保険証廃止 トラブル108万件と推計

保団連 子ども医療無償化にも逆行
 全国の開業医が加入する全国保険医団体連合会は「マイナ保険証によるトラブル推計」を5日、記者会見を行い発表しました。
 トラブルは会員の医療機関に対し、5月23日から6月19日に行ったトラブル調査(回答数1万26件)を分析し、全国の医療機関数(18万783件)をベースに推計したもの。マイナ保険証の所持率や外来利用率などの様々な条件を前提に算出されています。
 推計では全医療機関の数はトラブル調査の回答数の約18倍になり、マイナ保険証の利用は11倍になるとして両要因からトラブル件数は198倍になるとしています。医療機関でのトラブルの予測数は108万7614件に上り、▽保険資格が無効・該当なし72万720件▽保険証の不具合で読み取りできない21万7988件▽カードリーダーの不具合で読み取りできない52万6680件―などになるとしています。そのためにマイナ保険証の〝無保険扱い〟の10割請求が25万5618件と推計されています。
 政府は世論を受けて医療費10割を患者・医療機関に負担させないとして、「資格確認申立書」の記載と確認を導入するとしていますが、保団連では「現行の保険証で済んでいたのに、新たに患者・医療機関双方に新たな負担が増える。高齢や障害者は書くことが困難だったり、高齢者は所得による自己負担割合の確認ができない。特に新患の場合、蓄積された情報もなく対応に苦慮する」と困惑しています。
 また医療機関は保険負担割合の分を支払基金に請求できるとしましたが、各健康保険等が住所・氏名・フリガナと保険資格などの確認をするには「現在の人員数では事務対応が追い付かない」との声が上がっています。さらに保険資格が「不詳」の場合、基金で負担するよう調整を進めているとしています。この措置に対し、保団連は「健康保険に加入していない人の医療費を他の保険資格者が負担することになる。さらに基金からの支払いがいつになるかもわからない。医療機関の資金繰りに影響を及ぼしかねない」と指摘しています。

福祉医療に影響
 一方で全国各地での住民運動が実現してきた「子ども医療費助成制度」は、国の制度を基礎に地方自治体が独自補助を上乗せしています。受診の際に受給者証を提出することで、自己負担分を窓口で支払わなくても済むように請求事務手続きは医療機関が代行しています。
 しかしマイナカード(保険証)は国の制度で、自治体の子ども医療費助成制度の情報が存在しません。医療機関の窓口で保険資格や子ども医療費助成制度の受給資格が確認できない場合、窓口で自己負担を求めることになります。併せて高額療養費や障害、難病の医療費助成制度も所得で負担割合が細かく分類されているために、医療機関では資格確認ができない場合には当事者に自己負担が生じることになります。
 政府は「一部負担金の割合が実態と異なっていたら、後日、保険者から差額の請求などがある場合がある」としていますが、受診者が払い過ぎたケースについてはまったく言及がありません。
 保団連では「デジタル化を反対しているのではありません。現行の保険証を残してもらえば何の問題も起きないのです。マイナ保険証で医療が必要な人を医療から遠ざけないためにも、保険証を存続させて欲しい」と訴えています。
 医療機関の窓口でマイナ保険証に起因するトラブルが増加する中、医療現場からの「コロナ禍で心が折れかかったけれど、頑張ろうと何とか続けているのに辞めたいと語る職員がいる」などの声が、会見でも紹介されています。

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