日野市の違法なごみ搬入路を巡って大坪冬彦市長個人に2億5000万円の賠償を市に求めよとする判決が確定した問題で、同市議会は10月14~28日に臨時会を開きました。大坪市長は自らの責任を認めて市民に陳謝し、住民訴訟原告団と結んだ合意を誠実に実行すると表明。賠償請求権の放棄と1年分の給与相当分を減額する議案を提出しました。議会もこの問題で行政のチェック機能が果たせなかった反省に立ち、原告団との合意を尊重し、信頼回復に取り組む緊急決議とともに、賠償請求権を放棄する議案を全会一致で可決しました。市政転換の契機ともなる画期的な成果を切り開いた背景には、6年以上に及ぶ住民運動がありました。 (長沢宏幸)
ごみ搬入路 違法の賠償確定で
画期開いた住民運動
大坪市長は市議会の9月定例会最終日(9月28日)、「裁判の趣旨、法の趣旨を重く受け止め、都市計画と異なる施設を設置した。その違法性の解消に取り組むため、市民参加で(略)話し合う場を持ちたい」と表明。その後、原告側との3回の協議を経て10月9日、公園外へのごみ搬入路の設置に向け、あらゆる方策を市民参加、住民合意のもとに検討を進めるなど、住民側も画期的と評価する合意書を交わしました(要旨2面)。臨時会は、その合意を踏まえて開かれたものでした。
合意内容の最大のポイントは、確定判決に示唆された都市計画変更によるごみ搬入路の違法性の解消という手法ではなく、「公園外へのごみ搬入路設置に向け(略)住民参加と住民合意のもとに検討を進める」ことが明記されたことです。
大坪市長は今年3月議会で「最高裁で判決が確定すれば、都市計画変更の手続きを行って、違法状態を解消する」とのべていました。これに対し、原告、同弁護団は都市計画変更による違法の解消を行わないよう働きかけ、市民参加、住民合意で課題を解決する道を選択するよう市長に申し入れていました。
議会も臨時会で「市議会としても責任を重く受け止めなければならない」とする緊急決議を議決。「市とともに議会も市民からの信頼回復や原告団との合意を尊重し、多くの市民が納得できる違法性の解消に向けた取り組みを監視していく」「今回の事案を契機とした更なる議会のチェック機能の向上が求められる」と表明しました。
市民との約束は 都市計画公園
「ごみ搬入路」は、日野、小金井、国分寺3市が共同で建設した焼却場へのごみを搬入するための道路で、都市計画で決定した北川原公園予定地(同市石田)の敷地の中に違法に設置されました。
そもそも同公園は1979年、都流域下水道施設の選定を受けるに伴い、都市計画決定されたもの。いわゆる迷惑施設の設置によって「同じ市民の間に、加害・被害の格差をつくらないために、東部地域に豊かな対策と感謝をもってのぞむ」(森田喜美男市長=当時=)という周辺住民に対する市の約束でもありました。
しかし、多くの住民の反対や市議会で違法との指摘があったにもかかわらず、ごみ搬入路計画は強行され、市議会の多数が賛成してきました。
住民は2016年に「公園内の道路整備は違法だ」として市を提訴。「ごみ搬入路裁判に勝訴し、行政の違法を正す市民の会」を結成し、運動を展開。一、二審とも住民側の主張が認められ、大坪市長個人に市が道路工事に支出した、2億5000万円を賠償させるよう市に求める判決が出されました。9月にこの判決が最高裁の上告受理申立ての不受理決定で確定しました。
「住民の願いに応えた合意」
住民訴訟原告団 中谷好幸共同代表の話
私たちの裁判の目的は都市計画決定を守って、市が約束した公園整備を進めてほしい。そのために公園の外にごみ搬入路を造ってほしいというものです。歴史的な経過を見れば、ごみ焼却場を造ることを理由に、公園面積を縮小し、しかも公園とは相容れない、ごみ搬入路を造るなど許されないことでした。
合意文書は、私たち住民の願いに正面から応えるもので、市民参加、住民合意、住民自治の力で課題を解決するという精神が貫かれています。判決の限界を大きく乗り越える画期的なもので、住民運動が切り開いた重要な成果です。議会の議決も、住民合意を尊重する、チェック機能を強化するとした点で画期的です。
市長との合意によって生まれた市政転換の条件を生かして、誰もが誇りをもって住み続けたいと思える街づくりを次世代に継承していくために、市長と市議会、市民の共同をつくる契機としたい。
吉良氏山添氏国会論戦めぐりトーク
統一協会「解散請求すぐに」
吉良よし子、山添拓両日本共産党参院議員による「JCP TALK『国会報告』」が10月30日、新宿駅東南口前で開かれました。2人の国会論戦を中心に、質疑の様子をデジタルビジョンで上映しながら、最新の国会の情勢と政治を変える展望を語り合いました。
吉良さんは、「臨時国会がようやく始まり、論戦の中で政治が動いています」とあいさつ。給食費の無償化へ、今国会での共産党の論戦も紹介しながら、「全力で取り組みたい」と語りました。
統一協会をめぐる山添さんの質問を動画で紹介。山添さんは「岸田首相は政府が放置してきたと答弁した。解散請求にすぐに踏み出すべきだ」と強調しました。配信をユーチューブで視聴できます。
弱者の狙い撃ち許さない
日比谷野音 インボイス抗議の大集会
来年10月の導入まで1年を切ったインボイス(適格請求書)制度の中止を求め、反対の声を可視化することを目的にした大規模な集会「♯私がSTOPインボイスの声をあげる理由」が10月26日、日比谷公園大音楽堂(千代田区)で行われました。
主催は市民グループ「インボイス制度を考えるフリーランスの会」。集会は、同会が実施したクラウドファンディングに多くの支援が寄せられたことで実現。会場には1200人(主催者発表)が参加し、オンラインによる同時配信は最大1000人超が視聴しました。
主催者を代表して、発起人でライターの小泉なつみ氏があいさつ。インボイス制度に対する抗議の声を財務省に届けるネット署名が、前日に10万人分集まったことを報告。インボイス制度は「税率を変えない消費税の増税。弱い人に負担を押し付ける制度」と強調し、「フリーランスや小規模事業者といった、団体や組織に属していない、弱く、ネットワークのない人たちを狙い撃ちにしていることが許せない」と力を込めました。
国会議員による発言では、日本共産党、立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、社民党の代表が登壇。共産党からは田村貴昭、宮本徹の両衆院議員、山添拓参院議員がマイクを握りました。
リレートークでは、経済評論家やラッパー、アニメーター、スタンダップコメディアンなど、多彩なゲストがスピーチ。
政策コンサルタントの室伏謙一氏は「インボイスとカタカナにすることで中身が分かりづらく、危険性が理解しにくい。気づくと被害者になっているのでは」と危惧。経済ジャーナリストの荻原博子氏は「財務省が公表している21年度の国民負担率(所得に占める税金や社会保険料の負担割合)は48%」と強調し、江戸時代に日本中で一揆が起きた年貢の割合「五公五民」と同じであることを指摘しました。
アニメプロデューサーの植田益朗氏は、「世界に誇るコンテンツのアニメを守りこそすれ、潰していくようなインボイス制度は絶対止めなければいけない」と訴え。アニメスタジオ「トリガー」代表取締役社長の大塚雅彦氏は、「大げさかもしれないが、アニメーションがなくなるかもしれない」と危機感を語り、声優でVOICTION共同代表の甲斐田裕子、咲野俊介の両氏は、「声優が芽を出すまで10年はかかる。今を一生懸命生きている若い声優が声を上げるのは難しい」と述べ、「声を上げれば変わると信じて、一緒にがんばろう」と呼びかけました。
協力団体より、全国商工団体連合会の中山眞常任理事、東京土建一般労働組合の熊切健二書記次長、インボイス制度の中止を求める税理士の会の呼びかけ人で元静岡大学教授の湖東京至氏が発言しました。
岸田首相が10月28日、物価高騰に対する総合経済対策を発表しました。総額は29兆円まで積み上げたものの、電気代やガソリン代などへの部分的な対応が並ぶのみ。抜本的な賃上げへの対策や、消費税減税といった、根本的な政策には手付かずのままです▼その一方で政府からは、家計を冷え込ませるような話ばかりが聞こえてきます。75歳からの医療費負担は2倍化が導入されたばかり。検討中の介護保険制度見直しは、保険料の負担年齢を引き下げるとともに、要介護1、2の人も保険給付から外すなど、「史上最悪」とも評されるものです。そのうえ、消費税を10%からさらに増税しようという思惑まで。まさに、国民の消費にアクセルとブレーキを同時に踏み込むような対応です▼経済政策の混乱で有名になったのが、イギリスです。トラス前首相が掲げたのは、富裕層や企業向けの減税策。金持ちが潤えば、庶民にいずれお金が回るという古めかしいトリクルダウン政策のうえに、財源もあいまいで、イギリスの国債が大きく下落する事態を招きました▼新首相となって、わずか40日余りだったトラス氏は辞任に追い込まれました。ちぐはぐな経済政策が何をもたらすかは、岸田首相にとっても大事な「他山の石」のはずです。