東京都知事選 蓮舫都知事の誕生で都政こんなに変わる

都民の声を聞く蓮舫氏か 「財界ファースト」小池氏か

終盤戦を迎える東京都知事選(7月7日投開票)で、幅広い市民と野党など「オール東京」が推す蓮舫候補が、裏金自民党と「二人三脚」の小池百合子知事を激しく追い上げています。蓮舫氏が逆転勝利して知事になれば、都政は大きく変わり、国政にも衝撃を与えることになります。弱者に寄りそい都民の声を聞く蓮舫氏か、都民の声を聞かず「財界ファースト」の小池氏か。両者の政治姿勢の違いが際立っています。(東京都・川井亮、安川崇、吉岡淳一)

蓮舫氏 困窮者に寄りそう
小池氏 映像演出に48億円

都庁舎などを映像で照らす「プロジェクションマッピング」(PM)をめぐっても、両者の政治姿勢の違いが表れています。

 蓮舫氏が立候補表明後最初に訪れたのが、都庁前で毎週行われている生活困窮者への食料配布の現場でした。

 都がPMに2年間で48億円の予算を付けたことについて「新しく予算を使うなら、家賃補助に使いたい」と明言しました。

 これに対して小池氏は、食料支援の現場には一度も足を運んでいません。19日の日本記者クラブ共同会見では「PMの技術は日本の技術。東京、江戸のセンスを入れ込む」と述べ、どんなに都民からの批判を受けても姿勢を変えようとしていません。

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食料を受け取る人(左)にあいさつをする蓮舫氏(手前右)=1日、東京都新宿区(しんぶん赤旗提供)

蓮舫氏 外苑再開発見直し
小池氏 争点回避し逃げる

 都知事選の大きな争点の一つが、多数の樹木を伐採し、超高層ビル3棟を建設する神宮外苑再開発です。多くの市民や著名人、環境・都市計画の専門家らが批判の声を上げる中、これらの声に応えて計画を見直すか、「財界ファースト」の計画を進めるのかが問われています。

 外苑再開発では、都が計画の初期段階から、地権者でもない事業者の三井不動産を関与させ、都市計画公園区域を削って超高層ビルを建設する準備を進めていたこと、都の局長ら幹部が三井不動産など大手ゼネコンに天下りしていたことが判明しています。

 蓮舫氏は18日の政策発表会見で「外苑の再開発を見直し、大切な緑を守る」と述べ、環境影響評価や、都市計画公園を削って超高層ビル建設を可能にする「公園まちづくり制度」の過程を検証すると表明。29日には「都政初の都民投票をやりたい。みなさん声を出したくないですか。その声を都知事になった私に届けてほしい」と街頭でよびかけ。外苑再開発の是非を問う都民投票の実施を表明しました。

 一方、小池氏は19日の日本記者クラブ共同会見で「(外苑は)争点にはならない」と逃げています。

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蓮舫氏 ボトムアップ対応
小池氏 質問にも答えない

 小池氏は2017年の総選挙直前の9月、「希望の党」を立ち上げた際、自らの政策に同意しない人を「排除する」と発言。

 知事2期目の最後の定例会となった今年6月議会では、神宮外苑再開発や築地市場跡地再開発など野党の追及に自ら答弁に立たない場面が目立ちました。自身の公約や学歴詐称疑惑についても都職員に答弁させる場面もありました。

 3期目の政策発表の会見(18日)はオンラインで行い、質問も5問だけ15分程度で「公務」を理由に打ち切りました。20日の告示第一声も選挙事務所で限られたメディアなど約30人を前にあいさつしただけでした。

 これに対して蓮舫氏は14日に日本外国特派員協会で行った会見で、「私は支援者を排除いたしません」と明言。18日の会見では詰めかけた約80人の記者を前に、36分間にわたり質問に一つ一つ丁寧に答えました。

 29日の女性共同街宣では「小池さんは何を聞いても答えない。排除ではなく包み込む、トップダウンではなくボトムアップ。みなさんのための都政をぜひ、やらせてほしい」と呼びかけ、幅広い立場の人たちの声を聞いて自らの政策を練り上げる姿勢を明らかにしました。

蓮舫氏 パーティーしない
小池氏 「パー券」ごまかす

 自民党派閥のパーティー券収入をめぐる裏金疑惑に国民の大きな批判が渦巻く中、絶大な権限を持つ首都東京のリーダーが、裏金が疑われる企業からのパーティー券収入を受けていいのかが問われます。

 知事選告示前日の候補者討論会で政治資金パーティー開催について、蓮舫氏は「開催しません」と断言。一方、小池氏は「情報交換のいい機会」と容認しました。

 オンライン候補者討論会(24日)で明治神宮外苑の再開発をめぐる蓮舫氏の追及がSNSで反響を呼びました。

 蓮舫 再開発事業者からパーティー券購入を受けてませんね。

 小池 法律にのっとって公表している。

 同席した他の候補者が「イエスかノーか全視聴者が思っている」と尋ねても小池氏は同様の回答。しびれを切らした司会者が「イエスということか」と念押ししても小池氏は「さまざまな方にご協力頂いている」と最後までごまかしました。SNSでは「利権の匂いがプンプン」などの投稿があふれました。

 市民と野党共闘の「オール東京」の蓮舫候補か、裏金議員の中心人物の萩生田光一自民党都連会長から全面支援を受ける小池知事か、両者の違いは鮮明です。

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東京都知事選の告示を前に行われた共同記者会見で、ボードを掲げる蓮舫氏=19日午後、東京都千代田区の日本記者クラブ

暮らし応援の蓮舫氏か 都民に冷たい小池氏か

増収1兆円で願いを実現

 東京都は一般会計で8・5兆円、特別会計、公営企業会計を合わせると16・5兆円とスウェーデンの国家予算並みの規模です。この8年間で都税収入が1兆円も増えるなど大きな財政力を持っています。蓮舫氏は、これを活用して都民の願いに応える多くの仕事ができると提案しています。

非正規の正規化

 実質賃金が25カ月連続マイナスの日本。蓮舫氏は「現役世代の手取りを増やす」ことを公約に掲げています。

 現役世代の手取りを増やすために有効なのは、同じ仕事をしても正規職員より賃金などの処遇が低く抑えられている非正規職員の正規化です。

 都庁の非正規公務員は3・2万人にも及びます。蓮舫氏が知事になれば、まず都の非正規職員を専門職から順次正規化するなどの処遇改善を進めます。

 蓮舫氏は街頭で訴えます。「職員を非正規にして人件費を浮かせられたというのは改革じゃない。例えば、子どものSOSを誰よりも早くキャッチする虐待対応協力員、医療従事者、スクールカウンセラーなどの専門職から待遇改善するのが都知事の仕事です」

奨学金

 蓮舫氏は20日の告示第一声で「東京はものすごい速度で格差、暮らしにくさが広がっている。家賃も光熱水費も食料費も交通費も高く、物価高だ」「親の経済格差が子どもの経済格差に直結している」と強調。

 大学を卒業した人の2人に1人が平均310万円の奨学金の借金を背負っていることを挙げ、「政治が不安を取り除くべきだ。安定雇用をつくり、奨学金負担を減らす施策を率先して行う」と表明しました。

 保育・教育・介護・医療現場で働く人の奨学金返済に対する支援や家賃支援を拡充し、働く環境も改善すると公約しています。

公契約条例

 蓮舫氏は「公契約条例」を公約しています。同条例は、東京都が発注する仕事を受注する企業に対し、その企業で働く人の労働環境を守ることを義務付けるルールを定めたものです。労働者が人間らしく生活できる賃金を保障することも含まれ、蓮舫氏は「若い人の手取りは確実に増える」と述べています。

 都が発注する契約は年間約9万件、金額にして1・7兆円に上り、入札参加資格を持つ業者の約9割が中小企業です。波及効果が非常に大きいことは明らかです。

 日本共産党は都議団や区市町村議員団が同条例制定に向け、労働組合などと尽力。都内で同条例を制定している自治体も生まれましたが、小池知事は都としての導入に後ろ向きです。

多摩格差の解消へ

シルバーパス適用拡大を

 シルバーパス(70歳以上高齢者のバス・都営交通乗車証)を利用できる都営交通は、ほぼ区部に集中しています。

 一方、多摩地域など都県境近くの住民は、生活圏が都外を含むことが少なくなく、最寄り駅が都外にあったり、バス路線が都県境をまたいだりするため、パスを使えないなどの不便が生じています。

 また、多摩都市モノレールや「ゆりかもめ」(臨海部を走る新交通システム)は、都が大半を出資する第三セクターの運営なのに、パスを使えません。

 蓮舫氏は、シルバーパスに多摩都市モノレール、ゆりかもめ、都県境をまたぐバス路線などへの適用拡大を検討すると表明しています。

学校給食無償化

 東京都は4月から小中学校の給食費の負担を軽減するため、区市町村に経費の2分の1を補助しています。23区は無償化しましたが、財政力が弱い多摩・島しょでは無償化できない自治体があります。

 蓮舫氏は多摩地域の立川市での街頭演説で「多摩地域でも23区と同じように無償化する」と公約し、多数の聴衆の拍手に包まれました。

 一方小池氏は―。今年6月の都議会本会議で共産党の米倉春奈議員が都内全域で無償化できるよう全額補助を求めましたが、小池氏は答弁に立ちませんでした。小池氏は昨年9月議会でも、給食費無償化について「国の責任と財源で実現すべきだ」と冷たい答弁。同年12月の議会では、共産党など4会派共同提出の全額都負担で学校給食費無償化を求める条例案に対し、小池氏を支える自民・都ファ・公明が反対し否決しました。

多様性・人権・環境 前へ

パートナー制度 利用しやすく

 東京には異性愛の人や同性愛、無性愛の人、トランスジェンダー、結婚しない選択をする人、事実婚のカップルなど、多様な人が暮らしています。

 都民の世論と運動が広がり、東京都でも22年11月からパートナーシップ宣誓制度が始まりました。

 蓮舫氏は「パートナーシップ宣誓制度を利用しやすくするため、自治体や民間企業との連携を進める」「選択的夫婦別姓が実現するまで、異性間でも、望めばかなうパートナーシップ宣誓制度を使えるようにする」と掲げています。

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朝鮮人犠牲者の追悼文送る

 1923年9月の関東大震災直後、「朝鮮人が暴動を起こす」「井戸に毒を入れた」などのデマが流され、多数の朝鮮人、中国人が殺されました。

 74年以降、歴代知事は朝鮮人犠牲者の追悼式典(実行委員会主催)に追悼文を送ってきましたが、小池知事は就任翌年の17年以降、送付をやめました。「全ての方を慰霊する」として、自然災害の死者と虐殺の犠牲者との違いを見ない態度を取り続けています。

 蓮舫氏は小池氏の態度について「これは改めたい」(18日の会見)、「追悼文を出す」(19日の共同会見)と明言しています。

PFAS汚染 立ち入り調査を

 発がん性が懸念される有機フッ素化合物(PFAS)。多摩地域で住民の血液を検査した住民団体によると、791人の約半数から米国で「健康被害の恐れ」とされる指標値を超すPFASが検出されています。

 最大の汚染源は米軍横田基地と考えられていますが、小池氏は都として血液調査や基地への立ち入り調査を指示していません。国内の在日米軍基地周辺でもPFAS汚染が指摘される中、基地立ち入り調査をする関係自治体もあることに比べ、都の対応は及び腰です。

 蓮舫氏は、米軍基地との交渉は第一義的には政府が行うことかもしれないがとしつつ、「だったら、徹底的に国と交渉し、多摩の人たちの安心を守る、当たり前のことが言えるような知事に代えるべきだ」と主張しています。

羽田新ルート見直しへ

 羽田空港への着陸時に航空機が東京都心を低空飛行する「羽田新ルート」。東京五輪のための国際便増便策として、20年3月に運用が始まりましたが、住民や航空関係者らが落下物の危険や騒音を指摘しています。

 羽田空港に着陸する飛行機が高度約450メートルを飛ぶ品川区の大井町駅前で、28日に演説した蓮舫氏は「開始から4年たった。そろそろ点検する時だ」と指摘。「住民がどれだけ騒音に脅かされているか、赤ちゃんを起こさないよう苦労している親がどれだけいるか」「新ルートの見直しを早期に国に申し入れたい」と明言しました。

 小池氏は新ルート運用開始時のコメントで、国などに「感謝」し、「空港の機能強化は極めて重要」だとして運用を後押し。都議会でも「国の判断、責任」と繰り返すばかりです。

(しんぶん赤旗2024年7月1日付より)

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