神宮外苑
約3000本もの樹木を伐採する神宮外苑再開発問題で、学生団体のAmamoの楠本夏花代表(19)は4月26日、都庁で記者会見し、神宮外苑の自然環境の価値は「284億円超」とする調査結果を発表しました。「(この数字は)都民の意思であり、事業者は重く受け止めてほしい」と訴えました。
調査は4月4日から2週間、インターネットで実施し、偏りがないようランダムに15歳以上の都民3000人を抽出し、分析しました。調査に必要な経費約55万円は、インターネットで寄付を募りました。
調査は「仮想市場評価法」を用いて、神宮外苑の再開発で樹木を伐採せず、自然環境を保全した形で再開発ができる案に変更できると仮定して、上限1万5000円で、いくらまでなら寄付できるかを尋ねました。
調査の結果、回答者の寄付額の平均値は3872円。この額に都の全約735万世帯を掛けた金額約284億7624万円が、神宮外苑の環境価値と算出しました。環境経済学を専門とする東北大学の明日香壽川教授らの助言を得ました。
楠本さんは、事業者も都も神宮外苑の自然環境の価値を無視していると強調。市場でただ同然に扱われてきた環境価値を経済的に評価し、数字として可視化したと説明。「目先の経済効果や利益だけでなく、それによって犠牲にされる環境価値も可視化して評価する手法を、日本の都市開発でも積極的に取り入れて、計画の是非を議論してほしい」と語りました。
また同調査では、再開発計画の認知について質問。「知らなかった」人は45%にのぼり、計画を説明した上で賛否を問うと、賛成の倍に当たる32%が反対と回答しました(グラフ)。
楠本さんは都民への十分な説明もなく、「自然環境の価値をほとんど無視して計画を強行することに、ストップをかけるために調査を行った」と説明。再開発の見直しを求めるオンライン署名は約3万3000人に上っていることも紹介しました。
楠本さんはローマ在住の伯母淳子さんとともに昨年2月、神宮外苑の樹木伐採に反対する署名活動を開始。今年2月に東京に残された緑を守るために学生団体「Amamo」を立ち上げ、樹木伐採や自然環境の破壊を伴わない神宮外苑の再開発を求めて活動を進めています。
再開発は三井不動産などの事業者が、樹齢100年を含む多数の樹木を伐採し、神宮球場と秩父宮ラグビー場の敷地を交換して建て替え、超高層ビルなどを建設します。
日本イコモス事業者に反論
神宮外苑の再開発問題で日本イコモス国内委員会が、開発を行う事業者作成の環境影響評価(アセスメント)の評価書を巡って、「数多くの誤りと虚偽がある」と指摘したのを受け、東京都環境影響評価審議会総会が4月27日、開かれました。出席した事業者は「誤りはない」と反論しました。イコモス側は総会に出席して、資料を提出して説明させるよう都に求めていましたが認められませんでした。
総会後に会見した日本イコモスの石川幹子理事は、事業者側の対応について「イコモスの質問に対し『全て虚偽や誤りはない』という結論だった。話し合いに応じないなどの社会的責務に関する回答はゼロだった」と指摘。その上で、事業者側の回答の誤りについて、科学的調査に基づかない虚偽や誤りがあるとする箇所を個別に指摘し、「速やかに間違いを認め、評価書を正しいものにしてほしい」と訴えました。
審議会への出席について「イコモスは論争を挑んでいるわけではない。ちゃんとした学術調査を望んでいる。条例に基づいて意見を述べる場所を与えてほしい」と強調。5月18日に予定される次回会合に向けて「日本イコモスは現地に足を運んで詳細に調査をして、よりよい100年後の計画になることに望みをつないで、要望書を出している。市民の声、私たちの要望を受け入れて審議会に同席させてほしい」と重ねて訴えました。