立石駅再開発
葛飾区庁舎の移転を含む京成立石駅北口の再開発事業をめぐり、新たに建築する超高層ビルの床を不当に高い評価額で取得し、区民の財産を損ねたとして、葛飾区民238人が11日、青木克德区長に対し、損害額7億1610万2775円の賠償を求める住民訴訟を東京地裁に起こしました。
葛飾区民241人は今年2月29日、区長に損害賠償請求などの措置を求め、住民監査請求を申し立てました。同区監査委員は、「(土地の代わりに建物の床を取得する)権利変換手続きが、監査請求の対象になる行為ではない」「具体的にどの額が損害になっているのか分からない」として、3月21日付で監査を却下。これを受け、住民は提訴に踏み切りました。
同再開発事業は、立ち飲み屋などが並ぶ「せんべろの街」として親しまれてきた立石駅北口地区(約2・2㌶)に、地上36階地下2階(高さ約125㍍)の西棟と、地上13階地下3階(高さ約75㍍)の東棟を建てる計画。東棟の1、2階には商業施設など、3~13階に新庁舎が整備される予定です。
すでにフェンスで囲まれた事業地区は解体作業が進み、にぎわいを見せていた以前の面影はありません。
訴えによると、区は東棟3階を、土地の対価に代えてビルの床を得る「権利床(けんりしょう)」として、1平方㍍当たり98万8215円の評価額で取得。同棟2階に入る他の事務所は、権利床を1平方㍍当たり45万2234円で得ています。
通常、商業床は低層階ほど高額ですが、区は2階の倍以上もの評価額に同意し、3階部分に合計1336・06平方㍍の権利床を取得。2階と3階との差額が53万5981円であることから、7億1610万2775円分の権利床を放棄したと、原告側は主張しています。
区の支出が前提に
提訴後に開かれた記者会見で、原告の今井賢吾氏(70)は、児童相談所を事業用定期借地権の土地に設置する問題など、本案件を含み4件の住民訴訟が区を相手に同時進行しているとして、「他の自治体ではありえないような、イレギュラーな支出が行われている」と強調。「我々の財産が侵害されている」と訴えました。
登壇した他の原告は、「区の税金で、民間の再開発の穴埋めをしている状況」であり、「住民の負担になる巨大な箱ものを押し付ける地域が、今後もさらに増えるだろう。けん制という意味でも、しっかり追及していきたい」と述べました。
訴訟代理人の舩尾遼弁護士によると、区は開発事業地に多くの土地を所有する大地主。「区がゴーサインを出し、事業計画が動き出したと理解している」と指摘。原告側は、区が高い価格で保留床(権利床とは別に購入する床)を取得することで成立する計画の可能性があるとして、権利床価格の適切性を争点に、区と争っていく構えです。