「しんぶん赤旗」に連載された「命の水 PFASと市民」を紹介します

「しんぶん赤旗」日刊紙2023年8月12、13、15日付の3回にわたって「命の水 PFASと市民」が連載されました。その内容を紹介します。なお、記事中の個人名は一部省略しています。


命の水 PFASと市民(上)

地下水が心配

横田基地の消火訓練場に設置されている模型の飛行機=東京都瑞穂町(写真提供:しんぶん赤旗)

 永遠の化学物質(フォーエバーケミカル)と呼ばれるPFAS(ピーファス=有機フッ素化合物)。この物質による汚染が全国で問題になっています。東京都の西側エリア、多摩地域でも―。(写真・記事 白石光)

 PFASは耐火性、耐水性に優れているため、焦げ付かないフライパンやスキー板やスノーボードのワックスなどに使われていました。人工の物質で壊れにくいため、長期間残り続けます。健康被害リスクも懸念されており、低体重児や脂質異常などが心配されています。

 PFAS汚染の原因の一つとされているのが、米軍横田基地の存在です。消火訓練でPFASを含んだ泡消火剤が使われ、基地外に漏出したことが分かっています。

住宅地や畑に隣接する米軍横田基地。5市1町に隣接=東京都瑞穂町から(写真提供:しんぶん赤旗)

 「横田基地問題を考える会」事務局長のSさん(67)は40年、立川市に住んでいます。京都大学名誉教授の小泉昭夫さんと「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」が実施した血液検査に協力。結果は、1ミリリットルあたり42・2ナノグラム(四つのPFAS合計)の値が検出されました。

 「地下水は横田基地の下を西から東に流れている」と話すSさん。「地下水がPFASに汚染されている可能性が高い。命にかかわる問題です」と指摘します。

 血液中のPFAS濃度の平均値は、横田基地の東側に位置する国分寺市(45・0ナノグラム)、立川市(28・6ナノグラム)、武蔵野市(27・2ナノグラム)の3市は、八王子市(11・5ナノグラム)、瑞穂町(14・0ナノグラム)、日野市(15・6ナノグラム)などに比べ、高い結果になっています。日本では血中濃度の基準値がまだ、ありません。

(「しんぶん赤旗」2023年8月12日付より)


命の水 PFASと市民(中)

情報公開 早く

 米軍横田基地の東側に位置する東京都国分寺市で、昨年11月から今年3月にかけて市民団体が実施した血液検査に参加したのは84人。その平均値は1ミリグラムあたり45・0ナノグラム(四つのPFAS合計)で、多摩地域で最も高い値でした。

公園に設置されている井戸。PFASが検出され、飲用禁止に=東京都国分寺市(写真提供:しんぶん赤旗)

 10年前に国分寺市に移り住んだKさん(70)。パートナーとともにボランティアのつもりで血液検査に協力しました。

 検査を受ける前は、家の水道には10年前から活性炭のフィルターを付けているので、そんなに高い数値は出ないだろうと考えていたといいます。

 「私も、国分寺で検査を受けた人たちの平均値と同じくらいの値が出て、驚いた。子や孫世代への影響がいちばん心配」と不安を語りました。

 「血液検査・健康検査と地下水の調査を自治体の力できちんとやってほしい。情報を公開して、市民が安心できるように対処しているということを示してほしいです」

(「しんぶん赤旗」2023年8月13日付より)


命の水 PFASと市民(下)

血液検査求めて

多摩地域は自然が豊かです=東京都(写真提供:しんぶん赤旗)

 東京都国分寺市では、7月2日に「PFAS汚染を考え、安心で住みやすい国分寺を創(つく)る市民の会」が発足しました。発足集会には会場に入りきらないほど人が集まりました。

 同会事務局長のMさん(67)によると、すでに多くの市民から要望が寄せられています。

 「学校や保育園などに浄水器をつけてほしい」「野菜のPFASを調べてほしい」「農地用水から検出されたら、市が責任もって浄水器をつけて」「いつからこの水を飲んでいたのか、東京都に明らかにしてもらいたい」「いつから横田基地で泡消火剤を使っていたのか、きちんと発表して」

 同会では市の9月議会に提出することを目標に署名を集め始めました。

 署名は、国分寺市議会に対し、「国と都の責任で多摩地域の住民の血液検査を求める意見書」の提出を要求しています。

 血中濃度の基準は日本にありません。Mさんは、どれだけ体にたまっても評価しない、病気になっても関係あるかはわからないということ、と指摘します。

 「国の責任で血液検査をして、血中濃度の基準を決めなければ日本は前に進めない。会としては、市民から寄せられた声をまとめて、議会に届けていきたい。国は米軍横田基地に立ち入り調査を実施して、その結果を市民に明らかにしてほしい」

 (「しんぶん赤旗」2023年8月15日付より)

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