憲法生かした外交努力こそ 敵基地攻撃・軍事費2倍化 山添政策副委員長が批判

NHK日曜討論

日本共産党の山添拓政策副委員長は16日、NHK「日曜討論」に出演し、岸田政権が狙う「敵基地攻撃能力」保有や軍事費の2倍化などを厳しく批判しました。自民党の小野寺五典元防衛相をはじめ公明、維新、国民などの各党の出演者が軍事力強化を主張する中で、山添氏は憲法を生かした外交努力が必要だと強調しました。

ロシアによるウクライナ侵略などで厳しくなる国際環境への対応について、小野寺氏が「しっかりした能力(軍事力)を持つことが抑止力につながる」などと発言しました。山添氏は、ロシアの侵略や北朝鮮のミサイル発射、中国の覇権主義を批判した上で、「絶対に戦争を起こさせない。それが政治の役割だ。軍事に軍事で対抗すれば緊張を高め、悪循環に陥ってしまう。軍事的挑発を抑えるために外交努力をいかに強めるかが重要だ」と強調しました。

「敵基地攻撃能力」の保有について各党からは「能力を持たざるを得ない」(小野寺氏)、「保有に賛成」(日本維新の会の青柳仁士衆院議員)、「他国の基地を攻撃することは憲法上認められている」(国民民主党の前原誠司代表代行)などの発言が続きました。立憲民主党の玄葉光一郎衆院議員も党の態度は決まっていないとしつつ、「真の抑止力たりうる『反撃能力』(敵基地攻撃能力)は排除しない」と述べました。

山添氏は、政府が「指揮統制機能」まで攻撃できると説明していることを指摘し、「新たな反撃を呼び、全面戦争につながりかねない」「専守防衛を逸脱することは明らかだ」と述べました。さらに、安保法制=戦争法の集団的自衛権の行使とセットで使われる危険性を指摘。「日本が攻撃されていないのに、アメリカが戦争をはじめると自衛隊と米軍が一体となって敵基地攻撃能力で相手の国に攻め込む。結果、日本が戦争に巻き込まれていく」と強調しました。

山添氏は、軍事費2倍化について、「暮らしと経済を圧迫するのは明らかだ。しかも何に使うのか、財源をどうするかは、これからで、増やすことだけ決めるのはあまりに乱暴だ」と批判しました。

また、小野寺氏や前原氏などが「継戦能力」(戦争を続ける能力)の強化を主張したのに対し、「戦争をどうやって続けるのかという話ばかりで、どうすれば戦争を防げるのか、その視点がない」「まともな外交力なく軍事一辺倒に頼ることがよほど危険だ」と語りました。

山添氏は「政府がいま進めようとしている軍事力の強化は、地域の緊張を高め、戦争の危険を呼び込み、暮らしも圧迫しかねない。東アジアに平和な環境をつくるために、例えば、わが党はASEAN(東南アジア諸国連合)をお手本にして、対話と協力の地域をつくっていく外交ビジョンを掲げてきました。憲法9条を生かした徹底的な外交努力こそ必要」と主張しました。

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(発言詳報)

 日本共産党の山添拓政策副委員長は16日のNHK「日曜討論」で、政府が年末の安保関連3文書改定の中で狙う「反撃能力」=敵基地攻撃能力の保有や軍事費の国内総生産(GDP)比2%への増額などについて各党政策責任者と議論しました。

日本周辺の安全保障環境について山添氏は、ロシアによるウクライナ4州の併合や、北朝鮮によるミサイル発射、中国による東・南シナ海への覇権主義的行動は「許されるものではない」と強く非難しました。143カ国の圧倒的多数で採択された、ロシアによるウクライナ4州併合の撤回やロシア軍の即時撤退を求める国連決議(12日)で、対話や交渉など「平和的手段による平和的解決」を求めたのは重要だと指摘。「戦争を起こさせないのが政治の役割であり、軍事に軍事で対抗すれば緊張を高め、悪循環に陥る。軍事的な挑発を抑える外交努力をいかに強めるかが重要だ」と語りました。

敵基地攻撃能力―全面戦争に道、専守防衛を逸脱

敵基地攻撃能力の保有について山添氏は、総理官邸や防衛省本省にあたる「指揮統制機能」まで攻撃対象としていると指摘し、「もし攻撃すれば新たな反撃を呼び、全面戦争につながりかねない。専守防衛を逸脱することは明らかで保有は認められない」と批判。同能力が集団的自衛権とセットで行使された場合は、「日本が攻撃されていないのに米国が始めた戦争に、米軍と自衛隊が一体で攻め込み、日本は戦争に巻き込まれる。相手国にとってはまぎれもない先制攻撃だ」と強調しました。

一方、自民党の小野寺五典元防衛相・自民党安全保障調査会長は「対話で話がつくならウクライナ戦争は始まっていない。力が背景にない外交交渉は、ただの言葉の絵空事だ。経済力や軍事力を持つからこそ、外交での発言に力を持つ」と述べ、軍事力一辺倒の姿勢を示しました。日本維新の会の青柳仁士衆院議員も「『反撃能力』は抑止力のため。相手をどう怖がらせるかを考える必要がある」と述べ、原子力潜水艦導入を主張しました。

「継戦能力」―外交努力なしに軍事一辺倒か

弾薬や弾薬庫の確保などによる「継戦能力」(戦闘を継続する能力)が論点に。各党から「継戦は徹底的に大事だ。武器弾薬の備蓄や国内でつくれる環境を持たないと、たたかい続けられない」(小野寺氏)、「3文書改定で継戦能力を議論すべきだ」(国民民主党の前原誠司代表代行)などの発言が相次ぎました。

これに対し山添氏は「継戦能力は戦争を長く続けることが前提だ。長く続ければ自衛隊員や民間人で命を落とす人が増えることになり、その道に進んではいけない。戦争をどう続けるかという話ばかりで、戦争をどう防ぐのかという視点がない」と反論しました。

また、「対話で話がつくならウクライナ戦争は始まってない」との小野寺氏の発言について、「そうであれば、2014年のロシアによるクリミア併合後に安倍晋三元首相がプーチン大統領と蜜月関係を築き、『同じ夢を見ている』とまで言った。そういう外交の反省はないのか」と批判。小野寺氏は「外交を強めるためにも力を強めるのが大事」と繰り返し、安倍外交の失敗について反論できませんでした。山添氏は「まともな外交努力なく軍事一辺倒に頼るほうが危険だ」と強調しました。

軍事費増額―暮らしを圧迫、敵基地攻撃能力を先取り

軍事費のGDP(国内総生産)比2%(10~11兆円規模)への増額について、「賛成の立場」(青柳氏)「一定程度の増額をだめだと言ってるわけではない」(立憲民主党の玄葉光一郎衆院議員)などの発言が続きました。

山添氏は、約5・4兆円の文教科学予算を軍事費に上乗せするほどの規模だと指摘し、「暮らしと経済を圧迫することは明らかだ。用途や財源をこれから決め、増やすことだけ決めるのは乱暴だ」と批判。来年度の防衛省予算で敵基地攻撃に転用できる長距離ミサイル1000発以上の保有も検討しているとの報道に触れ、「これから議論するはずの敵基地攻撃能力を先取りする予算だ」と語りました。

小野寺氏は、軍事関係の研究開発費が少ないと述べ、「日本も昔、戦闘機を開発した技術者が戦後、新幹線の技術にいった。それで日本の成長を支えた。安全保障の研究は日本の産業の新しい種となる」と軍事研究予算の拡充を主張しました。

また、軍事費倍増の財源について各党は「一過性ではないので、安定した形で税収を考える必要がある」(小野寺氏)、「恒久的な財源を確保すべき」(公明党の佐藤茂樹衆院議員)、「当面は国債でいいが、安定財源を考えるべきだ」(前原氏)、「法人税を引き上げて経済成長がとまれば予算は減る。成長に資する税制を考えるべき」(青柳氏)などと発言しました。

山添氏は、国債発行による軍事費確保について「財政法で赤字国債を禁止した理由は国債を大量に発行して、侵略戦争につながった反省からであり、やめるべきだ」と強調しました。

最後に山添氏は「今日の議論を振り返っても外交に関する話はほとんど出てこない。東アジアに平和な環境をつくるために、わが党はASEAN(東南アジア諸国連合)を手本に、対話と協力の地域をつくっていく外交ビジョンを掲げている。憲法9条を生かした外交努力こそ必要だ」と主張しました。

(しんぶん赤旗2022年10月17日付より)

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