「森守れ」が市民の願い
小池百合子都知事が進める、東京都心の神宮外苑の大量の樹木を切り倒し、超高層ビルの建設を進める神宮外苑再開発計画。強硬姿勢を変えない知事に対し抗議の声が各界から高まり、東京都知事選挙(20日告示、7月7日投票)の大きな争点となっています。(田中健一)
小池知事 強行・逃げの姿勢
蓮舫さん 「立ち止まれる」
神宮外苑再開発計画は、森喜朗氏、萩生田光一氏など自民党有力政治家の意を受け、2012年に構想が浮上し、23年2月に都の施行認可に至りました。
国内外から批判
再開発計画の中身が明らかになるにつれ、環境破壊につながる、再開発が開発業者本位で行われているなどの批判が、立場や党派を超えて広がっています。都の施行認可後も再開発計画の中止や見直しを求める意見はとめどもなく、国内外に広がり続けています。
施行認可前の22年2月、都内在住の米国人経営コンサルタントのロッシェル・カップさんは再開発見直し求めるオンライン署名を開始。23年9月、集まった署名約22万4000人分を、小池都知事と三井不動産などの開発業者に提出しました。
さらに建築や造園、都市計画、環境などの専門家有志は23年3月、再開発事業の認可撤回と抜本的な再検討を求める要請書を都知事あてに提出し、計画に異議を唱えました。
音楽家の坂本龍一さん(故人)や桑田佳祐さん、作家の村上春樹さん、漫画家のちばてつやさん、ラグビー元日本代表の平尾剛さんなどのスポーツ関係者なども反対姿勢を表明しています。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)諮問組織のイコモス(国際記念物遺跡会議)は、再開発計画には「根本的な欠陥がある」と述べ、くり返し工事中止を要求。再開発計画の十分な説明を求める声さえも無視し続ける小池都政を批判しました。ついに23年9月には、異例の警告書であるヘリテージ・アラート(文化遺産危機警告)を発表。再開発撤回を求めました。
海外メディアも「歴史ある神宮球場がある公園を脅かす開発業者」(ロイター通信23年9月8日)と反対運動を紹介しています。
都民の声を敵視
小池知事は記者会見で再開発批判を「ネガティブキャンペーン、プロパガンダもあった」(23年7月)、「一方的な情報」(23年9月)と述べ、運動を敵視。知事与党の都民ファーストや自公などは、再開発見直しや撤回を求める請願などに相次いで反対しています。
ところが都知事選を前にし、この問題に沈黙。都知事選前の最後の都議会定例会では、日本共産党の米倉春奈都議の「神宮外苑再開発をあくまで進めるつもりですか」との質問に対し、答弁に全く立たず、逃げの姿勢を取りつづけました。代わりに答弁に立った局長は、再計画推進の立場で答えました。
首長が代われば
日本共産党都議団は、計画当初から都議会での追及や超党派での議員との共闘などで、一貫し再開発中止に全力を尽くしてきました。
一方、都知事選に出馬表明した蓮舫氏は8日、神宮外苑を視察し、「一度決まった再開発でも、首長の判断があれば立ち止まることができると思っている」「二酸化炭素を吸収する森を伐採し、二酸化炭素を排出する高層ビルを建てるのはどうなのか」と述べ、知事選の争点にする意向を示しました。両者の違いは鮮明です。
都市工学専門家の岩見良太郎埼玉大学名誉教授は「小池知事の最大の問題は、住民への説明責任を取らず、脱法的なやり方で、事業者の意向を優先していることだ。この再開発事業でなし崩し的な開発を許せば、都内各地だけでなく、全国にも波及しうる問題だ」と指摘し、こう語りました。
「蓮舫氏については、今の神宮外苑開発にストップをかけてくれると期待している。都知事が代われば流れがかなり変わる」
(「しんぶん赤旗」2024年6月14日付より)