北区赤羽西の住民ら97人が原告となり、国と東京都を相手に特定整備路線補助86号線赤羽西の事業認可取り消しを求める行政裁判で、東京地裁(春名茂裁判長)は5月30日、原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。原告団は判決内容に到底納得できないとして、控訴に向けて動き出しています。
特定整備路線補助86号線赤羽西は、北区赤羽西1~5丁目を延べ1150㍍にわたって東西に貫く都市計画道路。都は防災性の向上や道路交通の円滑化を名目に事業費約213億円をかけて整備を進めようとしていますが、道路予定地は木密地域ではないため不燃化の必要性は低く、道路の交通量も年々減少傾向にあります。
隣接する涵養地に道路整備が計画されている赤羽自然観察公園(赤羽西5)の湧水や地下水への影響、軟弱地盤による地盤沈下の危険性、高低差の多い地形、稲付城址(赤羽西1)のトンネル掘削による歴史的価値の消失など、原告は数多くの問題点を法廷で主張してきました。昨年12月17日に開かれた第11回口頭弁論では、軟弱地盤に擁壁を建設する問題で、原告が求めた地盤工学の専門家の証人尋問が急きょ不採用となったことで原告の怒りがつのり、弁護団も「審理不尽の違法」と指摘しています。
結論ありきで根拠なき判断
閉廷後の報告集会で、弁護団の舩尾遼弁護士が判決内容の概要を説明。判決は国や都の主張を唯々諾々と認定して請求を棄却する「不当判決」と批判。赤羽自然観察公園の湧水については「湧水が枯れる可能性は高いとまでは認められない」という根拠のない判決が下されており、「我々の主張を意図的に判断していないところがある。非常に中身のない判決」と憤りました。
久保木太一弁護士は、原告側の証人尋問や陳述書、提出した証拠に対しての言及が判決文にないとして、「行政側に寄った、結論ありきの判決」と述べ、「今後、判決を覆すべくたたかっていく」と力を込めました。
日本共産党のさがらとしこ、ながいともこの両北区議会議員は、補助86号線の整備工事に関連して昨年度に都の建設局が実施した地下水調査で、地下水位への影響が判明したとする資料を配布。さがら氏は「これを見て驚いた。今までの調査では不足があり、都は再度調査するという。今後さらに地形の高低差、地盤の問題が大きな課題となるのではないか」と発言しました。
原告の柳井真知子氏は、「さらに科学的な証拠を出し、後半戦をたたかっていく」と決意を述べました。
地下水の調査について都の建設局は東京民報の取材に、公園内の2カ所で今年5月からボーリング調査に着手しており、来年3月まで調査が続くと答えています。