と補償を求めた訴訟で、早乙女さんを証人とすることに、国側が反対した時の言葉です。早乙女さんが明らかにしてきた被害の実相がいかに裁判の行方に力を持つか、国の恐れがよく現れています。
ユダヤ人ホロコーストの犠牲となったアンネ、ピカソが描いたゲルニカの無差別爆撃、ベトナム戦争下の子どもたち、米軍機墜落の犠牲になった家族…。ここでは挙げきれないほど多くの、戦争の犠牲者たち、平和を伝えるテーマを、その著書に残しました。
東京民報の2020年のインタビューでは、コロナ禍をめぐって「世界中で戦争を止めて、軍事費を人類の安全な生活のためにまわすべきです。その音頭取りをすることこそ、大空襲や原爆を経験した日本の役割」として、「私も、自分の戦争の体験を可能な限り語り続けていきます」と語っていた早乙女さん。多くの人たちに、戦争を語り継ぐバトンを手渡した、90年の人生です。