東京外かく環状道路(東京外環)の地下トンネル工事で、調布市東つつじが丘に地表陥没と巨大地下空洞を相次ぎ生じさせた事故から2年が経過しました。日本共産党の田村智子参院議員と同党都議団らは13日に現地を視察。事業者である国土交通省とNEXCO東日本から聞き取りを行うとともに、被害住民の声に耳を傾けました。
(菅原恵子)
田村氏聞き取りに事業者
NEXCO東日本ら事業者は7、8日両日に地盤補修(地盤改良)工事の実施に向けての説明だとして、参加者を限定したオープンハウス(説明会)を実施。年内には移転済家屋の解体・除却を開始し、来春に地盤改良にも着工するとして工法などについて説明を行っています。
NEXCO東日本は田村氏らに対し、今回の地盤改良工事では地表から地中深部までバルブを差し込み、液状セメントを噴射する「高圧噴射攪拌工法」を用いて、幅16㍍延長220㍍ほどの地中壁を作るとして、設備と資材運搬ルートなどについて説明しました。
計画はセメント液剤の製造や、排出した泥土を積載するプラントヤードを幹線道路沿いの住宅密集地に設置。プラントヤードから地盤改良工事現場までは、道路下に埋設したり入間川の上に渡すように設置した管路と中継ヤードを通じて運搬するというものです。
計画ルート上には車の通行がひっきりなしの甲州街道(国道20号線)や、京王本線の線路とそれに伴う鉄道設備などが存在します。事業者は東京民報の質問に対し「京王電鉄との調整は、現時点ではしていない」と明言しました。
通常、鉄道事業者は自社の駅上ビル建設工事でも、鉄道線路上や地下への道路築造工事においても、万が一の事故で運行に支障を生じさせてはならないとして鉄道運行時間を避けた深夜(午前1時から3時位まで)しか工事を行いません。しかし、NEXCO東日本は「本工事は管路敷設も含めて、午前8時から午後5時までしか行わない」と住民に説明済みであり、実現できない可能性があります。
運転士「沈下で脱線の可能性」
京王電鉄の現役運転士は東京民報の取材に対し、「当該地域は地上から10~15㍍の高さの築堤の上を、時速100㌔㍍ほどの高速で通過する地点だ」として、「例えば地盤が数㌢㍍沈下したらレールが歪み脱線の可能性がある」と指摘します。さらに「乗車率が一番高い時では3000人もが乗車しています。万が一、脱線すれば築堤から真下の民家に向けて、多くの人を乗せた巨大な鉄の塊が数十㍍落下する転覆事故が発生する可能性が否めず、取り返しのつかない事態になり、被害は計り知れない」と警鐘を鳴らします。
また、「つつじが丘駅付近には4本の線路があり、いざという時に退避可能なようにポイントがある。工事中に信号ケーブルへの接触などが起きれば信号不良による運行阻害が生じ、折り返し運転さえもできなくなる」と懸念。
「良識的に考えれば人命を第一に経済的損失なども含めてリスクを十分に検討し、運行確保のために安全な手法を担保したいと対応するのは鉄道として当然だと考えます。それを相談も調整もなく公表することは、工事ありきで人命・安全を軽視して進めているようで、地表陥没事故などすべてに通ずるのではないか」と強調します。
事故が起きたなら都営新宿線など相互乗り入れ路線が増加する中で、他社も含めて影響が限りなく発生する可能性もあります。
工事ありきの姿勢を改めよ
田村氏らに対し、NEXCO東日本は「他の高速道路でも施工経験がある」と語りましたが、同席した住民は「そのような発言をするのはおごりです。おごりがあるから住民を軽視する」と憤ります。
国交省の肝いりでNEXCOら事業者が「地上に何ら影響を与えない」と強引に工事を推進してきた東京外環道は、地域住民に多大な不安と損失を与えただけでなく、新たに地上の道路や鉄道にも影響を与える可能性が指摘されています。それでもトンネル工事ありきの地盤改良を急ぎ、住民被害連絡会との話し合いを拒み続けるNEXCO東日本は、「人の心はあるのですか」と訴えた被害住民の声を受け止めさせるような議会論戦が待たれます。