「バスケしていた中学生寝たきりに」
「40代 倦怠感で崩れ落ち息苦しさも」
「人生が大きく変わってしまった」「ある日突然何もできなくなり、絶望した」―。日本共産党の吉良よし子参院議員事務所が実施した新型コロナウイルス後遺症についてのアンケートには、苦しむ当事者の声がびっしりと寄せられました。吉良氏は、当事者の声をもとに国会で三つの要求を提起し、実施を迫りました。(柴田菜央)
アンケートは、コロナ後遺症患者とその家族を対象にインターネット上で行われ、2月17~28日に1,172件もの回答が寄せられました。
コロナ後遺症で特につらかった症状として最も多かった回答は「疲労感、倦怠(けんたい)感」の77.4%で、思考力が低下する「ブレインフォグ」「咳(せき)、息切れなど」はそれぞれ4割を超えました。(グラフ①)
アンケートの自由記述欄には、日常生活もままならない疲労感、倦怠感の実態が生々しくつづられています。
バスケットボールをやる元気な中学生も後遺症に苦しみ、ほぼ寝たきりになったといいます。「きついヘルメットで締め付けられているような頭痛、羽毛布団でもガーゼケットでも重たいと感じる倦怠感」を訴えます。
10代の学生は、文章が絵のようにしか感じられず、記憶力の欠如が見られるとも。「座っていることもできず学校にも行けない」と苦しみを語ります。
さらに、コロナ罹患(りかん)から半年~1年後に突然ひどくなるケースも。40代の人はコロナ自体は軽症だったものの、療養明け1カ月ほどから急激に体調が悪化。「歩いているうちに、倦怠感で崩れ落ちそうになり倒れてしまったり、全速力で走ったかのような息苦しさに包まれる」とつづりました。
生活を奪われた
深刻なのは、実生活への影響です。後遺症患者の8割以上は、20~50代の現役世代。日常生活に「影響があった」との回答のうち、「休業、休職」は69.2%に達し、「退職、失業」は29.8%でした。
「ひとり親で自分が働かなければ生活が成り立たない」という40代の人は、「子どもが就学期のためこれからお金がかかってくるというタイミングで休職を余儀なくされ、生活がままならず貯金を切り崩すしかない」。
30代の人は「休職から復帰するにあたり、後遺症について勤務先の認識、理解が不十分、勤務や業務内容の相談もしてもらえず精神的にも病んでしまい退職になってしまった」といいます。
10代以下の子どもの後遺症も101件に上りました。この年代に特化した後遺症の日常生活への影響は、「休学」が最多の79.1%で、「進学断念」が25.3%となっています。
10代の学生は「通っていた学校に戻りたくても、1年しか休学することができず、退学するしかない」と、別の学生も「1年以上まともに学校に行けず、このままでは学力低下や1年後に迎える高校受験で進学先があるのか不安しかない」とそれぞれ訴えます。
学校生活が奪われるだけでなく、保護者の負担、家計への圧迫も増し、当事者家族は生活苦へと追いやられています。
10代の学生の親は「自動車での送迎が必須となり負担も増す」と語ります。別の親は「(子どもは)中学校へ行けず学力が落ちている。私は、仕事を休む日も増え給料も減っている。来年度は受験生なので、調子のいい日は学校への送迎もしなければならず。休職か退職をしなければならない」といいます。
要求突き付ける
こうした声を受けて、吉良氏は国会でコロナ後遺症について繰り返し追及。当事者の要求を三つにまとめて政府に突き付けました。
一つ目は、コロナ後遺症への理解を広げることです。
吉良氏は、深刻な後遺症の存在が「風邪やインフルエンザと決定的に違う点だ」と強調。後遺症の発症や重症化を防ぐには、コロナ罹患後2カ月程度の回復期に無理をしないことが重要だとの臨床現場の知見を示し、職場や学校に配慮の必要性を周知するよう求めました。
二つ目は、後遺症で苦しむ人を適切な医療につなげることです。
アンケートでは、後遺症で「受診できて治療につながった」人はわずか21.7%でした。
吉良氏は、コロナ後遺症で受診できる病院を明らかにするよう要求。加藤勝信厚生労働相は、吉良氏が求めた医療機関のリストづくりと中身の精査の必要性を否定しませんでした。
また吉良氏は、「最新の知見をアップデートして医療現場と国民に周知すべきだ」と迫りました。
三つ目は、経済的な支援を行うことです。
アンケートでは、コロナ後遺症で支援が受けられなかったとの回答は63.4%に上りました。(グラフ②)
吉良氏は、労災は職場でのコロナ感染でないと使えず、傷病手当は個人事業主や学生は対象外で支給も1年半で打ち切られてしまうとして、支援の拡充を要求。「コロナ後遺症に特化した救済制度、支援制度も検討すべきだ」と迫りました。
質問を見て感動
「国会中継を見たことはなかったが、偶然コロナ後遺症について力強く発言されている中継を見て感動した」「質問が進むたびに、心と体にエネルギーが湧いてくるのを感じた」「私たち患者の訴えを代弁していただき、本当にありがとうございました」―。吉良氏には、コロナ後遺症当事者から大きな反響が寄せられました。
政府の無策に改めて怒り吉良議員の話
コロナ第8波の真っただ中、1月の決算委員会で岸田文雄首相は、コロナ後遺症患者の総数すら把握していませんでした。これに対して「総数を把握して」「対策してほしい」との声が次々と寄せられ、政府が動かないのであればこちらで実態を把握しなければと、アンケートに踏み切りました。
10日間あまりで1,172人もの回答があり、それだけ後遺症の当事者が“誰にも相談できない“”放置されている“”何とかしてほしい“との思いを抱えてきたのだと痛感しました。「コロナ後遺症を理解してほしい」「治療につながらない」「収入がなくなり貯金を崩している」―悲鳴のような声の数々を前に、政府の無策に改めて怒りを覚えました。絶対にこの声を国会で取り上げ、対策を迫らなければと思いました。
国会質疑で「絶望しなくていいと言えるように」と岸田首相に迫っても、答えがありませんでした。一方で、回復期に無理をしないことを周知する必要性や入試での柔軟な対応などを認める政府答弁もありました。これは確実に当事者の声が動かした成果です。
経済的支援の拡充など、前に進んでいないことは山ほどあります。引き続きこの声を届けていきたい。
アンケート全文
アンケート結果の全文は吉良よし子ホームページで公表されています。https://kirayoshiko.com/news/1024
(「しんぶん赤旗」4月14日付より)