感染症めぐる改正旅館業法 宮本徹衆議院議員に聞く

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政府案を修正 宿泊拒否の拡大解消

感染症流行時の宿泊施設の対応を定める改正旅館業法が6月、当事者らの要求を反映し、修正のうえ成立しました。当初の政府案が改善された経緯と意義について、修正に関わった日本共産党の宮本徹衆院議員に聞きました。(柴田菜央)

取材に応じる宮本徹議員(佐藤研二撮影、しんぶん赤旗提供)

これまで旅館業法は、宿泊施設の公共性をふまえ、宿泊者が明らかに感染症にかかっている場合などを除き、原則宿泊を拒否できないとしてきました。

しかし、コロナ禍で「飲食店は熱があったら入店を拒否できるのに、旅館業はできない」と、旅館業者から不安の声が上がりました。これを受けて、昨年秋に政府が提出した同法改定案は、発熱などの症状がある人に旅館業者が受診などを求め、正当な理由なく応じない人の宿泊を拒否できると明記。また、実施に伴う負担が過重で、他の宿泊者へのサービス提供を著しく阻害するおそれのある要求を繰り返す人の宿泊も拒否できるとしました。

差別助長に懸念

こうした宿泊拒否の範囲拡大に対し、ハンセン病訴訟原告団・弁護団や日本弁護士連合会から「感染症の患者に対する偏見・差別を助長する」「主観的な過剰な宿泊拒否を生み出す」と批判の声が上がりました。背景には、2003年に起きたハンセン病元患者に対する宿泊拒否事件があります。

また、障害者団体からは「“他の利用客に迷惑になる”“過重な負担で対応困難”など、事業者の一方的な判断で障害者の宿泊拒否につながるのではないか」と強い懸念が出されました。

当事者が動かす

昨年の臨時国会では、厚生労働委員会理事会で審議入りに反対したのは私だけでした。しかし、ハンセン病訴訟原告団などの話を聞く大規模な院内集会が開かれるなかで、審議入りしませんでした。

今年の通常国会で、5月に入り、与党側が今国会で通す姿勢であることが理事会の場で明らかになりました。私はただ一人審議入りに反対を表明するとともに、関係団体に重大事態だと知らせました。ハンセン病訴訟原告団・弁護団をはじめ、さまざまな団体から与野党議員への働きかけが猛然とおこなわれました。

立憲民主党が、このままでは審議入りは認められないと表明。与野党、関係者の協議が重ねられ、自民党からは3度にわたり修正内容等が示されました。

修正案では、宿泊拒否の規定から、宿泊者が感染防止対策に正当な理由なく応じない場合を削除。また、「実施に伴う負担が過重な要求」については、「厚生労働省令で定めるもの」と明記しました。協議のなかで、省令でクレーマー対策などであることを明確にすること、ガイドラインで障害を理由に宿泊を拒否できないことを明確にすることも約束されました。

修正案は、衆院厚労委員会に議席を持つ全7会派が共同で提出し、可決。当日は、自民党が代表して修正案を、日本共産党の私が代表して付帯決議案を読み上げる、異例の運びとなりました。

100点満点の修正ではありませんが、宿泊拒否の拡大という最大の懸念点は解消されました。法案に書ききれないところは付帯決議や政府答弁で可能な限り明確にしました。

支援強化が必要

改正法には、障害者への合理的配慮についての研修が盛り込まれています。現状では、盲導犬同伴や電動車椅子利用者をはじめ、障害者への宿泊拒否が少なくありません。実効ある研修やバリアフリー化改修の支援強化等が求められます。

(「しんぶん赤旗」7月13日付より)

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