北区十条地区の住民ら60人が控訴人となり、国と東京都に対して都市計画道路・特定整備路線補助73号線の事業認可取り消しを求める控訴審で、東京高裁(渡部勇次裁判長)は16日、原判決は相当であると判断し、控訴人の訴えを棄却する判決を言い渡しました。控訴人は判決を不服として、最高裁に上告する構えです。
都が防災性の向上などを口実に整備を進めている特定整備路線の補助73号線は、北区上十条2丁目から十条仲原2丁目に延長約890㍍(幅員20~30㍍)の道路を新設する計画。十条地区は補助73号線の整備とともに、「まちづくり」と称してJR埼京線十条駅西口地区の市街地再開発事業と、補助85号線の拡幅事業が進行中。これらにより、約600軒、2100人の住民が立ち退きを迫られており、街並みが様変わりしつつあります。
二審の争点は、▽都市計画の違法性の判断基準は事業認可時(2015年)とすべき▽都市計画の違法性の判断枠組みについて、都は社会経済情勢に関する調査や費用対効果の分析などが不十分▽事業区間の不燃領域率は2012年6月時点で平均47・6%に達しており、延焼遮断帯としての補助73号線の必要性は乏しい▽人口の将来的減少が予想され、交通量も当然、減少に転じる▽事業施行期間において、いまだに用地取得率が低く、非現実的。さらに、事業予定地内にある家政大学付近、2400平方㍍強の国有地を民間の不動産会社に売却して住宅地にした行動は不合理である―など、控訴人は法廷で主張してきました。
生活奪う人権問題
閉廷後の報告集会で、控訴代理人の木本茂樹弁護士が判決内容について説明。「一審の判決からほとんど変わっていない」と前置きし、「控訴審で主張したことについて、ほぼ判断されていないのが実態。およそ納得できる内容にはなっていない」と批判しました。
また、道路建設が莫大な費用に見合うだけの効果があるのかという原告の訴えに対する判示がないこと、事業予定地内の国有地を民間に売却して住宅地にした不合理な行動に関する部分に触れていないことを指摘。木本弁護士は「手抜き判決と思うのが正直なところ」と述べました。
控訴人からは、「私たちの人権や財産権が軽く見られている」「裁判の中で我々の思いがくみ取ってもらえていないことを痛切に感じた」など、判決に対する意見が飛び交いました。
大谷恭子弁護士は、「道路をつくることで単に家だけでなく、生活する権利が奪われる人権侵害の事案であり、憲法問題」と強調。「困難なたたかいになると思うが、最後のとりでの最高裁に訴え、最後までやり抜いてほしい」と力を込めました。
控訴人副代表の小林清二氏は、「(暴走する)行政に対して訴えを起こすことは、一種のブレーキ役を社会的に果たしていると思う。裁判の勝ち負け以上に意味がある」と発言。控訴人代表の岩波建光氏は、「勝負はこれから。最高裁でどのような結果になっても、どんと構えて元気に楽しくたたかいましょう」と、前向きに語りました。