介護施設の人員配置基準引き下げ 都内特養の7割が反対

都内特養 サービスの質“維持できず”

 岸田政権が、社会保障費の削減・抑制を狙って推進しようとしている介護施設の人員配置基準の引き下げについて、東京都内の特別養護老人ホーム(特養)の7割が反対していることが13日までに、都社会福祉協議会の高齢者福祉施設協議会(高齢協)の調査で分かりました。

岸田政権は次期介護保険制度の改定に向けて、介護ロボットや見守りセンサーといったICT(情報通信技術)機器の活用などで、国が定める人員配置基準を、現行の「3対1」(入所者3人に対して職員1人)から「4対1」に引き下げる検討を進めています。調査は今年3~4月、同協議会会員の特養512施設を対象に実施し、371施設から回答を得ました。

調査によると、回答施設の平均人員配置は「2・01対1」で、国基準の「3対1」より手厚い人員配置でケア(介護・看護)にあたっていました。その理由(複数回答)を聞いたところ、「3対1」では「介護サービスの質を維持できない」(85・7%)がトップ。次いで「シフト(勤務)が組めない」(81・4%)、「有給休暇の取得ができない」(80・3%)の順でした。

ICT機器を活用した場合に、国基準の「3対1」でも、現在と同じ水準のケアを提供できるかを聞いたところ、92%が「不可能」と回答。「不可能」とした理由(複数回答)は、「ICT機器などは職員の現状の負担軽減や業務省力はできても人の代わりにはならない」(85・2%)が最多。「ナースコールが同時になった場合駆け付けられない」(70・4%)、「職員1人にかかる負担が増大する」(69・5%)と続きました。

この結果について高齢協は「『3対1』でも成し得ない状況下で、ICT機器が人員配置基準緩和の条件にはならないことを裏付けている」としています。

岸田政権が狙う人員配置基準の引き下げについては、68%が「反対」と回答。「賛成」はわずか6%でした。

「反対」の理由(複数回答)としては、6割以上が「介護人材不足を配置人員削減で補うことに限界がある」(64・4%)、「利用者の安全の確保が困難になる」(63・6%)と答えました。

高齢協は「実際の現場では、既に国が定める基準では良質なサービス提供できない」と考えており、「特に認知症の周辺症状への対応や重度化への対応など入所者の安心・安全な生活を守るには人員配置を手厚くする必要がある」と指摘しています。

(2022年8月14日日付「しんぶん赤旗」より)

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