❚ 11月24日付『しんぶん赤旗』主張を紹介します
東京都教育委員会が26日、都内の全公立中学3年生を対象に「英語スピーキングテスト(ESAT―J)」を行います。都教委はテスト結果を2024年度の都立高校入試の合否判定に使う方針です。23年度の入試で初めて導入されたESAT―Jには、教育の専門家や保護者から、入試の大前提である公平性・公正性を欠いているとの指摘が相次いでいます。批判に耳を傾けず、再び入試にも使おうという都教委の姿勢は重大です。
公教育への責任放棄
ESAT―Jは問題作成から採点まで民間事業者のベネッセが行います。23年度は高校で習う文法を使った英文を「意味が伝わるよう」に音読する問題が出されました。都教育長は、中学校で学ぶ単語を用いたとし、既習範囲からの逸脱と認めません。都教委の監修は事実上機能しませんでした。
ベネッセは24年度で撤退します。次の事業に応募したのは英国の国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシル1社のみです。新たな機材準備のためとして、予算は数倍に増えました。
事業者が変われば、テストの内容も変わります。入試の変更には2年以上の事前予告が必要ですが、25年度の入試には間に合いません。民間事業者頼みの入試の仕組みがもたらす深刻な矛盾です。公教育への責任が果たせません。
ESAT―Jには多くの問題があります。受験生はイヤホンの上からイヤーマフを着用し、専用タブレットからの音声などに従い、時間内に答えを吹き込みます。しかし、音漏れなどが続発しました。都議会の超党派議連(日本共産党都議団も参加)の調査には「イヤーマフ越しに他の受験生の声が聞こえた」との声が多数届きました。「他の受験生の声をまねして答えた」「試験開始ボタンを押すのが遅れ、先に答えている受験生の解答を参考にできた」など、試験結果に影響を与えた可能性のある事例もありました。
試験を前半後半に分けたため待機時間中に隣室の音声が聞こえ、事前に問題が推測できたというケースもありました。
都教委は試験当日の実態調査を行わず、解答に影響を与える事例の報告は「なかった」と言い続け、今度も前半後半に分ける方式を変えません。昨年のテストでは「イヤーマフがきつくて頭が痛くなり試験どころではなかった」「イヤホンがずれたけど、不正行為になるので直せなかった」などの深刻な声が上がりましたが、改善しようとしていません。
都立高の受験者は公立中学生だけではありませんが、私立中学にESAT―Jは周知されていません。不受験者は24年2月の英語の筆記検査で同じ点数の10人程度の平均による推定点がつきます。入試では許容できないレベルの不合理な逆転が起きるおそれを専門家は指摘します。
指導環境の拡充が必要
小池百合子都知事は、生徒のスピーキング能力強化のための施策としてESAT―Jの結果を都立高入試に利用すると言います。しかし、入試の改変で能力向上を裏付ける客観的証拠はなく、それらの主張に学術的根拠はありません。生徒の能力を伸ばすには、少人数学級など指導環境を整えることです。ESAT―Jを入試に活用することは中止すべきです。
(しんぶん赤旗2023年11月24日付より)