元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(22)は、訓練中に受けた自身への性暴力について実名で告発をしています。8月31日、五ノ井さんはインターネットを通じて集めた「第三者機関による公正な調査の実施を求める署名」10万5296人分を防衛省に提出しました。日本共産党からは宮本徹、本村伸子両衆院議員が同席。立憲民主党、社民党、れいわ新選組の国会議員も参加し、「超党派で支援する」と語りました。
「誰かが変えないと」
署名を携えた要請行動には木村次郎防衛政務官が対応し、五ノ井さんから直接署名を受け取りました。また併せて自衛隊関係者146人から寄せられたハラスメント経験に関するアンケート結果も提出。五ノ井さんは「第三者委員会を立ち上げて、厳正に再調査をして処分や謝罪をして欲しい。安心して勤務できる環境をつくってもらいたい」と訴えました。
提出後、五ノ井さんは記者会見に臨み、「孤独なたたかい、先が見えない状況だった」と切り出し、「多くの人に協力をいただき感謝します。(10万人以上の署名は)色々な人の思いがこもった署名です」と述べました。
要望の柱となる「第三者機関の設置」について木村政務官は「意見は受け止める」というだけだったといいます。またこの件の報告書の提出を求めたところ、「何らかの形で出す」と述べたものの、調査の時期やスケジュールなど具体的な内容には一切の言及がなかったと同席した国会議員が明らかにしました。
宮本議員は「過去にも自衛隊はいじめ自殺問題なども起こしていて何も変わっていない。この問題は人権侵害だ。防衛省の中で起きた人権侵害がなくなるように、しっかりと連携しながら取り組んでいきたい」と語りました。
日常的なセクハラ 調査を求める
五ノ井さんは陸上自衛官であった2021年の6月、8月に複数の自衛官から性暴力を受けました。自衛隊の警務隊に被害届を提出したものの検察は「ほかの人は誰も見ていない」として、証拠不十分で不起訴処分にしており、現在は検察審査会に不服を申し立てている最中です。併せて自衛隊に、日常的な女性隊員に対するセクシャルハラスメント(セクハラ)などについて再調査を求めています。
8月の事件が明るみになる中で、相談に乗ってくれていた人が証言をしなかったなどの事態があり、「口裏合わせで隠ぺいしたのでは」との疑念が生まれています。五ノ井さんは「あったことをなかったことにされたのが一番、世の中に訴えていこうという考えになった理由」として「私が所属していた時に先輩の女性隊員も同じようにセクハラを受けていたので、どこかで誰かがこの問題を変えないと変わらない問題だと思っている。何としてでも変えていきたいという思いです」と再発防止にも言及しています。
退官をしてからでないと訴えを受けてもらえない組織の体質にも問題があるとの批判の声もインターネットなどで上がっています。
自衛隊内の性暴力一掃こそ
宮本徹衆院議員の話
短期間で10万人をこえる方が署名をし、こうした人権侵害は許されないという輪が大きく広がっています。
自衛隊内では、セクハラ、パワハラ、いじめ、暴力が多く起きており、事実の隠蔽も繰り返されてきました。今回の問題でも口裏合わせがおきています。
五ノ井さんの署名提出を受けて、防衛監察本部の検事らが五ノ井さんの被害の調査にあたること、防衛省が自衛隊内のすべての組織を対象に、ハラスメントの実態を調べる特別防衛監察を行うことを決めました。
五ノ井さんの被害について、公正な調査にもとづくすみやかな処分と謝罪と同時に、あらゆる暴力・ハラスメントを一掃し、自衛隊の体質を変えなければなりません。