都の投げ売り 高裁追認 選手村控訴審

❚ 住民「司法の役割放棄」

 東京都が五輪選手村整備の名目で、中央区晴海の都有地約13・4ヘクタールを2016年に近隣地価の10分の1以下の129億6000万円で大手不動産会社11社に売却したのは違法だとして、損害賠償1209億円を小池百合子知事、舛添要一前知事らに請求するよう都民が都に求めた住民訴訟の控訴審判決が3日、東京高裁でありました。

 三角比呂裁判長は、都側の主張を全面的に認めた21年12月の一審判決を踏襲し、住民の控訴を棄却しました。

 住民は、都が同用地の唯一の所有者として、再開発事業の施行者でありながら認可権者にもなるという「一人三役」で、都議会や財産価格審議会にも諮らない異例の手法により都有地を売却したことを追及。都が不動産鑑定評価によらず超安値で売却したことに対しても、不動産鑑定基準に基づき本来価格を1653億円余とした不動産鑑定士の指摘を示し、「行政の裁量範囲からの逸脱だ」と批判してきました。

 しかし控訴審判決は、都が再開発事業の認可権者と施行者を兼ねたことを「地方自治の本旨に反しない」と追認。都の売却価格と評価方法についても、都が用地を五輪選手村として使ったことを理由に容認しました。

 判決後、記者会見した中野幸則原告団長は「都の行為は都民の財産を著しく毀損(きそん)し、地方自治の根幹を揺るがすもの。これを司法が追認したことは、役割の放棄だ」と厳しく批判。上告する意向を表明しました。

(しんぶん赤旗2023年8月4日付より)

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