葛西臨海水族園も樹木伐採・移植 1400本 小池都政が計画

❚ 東京・江戸川 利用者ら“森残して”

群泳するマグロで知られる東京都立・葛西臨海水族園(江戸川区)の建て替えを巡り、小池百合子都知事は敷地内の樹木1700本のうち、600本を伐採し、800本を移植する方針です。利用者や専門家からは「このままの森を残したい」「住民に知らされていない」などの声があがります。


建て替え予定地が閉鎖される前日の19日、「葛西の自然を守る会」は見学会を開き、園内の森を歩きました。芝生広場を木立が囲み、流れる川に沿い田んぼや淡水生物館があります。すべて建て替えでなくなります。

開園は1989年。都は老朽化やバリアフリー充実を理由に、新施設を造る計画です。世界的建築家の谷川吉生さんが設計したガラスドームは保存し、北側に新しい水族園などを建てます。

事業は、公共施設の設計から建築、運営までを一括で民間にまかせるPFI方式。2022年にNECキャピタルソリューションなどのグループが約431億円で落札しました。今月20日は計画敷地を閉鎖、28年3月に新水族園を開園する予定です。

水族園のある葛西臨海公園は、かつて豊かな漁場でした。しかし戦後の高度経済成長期に工場の排水や産業廃棄物で汚染され、埋め立てられます。今ある水族館や公園は、環境汚染と回復の取り組みの象徴でもあります。

東京湾の潮風が吹き込む沼地。植えられたヤマモモやマテバシイなど塩に強い苗木が、35年で根を張り森ができました。

園の設計に関わった担当者は「芝生広場内に新施設を建てれば木を切らずにすむ」と指摘します。「移植しても、やり直すには35年かかる。環境をきちんと残してもらいたい」

神宮外苑や日比谷公園の再開発とも通じる伐採・移植計画。守る会の服部至道代表は「都知事選で変えたい」と話します。今月12日、19日に行った現地見学会には、延べ170人が参加しました。「2日前にSNSで初めて伐採を知った」「子どもとよく来るのに知らなかった」などの声が聞かれました。

服部さんは伐採の計画を知り、都議会に陳情を提出。署名も集めています。陳情は23日に環境・建設委員会で審議されます。

(しんぶん赤旗2023年5月21日付より)

葛西臨海水族園。右がガラスドーム、中央が芝生公園、左手前が伐採・移植される森(しんぶん赤旗提供)
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