各国の男女格差を比較する「ジェンダーギャップ指数」で13年連続1位のアイスランドから、ジェンダー平等の取り組みを学ぼうと、日本共産党都委員会は5月28日、公開セミナーを開きました。「世界で一番ジェンダー平等の国―アイスランド大使に聞く」と題したもので、同都委員会のジェンダー平等委員会が開く連続公開セミナーの4回目です。
ジェンダーギャップ指数は、世界経済フォーラムがまとめているもので、日本の最新の順位(2022年)は116位と大きく遅れています。
アイスランドの駐日大使ステファン・ヨハネソン氏が、同国の取り組み(別項=注目集める“世界一位”)について講演した後、吉良よし子参院議員が会場から寄せられた質問などをもとにインタビューしました。
大使は、同国でジェンダー平等が進む出発点となった出来事として、1975年の女性たちのストライキ「女性の休日」を紹介しました。同年10月24日、全国の女性の90%が、男女平等を訴えて職場や家庭を離れました。多くの企業や家庭が機能不全に陥ったことで、女性の担う役割の重要性を社会が認識するきっかけになりました。
1980年には、アイスランドに、世界で初めて民主的に選出された女性大統領ヴィグディス・フィンボガドッティル氏が誕生します。大使は「16年にわたって大統領を務めた同氏が、女性たち、少女たちのロールモデルとなり、人々の意識や考え方を大きく変えた」と指摘しました。
大使は、アイスランドでのジェンダー平等を進める政策として、①充実した児童福祉②共有可能な育児休暇③上場企業役員の男女比率(ジェンダークォータ制)④男女同一賃金法の制定―を説明しました。
児童福祉については、子どもが生まれると保育所への申請ができ、9カ月が過ぎると待機者リストに登録できると説明。2歳児の95%が保育園に入園可能で、費用は85%を自治体が負担するといいます。
共有可能な育児休暇は、男女ともに取れる6カ月ずつの育休のほかに、夫婦二人で分け合って好きな割合で取れる6週間分の育休がある制度です。
大使は、ジェンダー平等が経済的な面でも大きなメリットがあることを強調しました。2008年のリーマンショックの時、アイスランドでは主要な銀行が4行も危機に陥ったといいます。その時に指摘されたのが、経営陣の中心が男性ばかりで、多様な観点からの意思決定ができず、無謀で無責任な経営に陥っていたことでした。
こうしたことから、上場企業の役員は、男性、女性ともに4割以上いないといけないことを定め、比率が守られていない場合は罰金を科される制度が作られました。
経済面でも効果が
企画の後半は、吉良氏が会場から寄せられた質問も交えて、大使にインタビューしました。
「1975年に9割もの女性たちが立ち上がった背景にあったものは?」との質問に大使は、「60年代から70年代に高等教育を受ける女性が増えたほか、60年代から(女性の権利向上を求める)フェミニスト運動の盛り上がりがあった。そうした地道な取り組みが背景にあって、もっと男女平等な社会をつくるべきだという認識が社会に広がっていった」と語りました。
吉良氏は、ジェンダー平等を進めることが経済面でも効果があることを、より詳しく説明してほしいと質問。大使はOECDの調査で、ジェンダー平等を進めることが経済面での発展をもたらし、国民の幸福度も高めることが明らかになっていると紹介したうえで、「日本をはじめ世界各国が、高齢化と人口減少に陥っているなかで、女性という大きな人的資本の、労働への参加を進めることが重要になっている」と指摘しました。
また、男性の意識をどう変えていくかについて、「アイスランドでは、ジェンダー平等が進むことが、男性にとっても良いことだという認識が少しずつ広がった。その際、夫と妻が共有してとれる育休制度があることで、夫も赤ちゃんと一緒に過ごすことが幸福につながり、家事にも参加しやすくなるという認識が広がっていった」と紹介。「社会の認識や見方を変えていくことが、ジェンダー平等を進めるうえで大きな力になる」と強調しました。
公開セミナーは、インターネットでも中継され、映像を同都委員会ユーチューブチャンネルで見ることができます。
注目集める“世界一位” 大統領「日本にも可能」
「世界一位」を続けるアイスランドのジェンダー平等の取り組みは、日本国内でも大きな注目を集めています。
2022年12月には、日本が開いた「国際女性会議WAW!」での基調講演のために、グズニ・ヨハネソン大統領が来日。岸田首相と会談したほか、日本各地での講演や、マスコミ各社のインタビューを行いました。
インタビューや講演で大統領が繰り返し強調したのが、アイスランドも50年前までは男性中心社会だったのが変化をつくれたのだから、「日本にも可能だ」というメッセージです。
1970年代の同国の国会議員の女性の比率は5%で、男性が圧倒的な割合を占めていました。80年代から徐々に女性の比率が高まり、直近の選挙では男女ほぼ同数になっています。現在の首相は女性で、閣僚も4割前後が女性です。
大統領自身もこれまで5回にわたって育休を取得しているといいます。「育児休暇で、子どもたちと一緒に過ごせたのは素晴らしい思い出」「それが自分のキャリアの障害になるなどとは思わなかった」というマスコミ各社のインタビューでの発言も注目されました。