全国の開業医ら10万7千人が加盟する全国保険医団体連合会(保団連)は9日、「医薬品の供給不安定を国の責任で改善することを求める要請書」を首相と担当相に提出。現場の実態調査の結果を持ち厚生労働省に要請を行いました。
保団連が要請行動
要請事項は▽現場の混乱に対応する事項▽薬価改定など―で、特に混乱に対して、当面はポスターなどの作成で周知に努めることなどの声が上がりました。
持ち寄られた調査結果では、医薬品の不足は話題になっている「咳止め、去痰剤」にとどまらず、2型糖尿病注射薬、精神科では抗うつ剤や精神安定剤、産婦人科では月経異常に使用するデュファストンや止血剤などにも起きていると指摘。他剤への切り替えや休薬で影響が出ているとして、糖尿病では血糖値コントロール不良や病状悪化、精神科では代わる薬が乏しい他精神状態が類似薬では対応できない、産婦人科では類似薬がないと記されています。その他、手術への影響なども出ていると記されています。
参加した医師は「医薬品の不足は武器を持たずして、敵に立ち向かえと言われているようだ」と現場の苦しさを告発しました。
歯科医師は「麻酔がなければ、基本的な治療さえ制限を受ける可能性がある」とし、別の歯科医師は「小児用の鎮痛剤が処方薬局にもなく、市販薬を購入して欲しいと言うしかない」と苦しい現状を訴えました。
市販薬は健康保険の適用除外のため、「実質的な医療費の負担増になっている。生活保護利用者には物価高と併せて厳しい」などの声が東京民報にも寄せられています。
痩身目的や市販薬は流通
医薬品の不足がいわれる一方で、ダイエットや痩身目的で2型糖尿病治療薬である「GLP―1受容体作動薬」がインターネットサイトやクリニックで自由診療で処方されています。また処方薬が不足する中で、ドラックストアなどでは不足薬剤と同様の成分を含む市販薬が流通しています。
医師からは「美容目的などの医薬品の使用を禁止にして欲しい」との意見や、受診せず市販薬を飲み続けることで病気が重症化している事例が語られ、何らかの対応や見直しが必要との声が上がりました
保団連は「患者の負担増に反対する立場である」との姿勢を明らかにし、国に対し早期対応を要請しました。