「棄却理由は?」「こんなの裁判所の仕事じゃない」―開廷後わずか10秒足らずで言い渡された棄却の判決に、法廷内には怒号が響きました。北区赤羽西の住民らが原告となり、国と東京都を相手に特定整備路線補助86号線赤羽西の事業認可取り消しを求める行政裁判で、東京高裁は11日、原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。
判決文では、都市計画法上の都市計画決定は決定権者である都に委ねられており、事業認可者である国が認可後に内容の適否を審査・判断することは予定されておらず、そのような権限もないとしています。事業認可について争えないことを司法が判断したことになり、地裁より後退した判決です。
判決後の集会で、原告弁護団の舩尾遼弁護士は「決定権者に不当に広い裁量を認める解釈で、いつ争えばいいのかという内容だ」と憤りました。
都市計画決定の違法性を正す方法がほとんどないことを示した判決に、久保木太一弁護士は、特定整備路線のみならず、ほかの都市計画の行政訴訟による救済の道も閉ざすもので、行政法とも矛盾すると指摘。「今後国はこの判決をさまざまな裁判で使うのでは」と懸念を示しました。
特定整備路線補助86号線はJR赤羽駅近くの赤羽西の道灌山を切り開いてトンネルを掘削し、自然観察公園を破壊する計画です。道灌山は太田道灌が築城した稲付城のとりで跡で、現在は清勝寺の境内にあります。史跡にも指定されています。
住民側は裁判で特定整備路線86号は、終戦直後の1946年の道路計画をそのまま認可したもので、今でも適当だという根拠はないと主張。それに加えて、トンネル掘削によって周辺の地盤が沈下することが判りました。さらに自然観察公園東側のじゃぶじゃぶ池の湧水の出口が工事によってふさがれ、池の半分は工事用地として埋められることが明らかになりました。
原告は現在、東京都が行っている浸透流解析(地下水の流れが工事などでどう変化するかを予測する解析)の結果を待って判決を出すことを求めていました。しかし、前回の第2回控訴審で「法律上義務付けられたものでない」として認めませんでした。
くらし・環境・歴史遺産を守る86号線住民の会の事務局長で原告の柳井真知子さんは「自然は破壊してしまったら元には戻らない。何をやっても無駄という判決は受け入れられない」と語り、原告団は最高裁へ上告する準備を進めています。今後、地域住民に向けて公園利用、地盤、高台の自然環境破壊について広く訴えていく予定です。