「中学校でも小学校と同じ温かい給食が食べたい」ー。東京都東久留米市で市民が取り組んだアンケートには子どもや保護者から切実な声が寄せられています。(東京都・山岸学)
都内自治体で小学校と同じ温かい全員給食を実施しているのは23区全てと多摩26市中20市で、3市が実施にむけて準備中です。
一方で東久留米、東村山、国分寺の3市の中学校給食は持参の弁当とスクールランチの併用になっています。
■ 冷めた副食
スクールランチは小学校給食と異なり、調理業者が調理・盛り付けしたランチボックスを事前に予約する形式の給食で、予約した人だけが食べられます。中身は、主食(ごはんなど)と副食(おかず類)、牛乳。主食は保温して提供されますが、副食は食中毒防止のため冷まして盛り付けしたものを冷たいまま提供します。
東久留米市では、小学校と同じく温かい全員給食の実現をもとめて保護者ら市民有志が声を上げてきました。2021年に発足した「温かい中学校給食の実現をめざす会」は請願を市議会に送るとともに、22年に市内の中学生や保護者などからアンケートを集めました。429人から回答があり、中学生が88人、卒業生が20人、保護者が124人などでした。
■ 提供は権利
アンケートでは89%の人が「小学校同様に全員制の暖かい給食がいい」と回答。子どもからは「親は忙しいので、本当はまずいので食べたくないが仕方なく食べている。お弁当を作ってとは言えない」「スクールランチは残す人が多い。頼み忘れた人は食べるものがなくて座っているだけ。小学校の給食が美味しかったので、中学校に入って残念な気持ちになる」など切実な声が上がりました。
保護者からも「義務教育のうちは温かい、栄養バランスの良いものを食べさせてあげたい」「スクールランチを食べるならコンビニでおにぎりを買った方がいいというので毎日お弁当を作っている」などの声がありました。
アンケートに取り組んだ同会の鈴木清子さんは「アンケートを集めていると複数の子どもが集まってきて『意見を聞いてほしい』という強い思いを聞いた。行政は当事者の声を聞くべきだ。格差是正のためにも子どもの人権として保障すべきだ」と話しました。
別の保護者は「仕事、家事、育児に忙殺される中、注文を忘れていないか不安になる。昼食を注文しないと食事が提供されないという状況は保護者にとっても余計な不安要素だ。公立の義務教育で全員に給食を提供することは当然なのではないか」と話しました。
市は市民の請願に対し「導入にあたっては市民および議会からの要望などを踏まえた上で、さまざまな調査・検討を経て実施している」と回答し、本誌の取材にスクールランチ併用形式の変更は考えていないと回答しました。しかし、スクールランチの喫食率は当初の7割台から5割台に低下し、市が保護者の声を聞く場をする学校給食運営協議会は20年度から1回しか開かれていません。
市議会で自民党、公明党ら与党は市民の声に耳を貸さず、市民が提出した中学生や保護者らの意見を給食改善に向けた検討へ反映するよう求める請願を日本共産党と無所属議員の賛成、自公ら与党の反対多数で不採択にしました。
共産党市議団は、市民とともに小学校と同じ全員給食の実施を求めて論戦を重ねてきました。村山順次郎市議は「鴨志田芳美市議とともに貧困対策と食育の両面から全員給食の実現を市に迫ってきた。今後も小学校と同じ全員給食実現へ市民と力を合わせる」と語りました。
(しんぶん赤旗2023年2月25日付より)