子ども運賃下げ、高校生も
都議会は3月12~14日、小池百合子知事の出席のもと、一問一答形式で質疑する予算特別委員会を開きました。日本共産党は池川友一(12日)、原のり子(13日)、福手ゆう子(同)、藤田りょうこ(14日)の各都議が質問に立ち、都政の重要課題についてただすとともに、物価高騰や負担増に苦しむ都民の暮らしへの支援拡充へ、積極的な提案をしました。
光は都庁でなく暮らしに
映像投影事業に2年48億円
都が2月から新たな観光資源にするとして都庁舎の壁面に映像を映すプロジェクションマッピング(PM)を始めました。映像は当面、毎日午後7時から5回投影され、1回10分から約15分。都によると建物に常設で映し出すものでは世界最大といいます。一方、この事業に投入されるのは7億円もの税金(23年度予算)です。
都は都庁舎以外にも、都内各所で行う計画です。
池川都議はPMに2年度合計で約48億円もの巨額の税金をつぎ込むことを明らかにし、五輪談合事件で指名停止中の電通と博報堂の関連企業に委託している問題を追及しました。都は同事業に23年度予算で22・9億円、24年度予算案で25・6億円を計上しています。
池川都議は、電通と博報堂の幹部も理事に加わる東京観光財団が都庁舎PM実行委員会をつくり、電通グループの電通ライブに都庁舎PMを委託していることを告発。その上で、「電通は五輪談合で今年8月まで指名停止中だ。抜け道を使ったと言われても仕方ない」と批判しました。
池川都議はまた、実行委が行った4事業中、電通ライブが3カ所、電通グループの電通PRコンサルティングが1カ所で事業者になっていると指摘。さらに昨年9月と11月に行われたPMイベントでも、制作・運営を博報堂グループの博報堂プロダクツが担った事実を挙げ、「こちらも抜け道を使って、博報堂の関連企業に都の税金が使われている。こういうのを利益相反というのではないか」と追及しました。
坂本雅彦産業労働局長は、都庁舎PMの事業委託入札で参加したのが電通ライブと博報堂プロダクツの2社だけだったと認めました。 池川都議は「入札の経過がわかる資料は、都民や議会には明らかにされていない」とし、入札に関する資料要求にも「出せない」と拒否していることに、「なぜ出せないのか」と追及。坂本産業労働局長は「実行委員会は都とは別の主体で、都が実行委員会に関する資料を公表することはできない」と答弁。
池川都議は実行委が都と産業労働局長が副理事長をしている東京観光財団、新宿区の3人で構成し、事務局は都産業労働局観光部振興課で電話番号も同課になっていると指摘。「巨額の税金を使いながら、都民や議会に資料も出さないことに都民は納得しない」「PMで照らす都庁の足元では、毎週の食料支援に700人が並んでいる。光を当てる所が違う」と述べ、税金の無駄遣いを中止し、都民の暮らしにこそ光を当てるよう迫りました。
池川都議は共産党のトップバッターとして代表総括質疑に立ち、子育て支援になるだけでなく、大人の需要喚起や地域経済の活性化にもなる子ども運賃の値下げを都営交通で実施するよう提案しました。
子ども運賃(6歳以上12歳未満)は大人の半額ですが、小田急電鉄は2022年3月から一律50円(ICカード使用時)、京王電鉄も23年10月から一律75円(同)に改定しました。一方、都営地下鉄は大人の半額と従来のままです。
経済活性化にも
池川都議は都営地下鉄について、乗車料収入の0・4%で子ども運賃を無料、0・2%で50円にできると指摘。小田急電鉄では子ども運賃一律50円は、鉄道運輸収入の約0・7%で、そのことによって大人の需要の喚起、沿線での買い物の増加を見込んでいると紹介。「(子ども運賃の引き下げが)地域経済の活性化、子どものたちの体験格差の解消にもつながる」と強調しました。
さらに、小学生より中高生の方が移動範囲は大きく広がり、家計負担がより重くなっていると指摘。その要因について、80年前に決められた「鉄道運賃規定」で、大人と子どもの料金の線引きが12歳とされていることをあげ、「あまりにも時代遅れだ」と批判。「日常的に利用できる公共交通が、中学生になったら大人料金になるのは、子どもにやさしいまちとは言えない」と指摘。
カナダ・トロントやドイツ・ベルリンの子ども料金の事例(表)も示し、都営交通で子ども運賃の年齢を18歳まで引き上げることを提起しました。
久我英男交通局長は「割引は経営状況に応じた事業者の判断」と答弁。池川都議は「国際競争と知事が言うわけですから、こういうところでこそぜひ競争していただきたい」と訴えました。
都議会予算委論戦特集
給食無償化 多摩格差なくせ
予算特別委で池川都議
池川都議は都内の全区市町村が、公立小中学校の学校給食費を無償化できるよう都の支援を求めました。都は2024年度予算案に学校給食費の負担を軽減する予算259億円を計上しましたが、区市町村の補助は必要経費の2分の1にとどまるため、補助を活用しても市区町村は多額の財政負担をしなければなりません。そのため23区全てが無償化したのに対し、多摩地域の市町村は4割にとどまっています。
池川都議は都の給食費負担軽減は、都民の運動と都議会での共闘、共産党都議団の論戦や提案が、無償化に後ろ向きだった知事を動かした成果だと強調。一方、残りの半額負担ができず無償化を断念したとの自治体の声や、市長会から「多摩26市の間に分断と格差を持ち込むもの」など批判が出ていると紹介。
その上で「区市町村で広く軽減が行われることが重要ではないか」と質問。浜佳葉子都教育長は「より多くの自治体で取り組みが行われるよう、区市町村と連携し支援を行う」と答えました。
池川氏は「平等であるべき教育に地域間格差を生じさせてはいけない」と強調。「多摩格差」をなくすためには都が全額補助を行う以外はないとし、都内全ての自治体が無償化できるよう都に全額補助を重ねて求めました。
シルバーパス負担軽減を
池川都議は「高齢者の暮らしへの支援はあまりにも手薄だ」として、70歳以上の高齢者が日常の足として路線バスや都営交通などで使える「シルバーパス」の問題を取り上げました。
同パスの料金は住民税非課税か所得135万円以下は1000円、それ以外の人は20510円。料金設定が2段階しかなく「20510円は高すぎてあきらめた。1000円と20倍の差というのは制度としておかしい」など、改善を求める声があがっています。
池川都議は2003年度から2022年度に70歳人口が8割増加しているもとで、1000円パスが46%増えているのに対し、20510円パスは15%減っていると指摘。
「高齢者の社会保障が削減され、負担が増え続け、暮らしに余裕がなくなっているからだ」とし、小池都政が打ち出した、高齢者が活躍できる社会実現を目指す「アクティブChojuプロジェクト」に、シルバーパスを位置付け、少なくとも一律1000円にするなど、大胆な負担軽減を提起しました。
また都県境を越えても利用できるようにすることや、多摩都市モノレールなど利用できる路線を増やすなどの改善を求めました。
外環道工事
住民盗撮問題
外環道工事で陥没事故を起こした鹿島JV(共同企業体)が、被害住民を日常的に監視・盗撮し、住民を誹謗中傷するようなやり取りをしていたことが、しんぶん赤旗日曜版のスクープで明らかになりました。住民の監視・盗撮はグループチャットを使い、複数の工事関係者がリアルタイムで情報を共有していました(表参照)。
池川都議は「外環道工事を請け負う鹿島JVが住民を監視していたことは到底許されない」と批判し、都の認識をただしました。中島高志技監は「安全管理のための行為であり、住民の監視や盗撮が目的ではなかったものの、礼節を欠いた表現を用いての情報交換だった」との事業者の言い訳をそのまま述べ、住民監視との認識は示しませんでした。
池川都議は、都は外環道工事を事業認可し、50億円の財政負担をしている当事者なのに、鹿島やネクスコ、国の言い訳をそのまま紹介するだけで、「許されない」の一言も言えないと、都の姿勢を厳しく追及。
住民から「業者が監視していたのは道路の異常だけでなく、住民だったことは本当に気持ち悪い。そんな業者にこの地域で工事をする資格はない」と憤る声が出ていると紹介。「監視・盗撮行為、人権侵害・不法行為を行っている鹿島JVに、税金を使った公共工事を担う資格はない。ただちに事業認可を取り消し、外環道工事の中止を」と求めました。小池知事 献金禁止言えず
池川都議はPM事業で電通の関連企業が受注していた問題に先立ち、小池知事が自民党衆院議員時代の13年に電通から20万円、14年にも20万円の献金を受け取っていた事実を示し、自民党の裏金問題の根本問題でもある企業献金について、「全面禁止にすべき立ち場か」とただしました。
小池知事は電通の献金の事実を認めた上で、「法に基づいて適正に対応すべきこと」と述べ、企業献金への見解には言及しませんでした。