PFAS汚染 検査通じ「正しく恐れて」 東京民医連病体生理研 血中濃度検査を開始

 発がん性など人体に有害とされ、多摩地域を中心に深刻な汚染が明らかになった有機フッ素化合物(PFAS)をめぐって、東京民医連の臨床検査機関「病体生理研究所」(板橋区=ことば)の環境発がん研究センターが、独自に分析装置を導入し、4月から医療機関が採血した血液のPFAS血中濃度の検査を開始しました。汚染が明らかになった地域で東京民医連の医療機関が設置するPFAS外来の患者などの、血液検査に対応するためのものです。
 PFASをめぐっては、住民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」が、2022年11月から、原田浩二京都大准教授の協力を得て住民の血液検査を実施。23年9月に、多摩地域30市町村791人の結果を明らかにしました。
 分析した4種のPFASの合計の濃度で、アメリカの学術機関が示した指標(20ナノ㌘/㍉㍑)を超えた住民の割合は、国分寺市では93%、立川市では74%、武蔵野市で70%、国立市63%と、深刻な汚染の実態が明らかになりました。
 こうした事態を受けて、東京民医連に所属する健生会(本部・立川市)は、全国で初のPFAS相談外来を設置するなど、住民の健康への心配にこたえています。
 病体生理研究所の藤井浩之所長は、「PFASの血液検査に対応する施設は、全国的にも数えるほどしかなく、しかも費用は一回あたり数万円~10万円ほどと非常に高価です。民医連は、病気の生物学的な要因だけではなく、背景にある社会的な要因への対応を大切に活動しています。健康の社会的決定要因の一つであるPFASをめぐっても、臨床検査を担う組織として、検査によって取り組みに貢献したいと考えた」と話します。
 病体生理研究所は、2023年5月に、健生会のPFAS専門委員会とともに、京都大学の原田研究室や、京都市内にある民間のPFAS検査機関を訪問。検査の手法や、必要な機材、体制などを視察してきました。
 藤井所長は、PFASの検査費用が高額になる要因として、分析の作業工程の段階が非常に多く、複雑で、技術も求められるといいます。また、使用する資材や水なども、PFASが一切含まれていないものを用意する必要があり、検査費用が高額になる要因となっています。

7種を検査可能
 今回、同研究所が導入した分析装置は、PFAS対策の取り組みが先行しているアメリカで、標準的とされている分析方法で測定できるもの。また、代表的なPFASである「PFOS」と「PFOA」の2種だけでなく、7種類のPFASの血中濃度を測定することも特徴です。
 検査を担う環境発がん研究センターのセンター長には、今回の取り組みに向けて、PFAS研究の第一人者の小泉昭夫京都大学名誉教授(京都保健会)が就任。小泉氏から、すでに規制が始まっているPFOS、PFOAだけでなく、今後、健康への影響が解明される可能性がある他の種類のPFASも測定した方が良いとアドバイスを受けました。
 検査は、各地域の東京民医連の医療施設が採血したものが対象です。検査をするだけなく、分析結果をどう見るかなど、その後の医療的な支援も含めて、体制を整える必要があるためです。

設置費用を募金で
 藤井所長は、「PFASの健康への影響は、国際的にもまだ不明なことが多く、『正しく恐れる』ことが重要です。不安を取り除き、対処していくうえでも、自身の体内にどれだけの蓄積があるのか知ることは大切な意味がある」と指摘します。
 臨床検査機関である同研究所では、腎機能の状況など、さまざまな検査をPFASの血中濃度測定と同時に実施できることも大きな利点です。血中濃度が高い人の健康状態のデータを医療機関が蓄積していけば、PFASの健康への影響の実態を明らかにすることにもつながります。
 PFASは、航空機火災の際の泡消火剤や、はっ水加工製品など、幅広く使われてきました。空軍基地のため、航空火災や訓練で、泡消火剤を多く使ってきた米軍横田基地は、多摩地域での汚染の重要な要因と指摘されています。また、化学工業に従事してきた人も摂取の可能性があります。
 こうした幅広い人がPFASの血中濃度検査を受けられるよう、東京民医連は今回、検査機器の購入費用や、必要な空調などの設備費用は募金で集め、検査費用と切り離すことで、検査費用を他の機関よりも大幅に安く押さえる予定です。募金の目標額は今年9月までで1億4千万円です。

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