都知事選 各分野で対決くっきり 蓮舫氏「外苑再開発は争点」

 都知事選に立候補した蓮舫氏と、現職の小池百合子都知事は、他の二人の候補とともに19日、日本記者クラブでの共同会見に臨みました。都知事選告示を前に有力候補がそろって論戦する唯一の機会となった共同会見。二人の発言からは、都政に臨む立場や政治姿勢など対比がくっきりと浮かび上がりました。

 大争点となっている神宮外苑再開発をめぐって蓮舫氏は、「いったん立ち止まることを争点にしたい」と明言。これに対し、小池氏は「争点にならない。都が事業を担っているわけではない」と言い訳しました。
 再開発自体は民間事業者によるものでも、環境アセスを都知事が認可し、さらに都が創設した「公園まちづくり制度」を活用して高層ビルの建設を可能としたことなど、都政が深く関わっています。蓮舫氏はそれを念頭に「環境アセスや、開発の前提となる公園まちづくり制度を厳格に検証したい」と語りました。

事実誤認に驚き
 また、小池知事は、蓮舫氏とのやり取りのなかで、「原生林である内苑、外苑は人工林」と発言しました。外苑は人工林なので、再開発の対象となり得るという趣旨とみられますが、明治神宮のホームページにも内苑を含めた敷地一帯がかつては「荒れ地のような景観」で「樹木はほとんどが献木」「神宮の杜は人工林」と書かれており、内苑が原生林というのは、明らかな事実誤認です。
 蓮舫氏はその後のSNS投稿で「その認識で規制緩和したのかと言葉を失いました。かつ、人工林なら伐採、再開発してもいいとの発想は私にはない」と指摘。神宮外苑再開発中止を求めるネット署名を立ち上げたロッシェル・カップさんもSNSで「小池都知事はそれほど歴史について、明治神宮について、東京について知識不足と無関心ですか?」と疑問を呈するなど、ネット上でも大きな反響が広がりました。

パーティーを開催
 裏金問題で大きな批判を浴びた自民党との関係も論戦のテーマになりました。
 1期目の選挙では、自民党批判で大きな支持を集めた小池氏ですが、支援を受ける今回は、「政権与党との連携は必要」「保守の方から、小池さん出てとコールをいただいた」と語りました。
 蓮舫氏は「国会議員として、裏金問題に怒りを持って臨んできた」として、国会で成立した政治資金規正法改定案を「中身がない」と批判。「クリーンな政治をやりたい」と決意を語りました。
 小池氏は2022年の政治資金収支報告書によると、約4千万円を政治資金パーティーで集めています。共同会見でパーティー開催について問われ、「透明化し開催を続ける」「いろいろな人の声を聞く良い機会」と語りました。
 蓮舫氏は「どんなに透明化しても、強力な権限を持つ知事が開けば政官業の癒着を疑われる。開催しない」ときっぱりと宣言しました。

PMより家賃補助
 関連事業を含めて都が2年間で48億円を投じる都庁舎への映像のプロジェクションマッピング(PM)について、小池知事は、「PMは日本の技術」と継続を表明。蓮舫候補は、「住民税非課税世帯の子ども3人世帯につき2万円の家賃補助をした場合、2年で同じ48億円になる。どちらに使うかというなら、私は家賃補助に使いたい」と提言しました。
 関東大震災での朝鮮人虐殺犠牲者への追悼文の送付を小池知事が取りやめたことも、共同会見でテーマとなりました。
 小池知事は、「震災で亡くなられた方の大法要をしている」と従来からの主張を繰り返しました。
 蓮舫候補は、「震災で助かった命が人災で失われたことは、痛ましい歴史だ。これに追悼文を出さない姿勢は、歴史修正主義とみられる危険もある」と二つの理由を挙げ、追悼文を出すと明言しました。

「七つの約束」を発表徹底した若者支援を
 蓮舫氏は18日、選挙公約「あなたと次の東京へ 七つの約束」を発表しました。①現役世代の手取りを増やす本物の少子化対策②頼れる保育・教育・介護・医療③もっと多様で生きやすく④ガラス張りの都政にする行財政改革⑤古い政治から新しい政治への改革⑥東京全体をもっとよくする⑦よい政策は発展させる―を掲げました。
 記者会見で蓮舫氏は「私の政治家としての最も基本的な問題認識は、日本の『失われた30年』の要因が、若者に十分なチャレンジの機会を与えてこなかったこと、重要な決定事が密室で決められてきたことにある」と指摘。
 「その2つの柱を軸に、7つの約束を前に進めたい。若者の手取りを増やす徹底した若者支援による本物の少子化対策、徹底した本物の行財政改革で都財政をガラス張りにしたい」と強調。「どんな境遇にある若者にも学べる、働ける、結婚できる、子どもを持てる、そんな人生の選択肢がある東京にしたい」と語りました。

公契約条例を制定
 具体的には▽新しい条例で都と契約する企業に働く人の待遇改善を要請▽学校カウンセラーなど非正規で働く都の専門職を正規化▽保育・教育・介護・医療現場で働く人の奨学金返済支援など、働く環境の改善▽シルバーパス(70歳以上のバス・都営交通乗車証)の多摩モノレール、ゆりかもめ、都県境バス路線への拡大を検討▽パートナーシップ宣誓制度を使いやすく▽神宮外苑再開発を見直し、緑を守る▽多摩・島しょの学校給食無償化―などを盛り込みました。

共闘で都知事選勝利を要求持ち寄り市民大集会
 都知事選(7月7日投開票)の告示直前の18日夜、「市民と野党の共闘 都政を変えようオール東京大集会」が中野区のなかのゼロホールで開かれ、蓮舫氏の勝利で都政への願いを実現しようと集まった多くの参加者の熱い思いにあふれました。
 「これだけの皆様の心を受け止め、前に進む思いを強くしている」。蓮舫氏のあいさつに、熱烈な拍手と声援が湧き、会場は熱気に包まれました。
 候補者選定委員会の呼びかけ人だった市民連合の菱山南帆子さん、宇都宮健児弁護士、前川喜平・元文部科学事務次官があいさつし、各地で都政転換に取り組む市民が蓮舫氏への期待を表明。「地元で培ってきた市民のエネルギーで蓮舫さんを勝利させよう」「苦しんでいる若い人がたくさんいる。1300万人の東京が変われば社会も変わる。その先頭に蓮舫さんに立ってほしい」などと訴えました。
 野党各党・会派が決意を表明。日本共産党の田村智子委員長は「自民党政治そのものの小池都政を変えたいという声に応えてくれた蓮舫さんを全力で応援します」。立憲民主党の長妻昭都連会長は「東京から日本を変えるたたかいに」と呼びかけました。社民党、新社会党、緑の党、生活者ネットの代表も発言しました。
 集会の最後は各地の市民運動関係者が「大型道路や特定整備路線の計画ストップ」「保育労働者の賃上げ、増員を」「街や自然を壊す大型開発は中止を」などの願いが書かれた横断幕やプラカードを掲げてステージいっぱいに登場。「私たちの新しい未来は蓮舫」とコールを会場に響かせました。

02siminsyukai
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