東京都は1月27日、2023年度当初予算案を発表しました。一般会計の総額は8兆410億円で、22年度より2400億円(3・1%)上回り、初めて8兆円を超え過去最大となりました。「企業収益の持ち直し」による法人2税の前年度比15・4%増などによる過去最高の都税収入(前年度比5702億円、10.1%増)が反映しました。子ども・子育て支援の重要な前進はあったものの、予算案全体としては、コロナ禍や異常な物価高にあえぐ都民を、大きな財政力を生かして本気で支援するものにはなっていません。都は予算案を2月15日開会の都議会第1回定例会に提出し、審議されます。
23年度予算案は、一般会計、特別会計・公営企業会計を合わせた総額は16兆821億円で、22年度より6882億円(4・5%)増で過去最大。スウェーデンの国家予算を超え、オーストリアの国家予算(23年度約16兆3000億円)と同規模となります。
小池百合子知事は定例記者会見で、「世界から人と投資を呼び込む。そして都市間競争を勝ち抜いていくということが課題となっている」と強調。予算案の柱の一つ「世界から選ばれる金融・経済・文化都市」には、約1兆円を投じます。
この中には国際金融都市の実現・外国企業誘致の推進に49億円、「世界共通の都市課題を乗り越えるための多彩なアイディア、テクノロジーなどを東京から世界に発信する」という意味不明の「スシテック東京」事業に54億円、デジタル化を民間企業と一体になって進めるための新団体「ガブテック東京」の設立に22億円を盛り込みました。
新たな五輪基金
東京五輪を巡る談合・汚職事件が大きな問題になっており、全容解明が都の最優先課題ですが、こうした課題には後ろ向きです。その一方、新年度予算案には、東京五輪準備基金などを統合して、五輪レガシーを後世に伝えるとの目的で、新たな基金1485億円を計上しました。
臨海選手村跡地(中央区晴海)を、大会レガシーとなるまちづくりとして発信するイベント準備に21億円も計上しました。選手村の跡地を巡っては、都がデベロッパーに基準地価の9割引で売却したことが問題となり、住民訴訟が起きています。
また、IRカジノの調査費用を10年連続で予算化。多くの住民に犠牲を強いる外環道をはじめとした大型道路建設の予算は、1000億円を超えています。
英スピ新年度も
多くの受験生や保護者、専門家が反対し、公平性・公正性が保てないとの批判の声が広がっている英語スピーキングテストの都立高校受験に活用する問題。都はそうした声には耳を傾けず、都立高校受験に活用する予算を計上。さらに中学1・2年生にもアチーブメントテスト(学習効果の判定テスト)を実施する予算が盛り込まれました。
コロナ盛り込まず
福祉分野をみると、高齢者福祉の予算は減額されました。負担増が続く介護保険や高齢者医療、大幅値上げが見込まれる国民健康保険料(税)の都としての新たな負担軽減策はありません。障害者への現金給付の福祉手当の額は27年間、1円も上がっていません。
第8波のまっただ中で、連日多数の死者が出ているのに、新型コロナウイルス対策の予算は、基本的に組まれておらず、補正予算で対応するとしています。
子育て支援で前進 運動と論戦実る
新年度予算案には、ゼロ歳から18歳まで一人あたり月5000円を給付(所得制限なし)する「018サポート」事業に、1261億円が盛り込まれました。共産党都議団が暮らしを支える現金給付の実施・拡充や、子どもにかかわる施策の所得制限の撤廃を粘り強く求めてきたことが実ったもので、重要な前進と言えます。
都内の合計特殊出生率(21年)は1・08で全国最低で、30年をピークに人口減少に転じるとの予想です。都は「産まれてから切れ目のない支援が必要」だとし、子どもを産むことをちゅうちょする理由の一つにあがる子育てにかかる多額の費用の軽減策として新規に実施します。対象は約200万人で、給付開始は来年1月からを予定します(23年度分は一括給付)。
これまで中学生までだった医療費助成は、高校生などに拡充されます。約23万人が対象。所得制限(扶養親族3人の場合、年収概ね960万円未満)や通院1件当たり200円の負担があります。3年間は都が10割負担しますが、その後は区市町村が2分の1負担とする方針で、財政力が弱い市町村から、都の10割負担の継続が求められています。
第二子以降保育料無償に
これまで第三子以降だった保育料の無償化を第二子以降に拡充します(今年10月から)。都立大学、都立高等専門学校の授業料は世帯年収910万円未満を対象に24年度から無償化します。私立中学校授業料は、同世帯を対象に年額10万円を支援します。対象は約3万6000人。
不登校・ひきこもり、子どもが家族を介護するヤングケアラーの支援、教員不足対策の拡充、多摩地域の児童相談所の増設も盛り込まれました。また、これまで区市町村による公費負担が概ね1回だった妊婦の超音波検査を、都独自事業として公費負担を4回まで拡充します。