東京電力福島第一原発事故で被災し、国や東京電力に対して責任の明確化と損害賠償などを求めている全国の原告らによって結成された原発被害者訴訟原告団全国連絡会は11月24日、国の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)で議論が行われている賠償基準「中間指針」の見直しなどについて、衆参両国会議員に要請しました。
要請書では、①原発事故被害者による集団訴訟への支援②トリチウム汚染水の海洋放出に反対すること③原発の新設、運転期間の撤廃に反対すること④原賠審が策定した中間指針等の見直しに際して、すべての原発事故被害者が被害の実情に見合った十分な救済が受けられる基準の設定―を求めています。
要請後の集会で、「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟弁護団の馬奈木厳太郎弁護士は、賠償基準を見直す動きが出てきたことについて、「遅きに失する」と批判。自主的避難等対象区域やその外側の見直しについては「極めて期待が薄い」として、「被害者間に新たな分断が持ち込まれるようなことがあってはならない」と強調しました。
来年は、各地の後続訴訟が次々に判決を迎える予定。今年6月17日に「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)、千葉訴訟、群馬訴訟、愛媛訴訟の4訴訟に下された、国の責任を認めないという最高裁判決を「くつがえす強い思いでのぞみたい」と、馬奈木氏は述べました。
スリーマイル島やチェルノブイリなど、原発事故にまつわる現場を多数取材してきたジャーナリストの金平茂紀氏が、オンラインで参加。「原発は自由を奪う。生活を奪う。未来を奪う」と強調。6月17日の最高裁判決を「後世に残るひどい判決」と厳しく批判し、岸田文雄政権が方針を打ち出している原発再稼働や新増設、原発の稼働期間撤廃、汚染水の海洋放出のほか、原発事故と甲状腺がん多発の因果関係や疫学的な関係すらも全否定しようとする国の論理に、「胸がつぶれるような思い」と語りました。
国の方針は惨事便乗型
福島原発告訴団団長で原発事故被害者団体連絡会代表の武藤類子氏が、福島県三春町からオンラインを通じて発言。「復興の掛け声の裏に多くの問題を抱えている」として、福島県の災害関連死は今年3月末時点で2333人、自死者119人、仮設や災害復興住宅での孤独死は150人以上にのぼると報告。国は莫大な予算を投じて復興加速化措置を策定するものの、避難者支援団体への補助金が大幅に削られるなど、「被害者が望む復興との大きな乖離を感じる」と訴え。原発再稼働や新増設などについて、「惨事便乗型資本主義」と憤りました。
各地の原告団による発言で、「元の生活を返せ・原発被害いわき市民訴訟」の原告は、11月9日に福島地裁いわき支部で開かれた避難者訴訟第4陣の裁判で、東京電力は国に責任がないとする最高裁判決を答弁書に取り出し、「東京電力にも責任はないと主張した。まったくの驚き」と報告。いわき市から都内に避難している福島原発被害東京訴訟の鴨下裕也原告団長は、都から住宅の追い出し訴訟を起こされていることを告発。「原発被害者が行政から訴えられるという異常な事態だ」と述べました。
原発賠償関西訴訟原告団代表の森松明希子氏は、「私たち区域外の避難者は、存在そのものを消しゴムで消されているような思い。原発がひとたび事故を起こしたら、ばら撒かれるのは放射能。汚染水を海洋に放出して再びばら撒くなど、被害者は認めていない」と力を込めました。
集会には、日本共産党、立憲民主党、社民党、れいわ新選組、無所属の国会議員が現地参加やメッセージで連帯を表明。日本共産党からは吉良よし子、紙智子、いわぶち友、仁比そうへいの各参院議員が発言しました。