「生活保護を利用する人たちの『学びたい、働きたい』という思いを応援するのは政治の役割」と語るのは、日本共産党の東京都中野区議、浦野さとみさんです。同区は昨年10月、5年間で生活保護のケースワーカー(CW)の18人増員を決定。党区議団をはじめ、支援団体や行政職員が連携して、制度の改善・拡充の一歩前進を勝ち取りました。(小林圭子)
「生活保護の利用者に対し一番親身になるべきCWが、そうできていない現状がある。利用者は困った時にどうしたらいいか分からず、声を上げることもできない」と浦野議員は語ります。
自身のSNSや区政報告でたびたび生活保護問題を発信。多くの人が相談を寄せます。
進学のため
同区で生活保護を利用する50代の女性は、自立に向け大学進学(通信制)を決めました。学資ローンを借りようと相談すると、CWは断りました。「資格を取っても就労に結びつかない可能性がある」。女性は「制度では自立の助長を目的としているため、『これはおかしい』という確信があった」と、浦野議員に相談しました。
浦野議員は、担当部署と何度も話し合い、区議会で生活保護の就労支援の在り方について取り上げました。制度上、自立への目的がはっきりしている場合、借金は問題ないことが明らかに。女性は社会福祉協議会(社協)から貸付を受けることができました。
浦野議員はまた、中学3年の子を持つ生活保護世帯の親から「吹奏楽部が有名な高校から入学のお誘いの話が来ているが、部活動費が高く、どうしたらよいか」との相談を受けました。
この世帯を担当するCWからは社協へ相談するよう指示され、社協ではCWに相談をと、たらい回しにされ途方にくれるなか浦野議員につながりました。
「支援団体や専門家の協力を得て、どうすれば入学を実現できるかを模索し、めどが立った。本来はCWがする仕事だと思う」と浦野議員。
職員に変化
中野区では前区長のもと、区職員を3000人から2000人に削減。その一環としてケースワーク業務を実質、外部委託してきました。「CWは事務作業に追われ、担当世帯への訪問や支援ができていない」状況だといいます。
区議会で外部委託の問題を追及し、職員の増員を訴え続ける党議員の活動に、職員にも変化が生まれています。
「現場でも職員の増員を願っている。現場の皆さんも『生活保護行政をもっとよくしていこう』という気持ちが高まっている」
中野区は昨年、都では初の「生活保護の申請は国民の権利です」と訴えるポスターを作成。担当部署の職員がデザインし、区独自のポスターが完成しました。
浦野議員は「困窮者の声を議会で取り上げ、実態を可視化させていくのは私たちの責任」と語ります。
「体や心の状況、その人が何をしたいのかをていねいに聞いて、自立を支援するのが、本来のCWの在り方です。職員育成や人員を増やすなど公の役割を果たさせることが必要です」
(しんぶん赤旗1月17日付より)