日本共産党の山添拓議員は6日の参院予算委員会で、「ミサイル防衛」と敵基地攻撃が一体となった「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」の運用について、米軍が日本を含む同盟国のあらゆる情報や射撃システムまで一つに統合し、先制攻撃を含む敵基地攻撃を一体で行う危険を明らかにしました。(質問詳報3面)
山添氏は、米軍が2018年に公表した「IAMD構想2028」で「“あらゆるセンサー、シューター”を活用できるネットワーク構造」として、警戒情報(センサー)だけでなく、相手に対する実際の射撃システム(シューター)まですべて、米国を中心とした同盟国間で共有するシステムを提案していると指摘。さらに、政府の安保3文書の一つである「国家防衛戦略」では、IAMDについて「ネットワークを通じて各種センサー・シューターを一元的かつ最適に運用できる体制を確立」していると明記(図)しており、「政府は日米のIAMDは全く別物と言うが、言葉までうり二つだ」と強調しました。
さらに今年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同声明で、日本の敵基地攻撃能力の「効果的な運用」に向けた日米間の協力深化を確認したことに言及し、「IAMDで日米のセンサーやミサイルを統合し、米軍主導で運用を進めていくものではないか」とただしました。
浜田靖一防衛相は、「日米が連携することは重要」と認めつつ、「それぞれの指揮系統に従って行動する」などと強弁しました。
これに対して山添氏は、バイデン米政権が昨年10月に公表した「ミサイル防衛の見直し(MDR)」で同盟国に対し、米国との相互運用が可能となるよう自国のIAMDシステムへの投資を奨励していることを指摘。さらに、「IAMD構想2028」は、米国でさえ、単独でIAMD構想の実行は不可能だとしていることをあげ、「日本が独自にシステムを構築するなど荒唐無稽だ」と批判しました。
日本共産党の山添拓議員は6日の参院予算委員会で、政府が安保3文書で保有を決めた敵基地攻撃能力(反撃能力)の違憲性や日米一体で運用される危険性を正面からただしました。
アジア全域射程ミサイル運用は政府次第
山添氏「集団的自衛権行使での『必要最小限度』とは?」
歴代政府は、憲法9条2項で禁じられる戦力とは「自衛のための必要最小限度の実力を超えるもの」だとし、1970年には中曽根康弘防衛庁長官が「他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止されている」と答弁していました。ところが今回、安保3文書で政府が導入を決めたスタンド・オフ・ミサイルは、射程が1000~3000キロに及び、沖縄を起点とした場合アジア全域が含まれます。(図)
山添氏は「これらはまさしく『他国の領域に対して直接脅威を与える』、憲法9条2項で保持が禁止される戦力そのものではないか」と指摘。岸田文雄首相が同予算委で、「問題はどう運用するか」だと答弁したことを挙げ、「権力者次第で『運用』はいかようにも変わり得る」と批判しました。
その上で、山添氏は、首相が言う運用のルールは、2015年の安保法制=戦争法で集団的自衛権を認めた「武力行使の3要件」だと指摘。第3要件の「必要最小限度の実力行使」について、「集団的自衛権の場合の必要最小限度」の意味をただしました。
首相は、安倍晋三首相(当時)が「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し」と答弁したことを追認。「米国防衛」であることを事実上認めた上で、「個別具体的な状況に即して客観的、合理的に判断すべきものだ」と述べるのみでした。山添氏は「何の歯止めもないと言っているに等しい」と批判。首相が外相だった15年に「敵を撃破するように大規模な空爆や砲撃を加えたり、敵地に攻め入るような行為に参加することはない」と答弁していたことを挙げ、「武力行使のありようも変わり、大規模な空爆や砲撃、敵地に攻め入るような行為に参加することもあり得るということか」と迫りました。
首相は「大規模に敵地に攻め込むようなことは考えていない」と答弁しました。山添氏は、当時は、「敵基地攻撃能力を保持していないから敵基地攻撃は想定していない」というのが政府答弁だったと指摘。敵基地攻撃能力を保有するのに「なぜ使わないと言い切れるのか」「全く歯止めになっていない」と重ねて主張しました。
「統合防空ミサイル防衛」日米一体で運用
山添氏「先制攻撃含む構想への自衛隊組み込み許されない」
山添氏は、米軍が敵基地攻撃とミサイル防衛を一体で運用するために進めている「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)について、「安保3文書にも明記され、日米一体で進めようというものだ」と指摘しました。
しかし首相は、米国と日本のIAMDは「全く別物」と強弁しています。これに対し山添氏は、18年に米軍が発表した「IAMD構想2028」と安保3文書で、IAMDについての文言がうり二つだと指摘。昨年10月にバイデン米政権が公表した「ミサイル防衛の見直し」(MDR)で「米国のパートナーは、米国と同盟国のシステムが相互運用可能となるよう、自国のIAMDシステムに投資するよう奨励されるべきだ」と記されていると紹介しました。
山添氏は、米国が単独でIAMD能力を高めるのは「不可能」とした米空軍の資料も示し「米軍から情報共有を含めた相互運用可能な指揮統制システムとすることを求められていく」と追及。政府が米国から購入する長距離巡航ミサイル・トマホークは、事前に入力したレーダー地図と電波高度計で得た情報を照合しながら目標に向かうことを示し「自衛隊は事前入力できるレーダー地図などの情報を持っているのか」とただしました。
浜田靖一防衛相は「情報収集も含めて作戦のさまざまな場面において日米が協力していくことは当然」などと答弁。山添氏は、トマホークに入力するようなデータを日本は持っていないと述べ「当然、米軍の情報に依存することになる。そのシステムに統合され、事実上、米軍の指揮下で一体的に運用される。(米軍のIAMDは)先制攻撃を含むシステムだ。こんな構想に自衛隊を組み込むなど許されない」と主張しました。
米国製兵器購入で日本6年連続トップ3
山添氏「軍需産業利益のための大軍拡などあってはならぬ」
米国から武器を購入する国別の契約高ランキングで、日本が6年連続(2016~21年)でトップ3入りし、大量の兵器を米国から購入していたことが山添氏の追及で明らかになりました。
米国はミサイルなど自国製の武器輸出を、有償軍事援助(FMS)とよばれる武器輸出制度を中心として行っています。FMSは米国が価格や納期、契約解除まで一方的に決定できるものです。
山添氏は、ここ数年の「米国製兵器・役務」購入額トップ3をリストアップした資料(図)を示し、「日本が常に“表彰台”入りだ。なぜか」と追及。浜田防衛相は「費用抑制に努めている。米国からのいわゆる爆買いとの指摘には当たらない」などと答えました。
山添氏は米国の軍需産業の代表者らが2月、下院の公聴会で「防衛産業基盤に対する十分な資金提供を行うことは最も重要なステップだ」と発言したことを紹介。こうした要求を背景にトランプ前政権は同盟国に軍事費増を求めてきたと指摘しました。日本の“表彰台”入りは「米政府と軍需産業の求めに際限なく応じてきたからではないか」と強調しました。
岸田首相は、「必要な装備品を適正な価格で調達できるよう努力してきた。この数字はその結果だ」などと強弁。山添氏は「世界でも異常な米国兵器の爆買いだ」「軍需産業の利益のために、異次元の大軍拡に突き進むなどあってはならない」と訴えました。
(しんぶん赤旗2023年3月7日付より)