多摩地域の水道水に使われる井戸水から、発がん性などが指摘される有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が広範にみつかっている問題で、住民による自主的な血液検査の、国分寺市での87人分の分析結果がまとまりました。4種類のPFASを合計した濃度で、アメリカで示された基準で「特別の注意」を促している血中濃度に達している人が、検査対象者の85%に及ぶことが分かりました。血液検査を実施する市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」が1月30日に会見で明らかにしたもの。分析を担当した専門家は、「国が他地域で行った調査と比べて明らかに高い。行政は汚染源の調査と対策に取り組むべきだ」と強調しました。 (荒金哲)
「行政が汚染源の特定を」
国分寺市の東恋ヶ窪の浄水所では都の検査で最大で、1㍑あたり153?㌘のPFASを検出するなどして取水が停止されています。同じく市内にある国分寺北町の浄水所でも、過去に最高で260?㌘/㍑を検出しています。高濃度の汚染が明らかになっている浄水所からの水を長年、飲んできた国分寺市民にどんな影響が出ているか、注目されていました。
今回、まとまったのは、昨年11月に国分寺市内の検査会場で採血した87人の結果。対象となったのは21歳から91歳まで、平均年齢は66・8歳でした。女性が53人で男性は34人。市内在住に限定していないため、国分寺市民が65人のほか、小平市民11人など計7市の在住です。
検査では多くの種類があるPFASのうち、13種類を測定しており、今回はPFOS、PFOA、PFHxS、PFNAという主要な4種類について血液中の濃度をまとめました。
4種類の合計値で最大だった人は、1㍉㍑あたり124・5?㌘、87人の平均値は38・8?㌘でした。環境省が2021年に全国3カ所で採血して調査した結果と比べると、PFOSで約4倍、PFOAで約3倍となっています。
分析した原田浩二京都大学准教授は「年齢などの影響を考えたとしても、環境省の調査に比べて、国分寺市の参加者の結果は明らかに高い」と指摘。「汚染源を特定するために、市民ができることは限界がある。都など行政が、各地の土壌のボーリング調査など、取り組みを強化すべきだ」と話しました。
PFASの血中濃度が健康にどう影響するか、各国で研究が進んでいます。アメリカの科学工学医学アカデミーは、7種類のPFASの合計値で20?㌘/㍉㍑を超える場合には、医師に特別の注意を勧めています。
この基準でみると、4種類のPFASの合計でアメリカの基準を超えた人は、85・1%にのぼりました(表)。
血液検査に当初からかかわる小泉昭夫京大名誉教授は会見で、「私たちは、健康への影響の研究が進んでいるPFOSとPFOAの合計値に、とりわけ注目している」と指摘しました。その二つの合計で見ても、アメリカの基準値を超えた人は、41・4%に達しました。
会見には、国分寺で採血を受けた市民も出席しました。いずれも血液から高い濃度のPFASが検出されており、「国分寺の地下水はおいしいと誇りに思ってきた。未来の子どもたちのために対策をきちんとしてほしい」「武蔵野の大地を汚してしまったのは、誰なのか、根源にさかのぼって調べてほしい」などと訴えました。
会の共同代表の高橋美枝子さんは会見で、米軍の横田基地内で、PFASを含んだ泡消火剤で消火訓練が繰り返されてきたことや、横田基地の井戸水からも高濃度の汚染が見つかっていることを紹介。「横田基地の土壌がPFASで汚染されていることは、はっきりしている。都は、基地周辺の井戸水の検査などに、もっと真剣に取り組んでほしい」と強調しました。