都内各地の井戸水などから発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が高濃度で見つかっている問題で、都環境局は6月30日、2022年度の地下水調査の結果を公表しました。世田谷区と武蔵村山市で新たに国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノグラム)を超えたほか、今回の調査にアメリカの環境保護庁(EPA)が示した規制値案を当てはめると、島しょを除く都内53自治体のうち、38自治体が少なくとも、基準を超えています。高濃度の自治体は、米軍横田基地の東側に集中しており、同基地への立ち入り調査を求める声が高まっています。
共産党「基地に立ち入り調査を」
「夫婦ともに、国分寺からの参加者の平均血中濃度より高いという結果で、びっくりしました。7人の孫のうち5人が近くに住んでいて、とても心配です。科学的なデータを集めることが、都や国に対策を求める力になると思うので、孫たちのために、できることは何でも協力したい」―国分寺市で2日、「PFAS汚染を考え安心で住みやすい国分寺を創る市民の会」が開いた、「学習と発足の集い」に参加した70歳の男性の言葉です。
国分寺市では長年、水道水に使われていた井戸水から、高濃度のPFAS汚染が見つかって、都が取水を停止。さらに、「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」が行った650人の自主的な血液検査でも、国分寺市の参加者の平均血中濃度は他市よりも高く、PFAS問題の焦点の自治体の一つです。
集いでは、PFASの汚染問題を長年、研究してきた小泉昭夫京都大名誉教授らが健康影響の最新の知見などについて講演し、会の発足が承認されました。
PFAS問題は市議選でも大きな争点になり、発足の集いにも超党派の市議が参加しました。
都が全地点を前倒し調査へ
東京都が30日に発表した地下水調査は、島しょを除く都内を260のブロックに分け、各ブロック1カ所ずつ65カ所(21年、22年のPFASの調査は62カ所)を調査することで、21年度から4年間かけて都内全域の地下水の水質を調査していくものです。
22年度の調査で、PFASの代表的な物質であるPFOSとPFOAの合計値で、国の暫定の目標値50ナノグラム/リットルを超えたのは、府中市260ナノグラム、国立市190ナノグラム、立川市170ナノグラム、世田谷区74ナノグラム、武蔵村山市65ナノグラム、武蔵野市65ナノグラムでした。
このほかに、過去に都や国の調査で高かった地点などを対象とする継続監視調査もしています。
都は、PFAS汚染への都民の不安が高まっていることから、計画を前倒しして、今年度中に260地点すべての水質検査を終わらせる方針です。
日本の基準超も17自治体に
PFAS汚染への対策が進むアメリカでは、EPAが飲料水の基準を抜本的に厳しくするため、3月にPFOS、PFOAそれぞれ4ナノグラム/リットル以下という新たな規制値案を公表しました。
東京民報は、21年度、22年度の都の検査結果のうち、各自治体で最も高かった値を集計(表)。都の公表資料はPFOSとPFOAの割合を示していないため、合計でもEPAの基準を下回る4ナノグラム未満、両物質の割合によっては基準を超える4―8ナノグラム、割合に関係なく基準を超える8―50ナノグラム、日本の暫定目標値を超える50ナノグラム以上に色分けしました(地図)。
8ナノグラムを超えた自治体は38あり、50ナノグラムを超えた自治体も17に及んでいます。
防衛省 横田の漏出認める10~12年に3件
米空軍の横田基地は、PFASを含んだ泡消火剤を、飛行機火災事故や、消火訓練の際に長年にわたり使用してきたとみられ、重要な汚染源の一つと指摘されています。
50ナノグラムを超えた自治体の広がりをみると、米軍横田基地から東へと、地下水の流れに沿って汚染が広がった可能性が見て取れます。
日本共産党の国会議員、地方議員らは29日、防衛省や外務省、環境省の担当者から横田基地のPFAS汚染について聞き取りを開催。防衛省は、横田基地が2010年から12年に、3件のPFASを含んだ泡消火剤の漏出を起こしていたと公式に認めました。
ただ、防衛省の担当者は、漏出の報告書などを入手していないことも明かし、参加者から「入手して、国会と国民に示すべきだ」などの声が出されました。
また、英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏は、独自に入手した米軍の報告書などをもとに、20年にも3件の漏出事故があったと告発しています。防衛省の担当者は、この漏出事故については「米軍に確認中」としました。
担当者は、周辺自治体の地下水汚染と、横田基地との関連性については「因果関係を明らかにするのは困難」と繰り返しました。参加者は「横田基地の土が、漏出事故や泡消火剤の使用で汚染されれば、地下水として流れ出ていくのは明らかだ。横田基地に立ち入り調査して、汚染の実態を明らかにするべきだ」と強く求めました。